竹と漆喰のドーム@京都精華大学
まず最初に土で出来た世界の建築についてのレクチャーを行ったのですが、その後に続く演習では土を使った制作活動したいと考えていましたが、家具のような小さなものではなく、できれば「空間」づくりをしたい。その結論として、竹と土と漆喰を使ったドームづくりに挑戦することにしました。
以前、福井市で「土の依り代」と名付けたインスタレーションをしたことがあったのですが、今回の作品はそれより大きく、しかも中に人が入ることが出来る、という点で、かなり簡易度が高い。
5/10はその初日、日本の伝統的な建築の土壁の下地に使われる竹小舞で、ドームの形をつくります。
最初はフニャフニャの竹のアーチに少しづつ竹を追加していって、竹籠のような、土を塗り付けられるような下地をつくります。
竹と竹を固定するのは、日本の民家では藁を使いますが、今回は作業効率を重視して鉄筋を固定する時に使われる結束線を使っています。
少しづつ、竹の編み目を細かくしていきますが、基本長方形の日本の民家の土壁下地と違って、ドームの竹下地は三次元曲面になり、頂点付近は竹が一点に集まってくるので、その調整が難しい。
皆の頑張りのおかげで、一日目で70%ほどが完成、5/17の二日目の午前中で竹の下地がほぼ完成。
二日目の正午に、「泥コン屋さん」と言われる荒壁の土を練って製造しているお店から、トラックいっぱいの荒壁土が届きました。藁と粘土が原料ですが、それらを混ぜて数週間寝かせていあるので、内部の藁が発酵して、動物の住む納屋のような?独特の匂いがします。この発酵が土壁を強くするのですよ。
固さの調整のためにさらに少し藁を足して、土の塊をほぐすために、みんな裸足になって土踏み。独特の感触に学生たちも大興奮。
午後からみんなで鏝を持って、一気に荒壁塗りを開始。竹の下地が傾かないよう、土の量が四方で偏りが無いように、土を塗っていきます。
夕方になってほぼ頂上まで塗れたか、というその時。なんだかドームの形がおかしいな、と思って間もなく、ドームがゆっくりと潰れていきました。。。。
衝撃の一瞬。先ほどまでの興奮は何処へやら、みな絶句。そりゃそうですよねー。
土が固まるまでは竹の下地だけで土の重みを支えなくてはいけないことは分かっていて、下地竹に加えて丸竹も織り交ぜてかなり補強しておいたのですが、少々見込みが甘かったようです。後で考えると、せめて二日に分けて塗り進めるべきだったのですが、後の祭り。
潰れたドームの形はそれなりに竹の生み出す曲線も美しく、そのまま屋外ベンチとして仕上げるか、という案もあったのですが、やはり「空間」をつくりたい、という気持もあって竹の下地を再度立ち上げることに。
土が少し乾いて作業しやすくなった数日後を見計らって、事務所スタッフとインターン総出で、荒壁の撤去作業を開始。
再び竹小舞だけの状態に復元して、えいやっとドームを建て起こして、歪んだ形を調整して、二日後には無事に立ち上がりました。むしろ前より形が良くなったんじゃないか?という出来映え。
荒壁を塗ってしまうと、再び同じような事態が起きないとも限らないので、前回の反省をふまえ、またある程度長期の設置にも耐えるように、最初の下塗りには荒壁でなく軽量骨材を使ったモルタルを塗る方向に方針を変更しました。
まずは竹小舞の上にラス金網を張って、その上にパーライトという雲母を焼いてつくった軽量骨材と、藁を混ぜたセメントを塗る。土壁だけで出来なかったのは少々残念ですが、軽量モルタルは荒壁に比べて比重も軽く、強度も強く、雨にも劣化しないので、安全性を考えるとこのサイズのドームをつくるにはおそらくベストな選択。
インターンのスペイン人、カルロスも嬉しそうにモルタルを塗っていきます。
およそ一日の作業でモルタル塗りが八割がた完成。
そして来る5/31日には、漆喰の上塗り作業です。先日撤去した荒壁も、再び柔らかくしてドームの内側に塗る予定。
森田一弥(京都の建築家・森田一弥建築設計事務所) さんの記事
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