古くて新しい、別の何か

2012年9月1日

なんとなく頭にのこっていて、
時々ふと思い出し、またすぐに忘れてしまうことがあります。

今、偶々思い出したので、
忘れてしまう前に、書いてしまおうと思います…。

それは、
かなり前のことなのですが、
ギタリストのパット・メセニーが、
『オーケストリオン』というアルバムを出し、
来日公演を行った時の、雑誌の紹介記事です…。

パット・メセニーが、
ジャズ系のギタリストであることは知っていましたが、
ちょっと耳にしたことがあるぐらいで、
特別にファンというわけでもありません…。
それどころか、
この『オーケストリオン』というアルバムも、
まだ聴いていません…。

それにもかかわらず、
なぜ、その記事が頭にのこっているかというと、
それが、
とても変わった、不思議なものだったからです...。

そもそも、
この「オーケストリオン」というのは、
「本物のオーケストラ楽器を自動で鳴らす装置」のことなのだそうです。

多くの楽器を自動で鳴らす、
大掛かりな、自動演奏機械、
といった感じのもののようです...。

19世紀の前半から、
20世紀初頭にかけて使われていたのですが、
19世紀後半にレコードが生まれる等、再生機器が進歩して、
そのような大掛かりな音楽機械は、
廃れていくことになったのだそうです。

音楽家でもある祖父が、
この「オーケストリオン」に近いものを使っていて、
パット・メセニー自身も、幼い頃に夢中になっていたのですが、
その後、いつのまにか離れてしまっていたのだそうです…。

ところが、あるとき、
日本のホテルで、自動演奏するピアノを見て驚いたといいます…。

それは、あくまでも「自動演奏するピアノ」でしたが、
そのような幼い頃の記憶が蘇ったのか、
別の楽器、別の音色がまじりあう、文字とおりの機械によるオーケストラ、
「オーケストリオン」の実現を目指した、とのことです…。

そういったことで出来上がった「オーケストリオン」は、
ピアノ、マリンバ、ヴィブラフォン、ベル、太鼓類、ギター等に、
専用のアタッチメントと動力を取り付けることで、
それぞれの楽器に演奏者が付いていなくても、
一斉に鳴らすことが出来るというものだそうです。

多分、
コンピュータでコントロールされているのだとは思うのですが、
機械が演奏しているといっても、
音そのものは生の楽器による、というところが、
古くもあり、新しくもあり、
面白いところなのだろうと思います。

で、
その巨大な演奏機械を持って、
パット・メセニーは来日コンサートを行ったわけです。
そして、
その雑誌の紹介記事に、
その時のステージの写真が載っていたのですが、
これが、とても不思議なもので、
そのために、ずっと頭の片隅にのこっていました…。

ステージには、
ピアノ、ヴィブラフォン、ギター等が並んでいるのですが、
その背後には、大きな棚のようなものがあり、
そこには、打楽器類が収まっています…。

それは、
ドラムスのように、セットになっているのではなく、
タムはタム、シンバルはシンバル、といった具合に、
それぞれの部分がバラバラにされて、
棚の中に配列されていました…。

確かに、
一人のドラマーが演奏するわけではありませんので、
叩きやすいように並べてセットにする必要はありません。

その棚が、どのようなルールで並んでいるのかわかりませんが、
少なくとも、
これまでの、一人の人が演奏するための配列とは別のルールによって、
並べられているのだろうと思います…。

それを見て、
ドラムスは、
人が演奏するからこそ、あの形をしているのであって、
人が演奏しないのであれば、あの形である必要はないという、
考えてみれば、当たり前のことに、
改めて気付かせてもらいました…。

このステージでは、
ピアノ等は、そのままの形で置かれていましたが、
もっと突き詰めれば、
これだって、人が演奏するわけではありませんので、
別の形があり得るということですよね…。

バラバラにされた、様々な打楽器類の並ぶ、大きな棚の前で、
一人でギターを弾いているパット・メセニーの写真が、
なんとも不思議だったので、印象深く、
頭にのこっていました…。

そして、
ルールというものは、
あくまでも、何か一つの目的のためのものであって、
別の方向から見た時にも、常に有効であるとは限らない、
ということを、改めて見せてもらったような気がしました...。

話は、以下に続きます...。
http://blogs.dion.ne.jp/k_nakama/archives/10643577.html

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仲摩邦彦建築設計事務所

ひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたい、と考えています。

建築は、建築主であるお客様や、様々な条件・環境等の、出会いや組み合わせにより生まれるものであり、それぞれが、その機会でこその個性的なものだと考えています。 「これしかない」と納得できるようなものを...

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