軒が深いから「おいでよHOUSE」‐1‐プロローグ

2020年12月4日


軒が深いから「おいでよHOUSE」‐1‐プロローグ



1997年、初めて住宅誌に作品写真を送った時のこと。

 編集者に「コンセプトが大事だから」と言われた。暗にコンセプトが弱い、明確でないと言われたことになる。

 しかし今考えると、半分は正しく、半分間違っていると思っている。

 建物は草木ではないので勝手に生えてくることはない。どんな建物にも明確なコンセプトが確実に存在する。

 例えば、「利益を限界まで追求する」というのも明確なコンセプトである。



 敷地は大阪市内の住宅地。



 間口5m程の敷地に、駐車場とエントランス周りの空間を配置した。



 俯瞰するほうがその形状が分かりやすい。

 そのシビアな配置の中で、1m程もある軒の張り出を見て貰えるだろうか。



 1階は3つの個室。 



 北側接道の為、2階の南側にLDKを配置している。

 そして、LDKに面して9畳程あるロフトを設けた。



 ロフト下には天井高を抑えられる、浴室などをまとめてある。

 北側道路に面したスタディコーナーは、こじんまりとした空間だが、落ち着いて勉強ができるはずだ。(多分)



 まだお子さんが小さいので、ロフトは遊び場としてかなり期待している。



 高い天井は面積以上の解放感を与えてくれるはずだ。



 今は家の中がゴチャゴチャしていて、なかなかお友達にも来て貰えない。

 新しいお家が出来たら、今はお呼ばれしているお友達を是非招きたいんです。

 そんなお友達を家の前で、傘を差したまま待たせるのは嫌なんです。

 奥さんからこの話を聞いた時、この計画の幹となるコンセプトにするべきだと思った。

 プロジェクト名はその場で『おいでよhouse』に決めたのだ。

 コンセプトとは出来上がった建物を説明するためにあるものではない。

 生物にとってのDNAのようなもので、この建物が存在する理由と、その設計の根幹となるものである。

 自身が暮らした京都の中部に位置する街では、玄関に軒や庇が無い住宅など無かったのだと思う。

 市街地で暮らすようになり、そのことに気づき、言葉にできるところが凄いと思ったのだ。

 このコンセプトは間違いなく正しい。ならば良い建築が出来上がることはは確定している。

 しかし現実はいつものことながらで、厳しい金額調整、そしてハードネゴの下ようやく着工となった。

 「おいでよhouse」

 何度聞いてもよい響きだ。

 悦に入っているのが私だけにならないよう、気を引きしめて竣工を目指そうと思う。

文責:守谷 昌紀

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』に「回遊できる家」掲載


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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...

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