井上房一郎邸

2014年3月10日

井上房一郎邸…。

実は、この家は、
名作住宅の、
そっくりそのままの、コピーです…。

オリジナルは、
アントニン・レーモンドの自邸…。





この家を建てた、井上房一郎という人と、
建築家レーモンドの関係についても、
いろいろと、お話はあるのですが、
それはまた、別の機会に…。

ともかく、
1951年、
当時建ったばかりの、
レーモンドの自邸を訪ねた井上房一郎は、
その設計をとても気に入り、
図面の提供を受け、さらに、大工に実測をさせ、
翌1952年、
東西は反転していますが、
そっくりそのままのコピーを、
設計者公認で、建ててしまったというわけです…。

中に入ってみると、
建物を支える丸太が、
むき出しになっています…。

元々は、戦後まもなく、
材料不足の時代の工夫として、
安価な足場用の丸太を剥いて、組上げる手法が、
レーモンドによる、
この表現のはじまりだったのだそうです…。

ただ、
その直截さ、単純さ、経済性など、
レーモンドが大切にしていた建築の原則が、
非常によく表現されていたためか、
その後も多用されることになり、
今では、このスタイルは、
「レーモンド・スタイル」、
なんて呼ばれるようにもなりました…。





建物の真ん中辺りには、
屋根の架かった、
中庭(パティオ)があり、
庭に向かって、
大きく開かれています…。

庭の自然を、居住空間の一部、
と考えていたというレーモンド夫妻は、
しばしば、ここで食事をしていた、
といいます…。

実際、
レーモンドについての本を見ると、
必ず載っている、
ここで食事をしているレーモンド夫妻の写真があります…。

両側は、建物に囲われ、
透明な素材の屋根が架かり、
その先には、庭の緑が見えるパディオで、
テーブルについて、夫婦で食事をしている、
大層気持ちがよさそうな、いい写真です…。

外観も、落ち着いていて、
和風な感じもありながら、
どこか、モダンな感じもあります…。

レーモンドの事務所に、
在籍していたこともある、
前川國男の自邸なども思い出されます…。

ここに、
日本の、木造モダン住宅の源流の一つがある、
ということなのかもしれません…。

実は、
このレーモンド自邸のコピー、
この井上房一郎邸以外にも、
もう一軒あるのだそうです…。

日本住宅公団による名作団地、
今ではなくなってしまった阿佐ヶ谷住宅の設計に関わり、
レーモンドの事務所にも在籍していたことのある、
津端修一さんの自邸が、それです…。

オリジナルの、レーモンド自邸の方は、
今では残っていないのですが、
2つのコピーの方は、現存していて、
その雰囲気を今に伝えている、というわけです…。

こんなかたちでの、
名作住宅の保存のされ方というのも、
アリかもしれませんね…。





http://k-nakama.tumblr.com/post/79133498461

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