旭硝子の後付け施工のエコガラス「ATTOCH(アトッチ)」が省エネ対策として脚光
オフィスビルなどの窓が、内側からガラスを貼り付けるだけで遮熱・断熱性の高い「エコガラス」に変身-。旭硝子の後付け施工のエコガラス「ATTOCH(アトッチ)」が、既存ビルの省エネ対策として脚光を浴びている。平成24年10月の発売からじわじわと普及し、試験施工などの依頼は常時約300件に上る。25年度には、一般財団法人省エネルギーセンター主催の省エネ大賞(製品・ビジネスモデル部門)を受賞した。省エネの潜在需要を掘り起こす挑戦が実を結びつつある。
「ビルの開閉できない固定された窓ガラスをエコガラスに換えるには、外に足場が必要でコストがかかるし、工事中は室内が使えない。だったら、内側からガラスを貼り付けて複層にすればコストや工期の課題を解消できると考えた」
旭硝子グループで国内の建築加工ガラスを担うAGCグラスプロダクツの岡賢太郎・アトッチ事業推進本部営業部長は、考案の理由をこう振り返る。
岡氏は21年1月、営業マンとして顧客のビル管理会社から窓の改修を依頼された。だが、最初からエコガラスを組み込める新築と違い、既に固定されて開けられないビルの窓を簡単に改修できる製品は当時なかった。その際に浮かんだのがアトッチの原型となるアイデアだった。
商品企画や技術、施工など部門横断の「ビル省エネ改修市場開拓チーム」を12人で立ち上げ、市場調査を開始。ビル会社への聞き取りのほか、首都圏のオフィスビルやホテルなど150物件の外観も観察すると圧倒的に固定の開けられない窓が多く、「ビル改修には大きな需要が眠っていると確信した」(岡氏)。
だが、技術的には大きな壁が立ちはだかっていた。アトッチはビルの窓ガラスの内側に、熱の放射を防ぐ金属膜を塗布したガラスを貼り付ける構造。2枚のガラスは約1センチの空気の層をつくって密閉し、外気温を室内に伝わりにくくすることで夏は涼しく冬は暖かい環境をつくる。
ただ、密閉が十分でないと空気層に余分な水分が入り込み、内部に結露が発生する恐れがある。工場で機械的に密閉できる新築用エコガラスと違い、アトッチはビル内で作業員の手で施工するため、正確に密閉を確保できるかどうかが大きな課題だった。
施工の均一性をどう実現するか、試行錯誤の日々が続いた。当初は「アトッチを貼り付ける“押す力”をいかに管理するかばかり考えていた」(岡氏)が、2枚間の空気を減圧してガラス同士が近づく力を利用するという「技術陣のひらめき」が一気に製品化を引き寄せる。アトッチを窓ガラスに貼り付け後、機械で空気を減圧して一定の数値に保てているかを測り、空気が抜けていないかどうかを確認する。
このオリジナル手法の採用により、アトッチは内部結露に5年保証を付けて製品化。施工後は、1枚ガラスよりも断熱性が3.7倍に、日射による熱をさえぎる遮熱性も1.8倍にそれぞれ高まる。
省エネ対策には、窓ガラスにフィルムを貼る手法があり、遮熱性を確保できるものの、断熱性ではアトッチが大幅に上回る。実際、縦横各15メートルの6階建てビルで年間のエネルギー使用量を比較すると、フィルムは1枚ガラスから2.7%の削減にとどまる一方、アトッチは32.4%減と大きく差がついた。
アトッチの好調について、岡氏は「快適性を犠牲にしないで省エネできるところが広く受け入れられた要因」と分析する。(会田聡)
アトッチ 旭硝子グループのAGCグラスプロダクツが販売する後付け施工のエコガラス。既存の窓ガラスの内側に熱の放射を防ぐガラス「Low-E」を貼り付け、断熱性や遮熱性を大幅に向上して冬場は暖かく、夏は涼しい環境をつくる。5月には路面店舗の外部から貼り付ける方式の「ワイルドアトッチ」もラインアップに加わった。
この記事はYahooニュースより転載しています
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