四世代が暮らす「豊中の家」‐3‐非効率な物創りに一生を捧ぐ
2017年1月10日
四世代が暮らす「豊中の家」‐3‐非効率な物創りに一生を捧ぐ
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「豊中の家」は、2車線歩道付きの道路に面しています。
街は建築の集合体ですから、建築とは街づくりの一端を担っていることになります。
建築家・槙文彦は「道は街の断面」と言いました。
美しい建築を創ることは、地域への貢献だと思っています。
美しいの解釈はそれぞれ違うもの。
「それぞれ」を、諦めの言葉にしないことが、物創りにおいて重要なことだとも思っています。
また、実物は1つしか創れないので、模型をつくり、様々な角度から検討するのです。
これは玄関からアプローチを見返したところ。
右に積んでいるのは素焼きレンガです。
実際はもう少し奥に積むのですが、透けかたを検討するため、仮に積んでくれました。
左下にあるのは、ガレージの床の試し塗りです。
インナーガレージの床材なので、発色を見るためにつくったもの。
LDKの間接照明とカーテンBOXも、実物大模型を作成してくれました。
構造体との隙間を検討するために、棟梁がつくってくれたものですが、実物大模型を「モックアップ」と言います。
設計事務所がこれを制作するのは難しいのです。
実物大を作ろうと思うと、それなりの強度のある材(例えば木や鉄)が必要になります。
加工する技術、専門の工具が必要になってきます。
私達がつくれるのは、スチレンボードというカッターで切れる、模型専用の材までなのです。
木を削る道具はノミ。
技術も、体重の乗せ方も、これはプロの技術です。
近ごろ、こうして実際に物をつくる人への敬意が、少なすぎると感じているのは私だけでしょうか。
量産できるものや、コピーできるシステムを構築するほうが、ビジネスとしては、展開が大きくなります。
そして、時代の寵児ともてはやされます。
その技術革新、ビジネスセンスは素晴らしいと思いますが、対極にあるのが建築だと思います。
頑丈であるということは「重い、硬い」が基本で、量産化、工場生産には向きません。
1つとして同じものがないので、飛行機のように大きな工場があればよい訳でもないのです。
こんな非効率な物創りに、一生を捧げる変わり者が集まるのが、建築の現場です。
頑固、ヘンコ、変わり者。
褒め言葉とは言えませんが、この時代において、それほど悪い言葉でもない気もします。
文責:守谷 昌紀。
◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記
株式会社一級建築士事務所アトリエm
夢は必ず実現する、してみせる。
一級建築士 守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...