「何もつくらない」ということを「つくる」

2012年9月5日

ルー・リードというミュージシャンの作品が、
好きです…。

多分、この人のだけ、
ほとんど全てのCDを持っています。

かなり以前のことにはなりますが、
来日公演にも行ったことがあります。

本人は、あるインタビューで、
「ぼくがやりたいのは
『カラマーゾフの兄弟』と同じレヴェルにあるロックンロールなんだ」と、
なんともカッコいいことを語っているのですが、
確かに、そんな感じで、
文学的な歌詞を、つぶやくような低音で歌うようなスタイルが、
とてもカッコよくて、
気に入っています…。

そんなことで、
オリジナル・アルバムとライヴ・アルバム、
合わせて50枚近くのCDを持っています。

そして、ファンゆえの贔屓目で、
どれも、
ハズレ無しの、名作ぞろいではないか、
と思っています…。

ただ、
その中の1枚に、
有名な、
「最大の失敗作」とか、
「ロック史上、いちばん嫌われ続けている問題作」、
などと呼ばれて、
大層、悪名高い作品があります...。

それが、
『METAL  MACHINE  MUSIC(メタル・マシーン・ミュージック)』です。

この作品、何がすごいといって、
もともとLP2毎組で出されていたのですが、
その全4面、
16分ずつ、
合計1時間ぐらいに渡って、
延々と、
ギターの音を加工したようなノイズが鳴り続けることです…。

そして、時間が来ると、
何のオチもなく、プツッと終わってしまいます…。

文学的な歌があるわけでもなく、
メロディがあるわけでもなく、
ただただ、ひたすらに、ノイズです…。

1975年に発表された当時は、
相当な批判があったそうで、
ルー・リード本人が、
「騙されたと思った人も多いだろう。
その気持ちは理解できるし、それについてはあやまりたいと思っている」、
という「謝罪声明」を出したとも言われています…。

もっとも、
後のインタビューでは、
「あやまってなんかいない」、
「あの声明にしても、ぼくが喋ったのとはニュアンスが違ってる。
レコード会社が出したわび状は、レコード店に向けたものだ」とも、
語っていますが…。

その後は、
「失敗作」と言われることに反論し続けています…。

あまりにも叩かれるためか、
「『メタル・マシーン・ミュージック』以外の自分のアルバムはどれも好きじゃない。
ときどき眠るために聴いたりする程度だ。
なんで他のは好きじゃないかって?
それは『メタル・マシーン・ミュージック』じゃないからだ」…、
なんて、
ほとんど意地になっているのではないか、
というような面白いことも話したりしています…。

この作品、実際に聴いてみて、どうかというと、
さすがに、私も、
何が何やら、よくわかりません…。

多分、
ルー・リードのアルバムでなければ、
買わなかったと思います…。

現代音楽などでは、
もしかしたら、こんな感じのものもあるのかもしれないのですが、
その音楽的な価値などは、
もちろん、
私などには、とても理解することが出来ませんでした…。

そんなことで、
このCDを買ってはみたものの、
一度聴いた後は、
もう二度と聴かなくなってしまった…、
かというと、
実は、
意外とそうでもなくて、
かなりの回数、聴いています…。

いや、
聴いているというのは正確ではなくて、
かなりの回数、このCDをかけています...。

つまり、
かけてはいますが、聴いているのかいないのか、
よくわかりません…。

もしも、このCDを、
黙って座って聴きなさい、と言われると、
かなりの拷問のような気がするのですが、
仕事中の、ある種の作業の際には、
実は、
結構はまるような気がしています…。

というのも、
仕事中、考え事をしている時に、
なんとなく音楽が邪魔になる時があるのですが、
そんな時に、割と頻繁に、
このCDをかけたりしています…。

うまく表現できなくて、
妙な言い方になってしまうのですが、
「何も聴きたくない時に、ちょうどいい作品」、
という感じがしています…。

何も聴きたくなければ、
何も聴かなければいいではないか、
と言われそうなのですが、
そういうこととは、
なんとなく、ちょっと違うんですよね…。

結果的に、何の音も聴こえてこない、という状態と、
積極的に、何も聴かない、ということとは、
何となく、微妙に違う感じがあるような気がしています…。

「何も聴かない」ということを「聴く」、
という感じでしょうか…。

つまり、
本当に「何も聴かない」という状態をつくり出すためには、
音楽を消すということだけでは、
実は十分ではなくて、
それなりの「操作」が必要になるような感じがしています…。

なぜ、そんな、
『メタル・マシーン・ミュージック』のことを、
思い出したかというと...。

話は、以下に続きます...。
http://blogs.dion.ne.jp/k_nakama/archives/10900241.html

仲摩邦彦建築設計事務所

プロフィール

仲摩邦彦建築設計事務所

ひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたい、と考えています。

建築は、建築主であるお客様や、様々な条件・環境等の、出会いや組み合わせにより生まれるものであり、それぞれが、その機会でこその個性的なものだと考えています。 「これしかない」と納得できるようなものを...

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