都市を観る眼

2012年10月11日

菊岡倶也編著『建築・土木365日「今日は何の日」』、
という本があります。

1年365日、
その日に建築・土木の分野で起こった出来事が書かれています。

例えば、
明日2月9日のページを見てみると、
「東京書籍館、文部省の所管へ」となっています。

明治8年のこの日に、
東京書籍館(しょじゃくかん)が、
太政官内の博覧会事務局の所管から、
文部省の所管となり、
それは、
現在の国立国会図書館の源流となったようです。

そして、
この時の館長は、永井久一郎という人で、
作家永井荷風の父だったのだそうです…。

だから何なのかといった感じの、
何やらマニアックな知識なのですが、
時々パラパラめくると、
面白い話がたくさん載っていて、
結構気に入っています…。

ついでに2月のページをパラパラと見ていくと、
2月16日のページには、
「森鴎外の『妄想』 東京改造への希望を述べる」、
とありました。

明治43年のこの日、
森鴎外(当時48歳)は、
慶応義塾大学文学科顧問に就任したのだそうです。

その森鴎外は、
あまり知られていないように思いますが、
晩年まで、
東京の現況、都市の改造等について、
積極的に発言をつづけたのだそうです…。

その年の5月に発表された短編『妄想』では、
「今まで横に並んでいた家を、竪に積み畳ねるよりは、
上水や下水でも改良するが好かろう」、
とか、
東京の家の軒の高さを一定にして、
整然たる外観の美を成そうという意見に対して、
「そんな兵隊の並んだような町は美しくない。
強いて西洋風にしたいなら、むしろ反対に軒の高さどころか、
あらゆる建築の様式を一件ずつ別にさせて、
エネチアの町のように
参差錯落(しんしさくらく)たる美観を造るようにでも心がけたら好かろう」、
などと、
皮肉っぽく書いたりもしているのだそうです…。

「参差錯落」とは、
一様ではなく、様々なものが入り混じっている状態のことだそうで、
要するに、乱雑ということのようです…。
また、
エネチアは、イタリアのヴェネチアのこと…。

森鴎外は、
ドイツに留学したことが知られていますが
(小説『舞姫』なんか有名ですよね)、
その当時のドイツは、過密化した都市が悲惨な状況となっていて、
衛生学的見地からの都市改造論議が盛んだったのだそうです。

医者でもあった鴎外は、
そういった議論の影響を強く受けていたのか、
美観よりも、
上下水道の整備など、
公衆衛生の観点から、都市を見ていたのかもしれません…。

ところで、
この『建築・土木365日「今日は何の日」』の次のページ、
2月17日のページには、
「臨時建築局発足 官庁営繕組織の原型がスタート」とあります。

話は、以下に続きます...。
http://blogs.dion.ne.jp/k_nakama/archives/10620775.html

仲摩邦彦建築設計事務所

プロフィール

仲摩邦彦建築設計事務所

ひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたい、と考えています。

建築は、建築主であるお客様や、様々な条件・環境等の、出会いや組み合わせにより生まれるものであり、それぞれが、その機会でこその個性的なものだと考えています。 「これしかない」と納得できるようなものを...

仲摩邦彦建築設計事務所の事例

  • YK-House

    YK-House

  • MS-House

    MS-House

  • OT-House

    OT-House

  • 酒楽和華 清乃

    酒楽和華 清乃

  • 惣菜かぼす

    惣菜かぼす