断熱を重視しない省エネ大国ニッポン

本製の家電製品や自動車は、世界でもトップクラスの省エネ性能を持っている。そのため私たち日本人は、「日本は省エネ大国」という自負が強い。しかし、省エネといっても日本では、「電気の省エネ」が一般的だ。「熱の省エネ」が普及しているドイツとの違いを、日本を飛び出しドイツに移住した設計者の金田真聡氏が解説する。

日本の建築分野でさらに省エネを推し進めるには「省エネ」という言葉に染み付いた、電気を旨とした節電のイメージを変えることが必要だと思う。
 
ドイツは国土全体が北海道並みの寒冷地のため、熱をできるだけ逃したくないという意識が強い。実際、ドイツの一般家庭における暖房はエネルギー消費全体の75%にもなり、給湯を合わせた熱エネルギーが占める割合は全体のエネルギー消費の80%以上にもなる。 

試しに、勤務するドイツの設計事務所の同僚に「省エネと聞くと何を思い浮かべる?」と聞くと、「建物ではまず断熱強化による熱エネルギー消費の削減ね」という回答が返ってきた。「電気は?」と聞くと、「電気ももちろん重要だけど、割合は小さいから」と言う。これらの回答からもわかるように、ドイツでは建物の省エネというと、壁や窓の断熱と直接的に結びつくのだ。

 一方、日本では「省エネ=電気」というイメージが強い。同様に日本の元同僚に聞いてみると、「省エネというと、まず設備や家電の省エネかな」という反応。「熱エネルギー消費の削減」といった回答は聞かれなかった。

それはエアコンや電気式給湯器の普及とともに、暖房や給湯などの熱エネルギーを電気でつくるライフスタイルがこれまで数十年にもわたって続けられてきたからだと推測する。 
熱エネルギーを電気からつくる生活が普及したことによって、私たち日本人の思考の中で「エネルギー=電気」という固定観念が形成されたのではないだろうか。これこそが、日本の建築物で「熱の省エネ」が普及しにくい遠因になったと私は考えている。

余談だが、私は「省エネ建築」という言葉を使うときには注意をしている。日本で「省エネ」と言った瞬間に、ほぼ自動的に電気の節約と思われてしまうからだ。 
こうした「エネルギー=電気」という固定観念の下、日本ではほとんど断熱化されていない建物に太陽光発電パネルを設置するという矛盾した状況が進んでいる。

いくらエアコンを省電力なものにしたり、再生可能エネルギーを利用したりしても、建物の断熱性が低く冷暖房の熱エネルギーを垂れ流してしまうのでは、あまりにもったいない。

むしろ電気が潤沢にあるという意識があればあるほど、省エネに対する意識が低くなってしまう恐れすらある。だからこそドイツでは、建物を今後数十年使うという前提に立ち、まずは建築側の対策を優先すべきだと考えられている。
ドイツの新築建物で標準装備となっている外断熱や高断熱窓は、夏季の日射熱取得抑制や冷房負荷低減にも高い効果を発揮する。

外付けブラインドも熱の省エネにつながる。断熱性や気密性が高いドイツの建物は、決して冬季の寒さ対策だけのためではない。
ドイツ型の熱の省エネは、近年猛暑の続く日本の夏季にも大きな効果が期待できる。こうした点を日本人の設計者に話したところ、「省エネは設備の問題ではなく、『建築の問題』だったんだね」という感想が返ってきた。
日本の省エネ基準はドイツなど諸外国に比べて低いレベルにとどまっている。

また、現時点では基準適合も義務付けられていないので、その先の性能を求めるケースは多くないのが実情だろう。先日、日本の省エネオフィスビルの記事を読んだが、最新式の省エネ設備が随所に採用されているものの、躯体や窓に関する断熱性能に関しては一切の記述がなく、日本における省エネは設備偏重であると改めて感じた。
現行の省エネ基準をはるかに上回る性能を建物に付与した時に、どのような室内環境が生まれるかを、建築関係者は想像できていないということもあるだろう。

私の体験からすると、「熱の省エネ」には快適さが伴ってくる。
高断熱、高気密化によって室内の温度ムラや、躯体の結露、そこから発生するカビの問題が少なくなるからだ。
北海道に住んでいた人から、「東京に引っ越してくると家が寒すぎる」という話を聞いたことがある。またドイツから日本に帰国すると、室内が寒くて日本の冬のほうが厳しいと感じる。
これを暖房方式の違いと考えず、断熱不足による「建築の問題」と捉えなければならない。
~ケンプラッツより抜粋~
へ~省エネ大国ドイツでは外断熱が一般的だとはしりませんでした。
省エネ家電を使っても建物そのものの性能が良くなければ「省エネ」とは言えない。
省エネを超えて「快適に過ごす」という“生活”を考えた時、やはり高気密高断熱に行き着くのです!!
今回長くなってしまったので、次回続きをお送りします。

プロフィール

宮崎浩行(建築士・エムアンドエー設計工房)

千葉県柏市で外断熱、エコ、耐震などのこだわり住宅の注文住宅を設計施工

省エネ、耐震、水廻りなどのリフォームもご相談ください。
株式会社 エムアンドエー設計工房
〒277-0832 千葉県柏市北柏1-6-6 昭信ビル3号館3階
http://www.m-a-sekkei.co.jp

あなただけのアメリカ住宅を創ろう [千葉県柏市]
http://americanhouse.livedoor.biz/
地震に強い2×4、平均熱貫流率0.4の外断熱・高気密高断熱住宅。夏はエアコン1台で涼しげ、冬は蓄熱暖房機で小春日和。省エネ・エコを推進するをアーキテクトビルダーとそのスタッフのBLOG

フェラーリは今日も行く
http://m-a-sekkei.cocolog-nifty.com/construction/
「エコロジーアメリカンハウス」を創造する設計事務所兼ビルダーのビルディングダイアリー(現場日誌)

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