土浦亀城自邸

2014年3月15日

土浦亀城(つちうらかめき)は、
大学在学中に、
8年ほど先輩にあたる遠藤新に影響されて、
帝国ホテル建設中の現場に行き、
巨匠、フランク・ロイド・ライトと出会います…。

ライトはその後、
ホテルの完成を見ることなく、
事実上解任され、帰国してしまいます…。

残った工事は、
その弟子、遠藤新が引き継ぐことになるわけですが、
土浦亀城もその下で働き、
共にホテルを完成へと導きます…。

そして、大学を卒業すると、
アメリカに渡り、ライトの工房で、
およそ2年数ヶ月、働くことになります…。

帰国した土浦は、
帝国ホテルの工事を行った大倉土木(現大成建設)に入社し、
後に独立します…。

そんな土浦亀城は、
ライトについて、こんなことを語っています…。

「長く一緒にいたこともあるでしょうが、
 非常に尊敬しているし、
 その才能にはほんとうに感心しています。
 ただ彼独特のデザイン、
 特に装飾的なところはうまいけれど、
 われわれ弟子どもがわりあいになじまなかった」…。

「ライトが設計をはじめると、
 出だしはわれわれが感動するほどいいのですが、
 仕上げていくとだんだんいろいろなものがついてしまうのです」…。
「でもこれをつけない方がいいのではないかと議論したものです」…。

また、
ライトの助手として来日しながら、
後にライトと袂を分つことになった、
アントニン・レーモンドの作風の変化について問われ、
こんな風にも語っています…。

「私も帰ってから二つ三つ、
 ライトのスタイルの住宅を設計しましたが、
 だんだん変わってきてしまいました。
 結局、
 私たちはライトのスタイルから
 クリエイトすることはできないのです」…。

「ライトのものはライトしか出来ないんですね。
 我々がやったんじゃ本当の真似になってしまうんですよ」…。

「ライトの所からたくさん学んでいると思います。
 ただああいうライトが使うような装飾をしないだけです」…。

土浦亀城は、
もっとシンプルな表現を求めて、
レーモンド同様、ライトの影響から離れて、
ヨーロッパの近代建築へと接近していきます…。





土浦亀城自邸…。

今となっては、彼の代表作であり、
現在では、
東京都指定文化財にもなっているのだそうです…。

規格化された木造バネルによる、
工業化された工法(木造乾式工法)…。
大きなガラス窓、平らな屋根…。

ライト特有の装飾を、全て取り払った、
シンプルで、合理的な、白い箱…。

しかし、
傾斜地を利用して、
5層のレベルが、スキップ・フロアで連続する、
という有機的でダイナミックな空間構成は、
土浦本人が、後年、
ライトの影響を認めているのだそうです…。

新しい合理的な建築の中に、
ライトの影響を、再構成して、活かそう、
と考えたのでしょうか…。

南面の大きなガラス窓で、
テラスへと連続する、
開放的な、2層吹抜の居間…。

その吹抜の天井面には、
輻射熱によるパネル・ヒーティング…。
壁の中では、壁体内空気循環…。

クローゼットが造りつけられた寝室…。
現代のシステムキッチンのような台所…。

1935年(昭和10年)の完成です…。

先駆的であるが故の、
様々な技術的な困難があったと聞きます…。

しかし、
今なお、すべてが新しい…。

実験的な、
日本の、都市型モダン住宅の出発点…。

http://k-nakama.tumblr.com/post/79628166522/8

仲摩邦彦建築設計事務所

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仲摩邦彦建築設計事務所

ひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたい、と考えています。

建築は、建築主であるお客様や、様々な条件・環境等の、出会いや組み合わせにより生まれるものであり、それぞれが、その機会でこその個性的なものだと考えています。 「これしかない」と納得できるようなものを...

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