討論型世論調査

2012年8月7日

討論型世論調査なるものに参加してきた。場所は慶応大学三田校舎。8/4,5と2日に渡って行われ、200人以上の日本全国から無作為に選ばれた人たちによってそれは繰り広げられた。その200人以上の中に、私も入っていた。

数ヶ月前のこと。電力に関して答えてほしいという依頼が電話であって、よく訳もわからなかいままにそれに応じた。いくらかやり取りした後に今度は東京でフォーラムがあるので参加出来ないかと言われ、交通費宿泊費謝礼が出るという条件ですが如何ですかとの事で日程を見て一応行けますよと返事をした。知らない人から突然に電話があってそんな話になるなんていささかおかしな話ではあるけど、先方の話しぶりや事の内容から偽りはなさそうに思い、経過を見る事にした。

いくらかして書類と東京までの切符が届いた。嘘はなかったらしい。ただ奇しくもその日程がカミサンの出産予定と重なってしまいキャンセルしようかと思ったのだが、直前になってそちらの方が早くなり、自分としては前日に東京行きを決めたりしたものだった。

新幹線でブーン。品川で乗り換えて田町へ。慶応に足を踏み入れるのは何年ぶりだろう。前はおそらく学生の頃だったと思うが、田町の界隈もその当時と比べてかなり変容したように思えた。容積緩和前と後との隔たりは大きい。校舎に着いてセキュリティーチェックを受けから座席に着く。知らない人同士の集まりの会がそこから始まる。

コーディネーター役の人から会についての説明などを受ける。会は二部構成で成っており、まずは10数人の少人数で語ってもらい、そこで作り上げた質問を全員が集まる大会場で専門家に問うらしい。テーマは主に電力についてで、どう感じているか、どうすべきかなどを自由に語ってもらうというものだった。質問はつくり上げるにしても何かを強制されたり、あるいは他者を否定して意見をまとめるなどという事はしないという前提になっていた。どこの誰とも知らない人たちがつぶやく場を設けられたようなものである。誰も何も語らずに終わるのではないかとも思ったが、311以降の電力という誰もが関心を持つこの議題を前にして話に空白ができる事はなかった。

それでも初日、私はどこかぎこちなくて、あまり話す事はなかった。電力について原発について自然エネルギーについて考えや意見を持ってはいたが、いろいろな人の話を聞いていると私の考えは一般受けはしそうになかった。受ける必要はないけれど、それでも言葉には詰まった。その場はモノローグの塊でありながらも雰囲気や方向はあった。ただ、相手の顔が見えている分、2ちゃんの様な極端な進み方は出て来なかった。

場所を移して大会議場へ。それぞれのグループで作り上げた質問を4人の専門家に投げかけて答えてもらう。4人の人選によって偏りが出るのは明らかなことだが、壇上のそれぞれの方は私の知らない人たちばかりだった。肩書きなどは教えられてもい、どういう人なのかという事だけはわかる。ざっと見、東大系の人が多く、研究費の事などからして方向性を危惧したけど思った程の事はなかった。熱心に答えてくれる様子は伝わってくるもので有難味を感じる一方、この会の状況が政府に伝えられる事に危険を感じたりもした。自分を含め素人の200人超はあくまでも素人であって希望を述べる事は出来る。しかしながら情報過多のこの社会において現実を見極めている人は多くはないのではなかろうか。かく言う私もその一人であり、雑多の情報のどこの何を信じていいのかはっきり言えたものではない。

初日の会が終わって懇親会へ。アルコール抜きの食べ物飲み物の立食パーティ。これは味気ないままに終わったと思う。飲みたい人は飲みたいだろうし無理して懇親会など開く必要はないだろう。ホテルへのバスも段取りが出来ておらず、トーンダウンしてその日は終わる。

翌日。ホテルで朝食を摂ってから会場へ。構成は昨日と同じで最初に小さな部会で話して後に大会場へ質問を持っていくというもの。まず小部会での話となる。昨日の一日でどうにか流れはつかめた。プラスになるともマイナスになるともわからない、でも思い切りは必要か。批判は最初から覚悟したが自分の意見を述べてみる。批判されるはずはないはずの会議だが、勇気は必要だった。甘いことばは沢山あってそちらの方に進みたいけど、自分にはそれが出来ないような気がしていた。経済に押しつぶされて語られないままの犠牲はあまりに多く、それをどうにかしたいと思い話をさせていただいた。ヘンな人と思われたかもしれない。多分ヘンな人なのだ、私は。

大会議場へ移動し昨日同様専門家への質問となる。専門家の4人は昨日とは入れ替わって違う人となっていた。どの部会でも活発に意見が出た様で昨日よりも盛り上がりはあった様に思う。この会は「討論型」と名付けられている。考えてみれば微妙な名前だ。討論であれば激しい意見のやり合いが出るのだろうが、ここではそれがない。Q&Aで終わるその形はどこか不完全燃焼を感じさせなくもなかったが、それはそれで良かったのかもしれない。私自身、いろいろな考え方があるという事を知りも出来たし、それは収穫でさえもあった。流れもわかった。ただ、深い話にはならなかっただけだ。最後に小部会にもう一度戻り弁当を受け取る。コーディネーターからねぎらいの言葉をいただく。帰りのチケットと謝金を受け取ってあとはバラバラに終了だった。あまり直接、他の人に話しかける事はなかったけど、終わった気楽さから隣の人に声をかけてみた。どちらからですか、ああ、それは近くでいいですね。おつかれさまでした。笑顔。それだけの事だけどね。知らない人たちとはそこで別れた。付かず離れずの2日は終わった。外はセミが鳴いていて太陽が強烈に照りつけていた。いろいろ考えさせられた2日間だった。

竹中設計事務所アシュ

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