シンプルな中に和の要素を取り入れた和モダン建築
和泉山脈を源として大阪湾へと流れる河川を見下ろす場所にある、医師である傍ら絵筆をもつ画家のアトリエ住居である。 元々この地にあった木立の中に建ったかのような、そんな佇まいになればいい。初めてこの土地と向き合ったとき、そんな思いを抱いた。 木立の中、緩やかに登りながら蛇行する小径を、陽の光を浴び成長する緑に目を奪われては、立ち止まり、また進んで行くと、深い軒の先、格子戸越しに、画家の作品が飾られた壁が見えてくる。そこは、柔らかい色調の大谷石が敷き詰められ、地窓の先には竪格子の塀で囲われた庭へと視線が抜ける。 畳の間。そこで人は、腰を下ろす。先ほど歩きながら目にした緑を、ここでは、開口を抑えた室内から目にする。高木は幹のみしか見えない。芽吹く新芽、色付く葉、揺れる枝葉、見えない先を想像する。川の音に気付く。雨風で掻き消される程の音だが、雨の降った翌日の朝、そのことに気付かされる。そして、画家は制作の場に向かう。 上流からの湿った風と朝の清々しい光を取り入れる開口、軒と格子が直射光を遮る東西のハイサイドライト、障子を立てこんだ南の吐き出し窓、それぞれの開口が、性質の異なる柔らかい光を制作の場に注ぐ。ここは、常に変わらない環境を与える場所ではない。壁で隔てた外の様子を感じ、筆を置く、そしてまた塗り重ねる。 確かに変化する日常の中に何かを捉え、表現する画家は、その変わるけれども変わらない、雲の動き、水音、緑の濃淡、一日の陽の移ろいを感じながら、またキャンバスに向き合う。
奈良県 国産材を使った木の家
建築事務所:FRONTdesign
豊かな住まいを一緒につくりませんか
建築事務所:小笠原建築研究室
「気持ち良さ、快適さ、楽しさ」をモットーに!
建築事務所:平野太郎建築設計事務所