移り変わる物語り

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今日は、以前に大きなリビング収納を作らせて頂いた藤沢のSさんから、新たにご相談頂いていた食器棚の取付にノガミ君と出掛けておりました。
上が施工前。下が施工後。こうした写真って昔よく見ましたね。
「こんなにきれいに生まれ変わるんです!」って。
それは新しくなったら、何でもきれいに映りますから目を引くかもしれません。
でも本当に知りたいことは、きれいになった姿だけではなくて、どうしてこの形になったのか、ここになるまでにどういうお話があったのかが知りたいって私は思うのです。
だから、前にも書いたかも知れませんが、書きますね。

Sさんにはそのリビングの家具を設置した後に、新たな相談を頂いていたのです。
Sさんの部屋の間取りは、キッチン、ダイニング、リビングがワンルームになっていて、そのリビングに少し背の高いベンチのような置き畳があるのです。この置き畳があるスペースがリビングで、テーブルがあるスペースがダイニングと何となく仕切られているのですが、「それをもっとはっきりと分けられるような間仕切りとなる家具がほしいのです。それから、いつもここで簡単な朝の支度をするのにお化粧道具などをこのワゴンに置いたままなので、きれいに整理できるようなものにもできたらいいなと思っているのです。」と、オーブントースターとお化粧道具などが混ざって置かれたワゴンを示してお話ししてくださいました。
「分かりました。」とさっそく詳しいお話をお聞きしたのですが、私の頭の中は間仕切りを作るイメージが浮かぶよりも、その奥に見えているブラインドが掛かった窓と、そのスチールのワゴンの組み合わせが気になっていたのでした。そして、私の座っているテーブルの後ろにある食器棚も。
「Sさん、この窓はいつもブラインドを閉めていらっしゃるのですか。」
Sさん、ちょっと寂しそうに、照れくさそうに微笑みながら、「ええ、ここに庭を作ったのは良かったのですが、向こうのアパートを出入りされる皆さんからこの部屋が丸見えになってしまうのです。庭をいじる時間も普段が忙しくてなかなか時間が取れないので、いつもブラインドを掛けているのです。」と言いながらブラインドを上げてくださいました。
芝があって、気持ちの良い庭が見えました。
「そうなのですね。これほどきれいなお庭なのに。
実は今、私はお話を聞いていて思ったのです。できればこの庭をいつも眺められるようにできたらいいなって。」
「・・?」とSさん。
「置き畳のそばに間仕切り収納を作るよりも、後ろの食器棚にもう少しものを整理してしまうことができるかも知れないって思うのです。」
Sさんのお婆ちゃんも奥さんも不思議そうに顔を見合わせます。
「このオーブントースターや細かいもの、そして、食器棚の前に並んでしまっているものを整理できる場所を作る方が、無理に間仕切り収納を作るよりも使いやすい収納になるのではないかと思っています。食器棚がきちんと整理できれば朝支度の道具をしまう場所もできてくると思います。そのあとに、お庭に手を加えていくというのはどうでしょうか。もちろん、庭いじりは私たちの仕事ではできないことがあるので、専門の方にお願いして、目隠しとなる衝立を立てたり、立ち木をうまく植えたりすることで、お向かいのアパートさんとうまく視線がずらせると思います。そうできれば、ブラインドを開けることができるし、そうなればブラインドの前にこうして細かいものを置いてしまうことも無くなるんじゃないかって思うのです。庭が見えればm「自然とここはダイニングとしてきちんと使うことができるように思えるのです。
そのあとに、どうしても間仕切りのようなものが必要ならまたお声掛け頂ければうれしいですし。」
「なるほど、イマイさん、面白いです。」
そういうお話のやり取りがあって、間仕切りを作る予定が食器棚の改装をすることになったのでした。

お話しするって面白いのです。

プロフィール

今井 大輔(フリーハンドイマイ)

注文家具屋 フリーハンドイマイ

私たちが作るのは、注文家具です。たった一枚の棚板にも、作る人・使う人の思いが込められています。
ふっと何気なく戸棚の扉を開けた時、
「あっ、これが注文家具なんだ・・・。」
と言ってくださった方もいらっしゃいます。

私たちが作るのは、注文家具です。私たちが提案するのはその家具がお部屋に運ばれたあとの暮らしです。使うその人の暮らしを演出し、また永くつきあってゆけるものを私たちはつくり続けています。

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