厚生労働省は5年間で建設人材を1万8000人養成する『建設労働者緊急育成支援対策』を来年度から始める

厚労省 5年で1万8000人養成/規模・職種ごとに助成金/担い手確保・新支援策

家結び.COM

【建設労働者緊急育成支援対策】

 厚生労働省は、建設分野など人材不足重点4分野の人材確保・育成対策をまとめた。このうち建設分野では、新たに2015―19年度の5年間で建設人材を1万8000人養成する『建設労働者緊急育成支援対策』を来年度から始める。型枠、鉄筋、とびなど具体的専門職種、大手・準大手・中堅ゼネコン、地域建設業の業種別・規模別ごとに新たな助成金制度創設・既存制度拡充などできめ細かな人材支援を行うのが最大の特徴だ。地方建設産業界で人気のある「建設労働者確保育成助成金」の事業コースも拡充する。必要経費は15年度予算の概算要求に盛り込んだ。 

 5年間で1万8000人の人材確保を目指す新施策『建設労働者緊急育成支援対策』は、(1)建設産業界と国が連携して訓練生募集から座学・実習、企業への就職支援までパッケージで実施(2)ゼネコンが傘下の協力企業を任意団体化、認定職業訓練の実施経費を助成(3)建設企業が取り組むキャリア形成訓練の助成金の拡充と、対象を中小企業だけでなく、大企業・中堅企業にも拡大--の3事業が柱。このうち新規制度として創設する「建設労働者緊急育成支援事業」は建設業界に入職していない段階で、新卒者や未就職者、離転職者の職業訓練を行う場合に助成金などで支援するのが大きな特徴。言わば業界入職のための事前囲い込みへの支援だ。

 具体的には、国と建設業界が連携した新たな取り組みで、型枠工や鉄筋工、とび工など不足する技能職種にかかわる訓練生の募集から、1-6カ月の座学・実習の実施、企業への就職支援までパッケージで進める。建専連など専門工事業団体や建設業振興基金などに事業の委託を想定し、富士教育訓練センターや三田建設技能研修センター、ものつくり大学などで実習を行う予定。初年度の15年度は600人程度の養成を見込む。

 事業の実施に当たり、日本建設業連合会や全国建設業協会、ゼネコンなどの技術支援のあり方が、今後の制度設計づくりでの課題になっている。また、訓練生への生活給付などの支援も検討課題だ。

 在職者向けでは、認定職業訓練制度を拡充する。既存制度でほとんど使われていない広域団体認定訓練を建設産業界が使いやすいようにする。ゼネコンなどが傘下の協力企業を任意団体化し、その任意団体が都道府県知事の認定を受け、協力企業の従業員を対象とした認定職業訓練を実施した場合に経費の2分の1を助成する。

 認定には3つの都道府県以上にまたがる任意団体とすることなどが要件だ。厚労省によると、上場ゼネコンや地域の有力建設企業による団体化を想定しているという。15年度は10団体程度の認定を見込む。任意団体を職業訓練法人にした場合は、建設労働者確保育成助成金から一定額の運営費、施設・設備費用の2分の1(上限3億円)の助成も受けることができる。

 キャリア形成促進助成金では、系列企業やグループ企業などが連携したり、企業が単独で従業員に実習と座学を組み合わせた訓練を実施した場合、訓練費用と賃金への助成を拡充する。また、既存制度は中小企業が対象だが、15年度から大企業・中堅企業に対しても助成を始める。訓練経費の助成は中小企業が2分の1から3分の2に引き上げる。大企業・中堅企業は2分の1となる。賃金助成も企業規模別に行う。この助成金の概算要求うち、建設産業分は約4億円とみられる。

 厚労省では「対策は国土交通省と連携して実施する。建設産業界は主体的権限を持って積極的に取り組んでほしい。ゼネコンは人材確保のけん引役を努めてもらいたい」(職業能力開発局)と話している。

 建設など人材不足重点4分野の人材確保・育成対策は、厚労省の「人材不足分野等における人材確保・育成対策推進会議」がまとめた。建設分野の対策は、ほかの分野にもかかわる分野横断施策も含め、7項目で構成している。また、人材確保に向けた雇用管理改善促進事業に新規着手する。建設人材不足へ対応するため、3つの事業によって建設分野の事業主(企業)などによる訓練を促進し、人材を確保・育成。2015―19年度の5年間で1万8000人を養成。

〈離転職者、新卒者、学卒未就職者向け〉
I 建設労働者緊急育成支援事業(新規) 概算要求額8億円 5年間で5000人養成
 国と建設業界が連携した新たな取り組みで、型枠工など不足する技能者にかかわる訓練生募集から座学・実習、企業への就職支援までパッケージで実施。建専連など専門工事業団体や建設業振興基金などに事業の委託を想定。
〈在職者向け〉
II 認定職業訓練の充実(拡充) 概算要求額6億円 5年間で8000人養成
(1)広域団体認定訓練の新規実施団体認定
 建設業界の主体的な取り組みを支援する。ゼネコンなどが傘下の協力企業を中小企業事業主団体化し、その任意団体が都道府県知事の認定を受け、協力企業の従業員を対象とした認定職業訓練を実施した場合、任意団体に助成。認定には3都道府県以上にまたがる団体とすることが要件。上場ゼネコンや地域の有力建設企業による団体化を想定。15年度は10団体程度の認定を見込む。
(2)認定職業訓練の充実
 補助対象要件見直しや助成金の算定基準引き上げなどを予定。
III キャリア形成促進助成金拡充(拡充) 概算要求額4億円 5年間で5000人養成
 企業の個別の取り組みを支援。系列企業やグループ企業などの連携や企業が単独で従業員に実習と座学を組み合わせた訓練を実施した場合、訓練費用と賃金への助成を拡充。地域ゼネコンを想定。また、新たに中小企業以外の企業(大企業・中堅企業のゼネコン)も助成対象とする。

この記事は建設通信新聞より転載しています

プロフィール

東恩納 尚縁

将来の夢は孫と一緒に暮らすこと。

孫ができた為、将来は娘夫婦と二世帯住宅の夢を持っています。
「住まい」について考えたコラムを寄稿しています。

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