どんな土地でも家を建てられる訳ではない 基本となる都市計画法と建築基準法

 家は自由に建てられる訳ではなく、基本となる都市計画法があります。都市計画法では、一定の要件を満たす地域を都市計画地域と定めており、これはさらに市街化区域市街化調整区域に分けられます。

 基本的に、家を建てられるのは市街化区域になりますが、農家住宅や市町村によっては、例外的に市街化調整区域でも家が建てられます。

 ただし、すべての市街化区域で住宅が建てられる訳ではありません。建物の用途や規模を規制する用途地域が指定され、地域によって条件に大きな差があります。土地の購入に際しては、これら用途地域の特徴を知っておくと便利です。

用途地域の種類と特徴
用途地域住宅の建築用途地域による規制
第1種低層住居専用地域低層住宅のための良好な住居環境を保護するために指定された地域。小規模の店舗や事務所を兼ねた併用住宅も建てられる。建物の高さは、斜線制限に関係なく、10mまたは12m以下に制限される。住宅以外では、小・中・高校、図書館、老人ホーム、保育所などが可。
第2種低層住居専用地域小規模な店舗の立地を認める低層住宅の専用地域。建物の高さは、斜線制限に関係なく、10mまたは12m以下に制限される。住宅以外では、2階建てまでの150㎡以下のコンビニ・飲食店などが可。
第1種中高層住居専用地域中高層住宅のための良好な住居環境を保護するために指定された地域。上記に加えて、4階建て以上のマンションが建てられる。住宅以外では、大学、病院、2階建てまでの500㎡以下の店舗・飲食店が可。
第2種中高層住宅専用地域中高層住宅のための良好な住居環境を保護するために指定された地域。上記に加えて、2階建てまでの1500㎡以下の事務所・店舗が可。
第1種住宅地域大規模な店舗、事務所の立地を制限する住宅のための地域。上記に加えて、3000㎡以下のスポーツ施設、ホテル・旅館、事務所などの建築が可。
第2種住宅地域住宅と店舗、オフィスなどの併存を図りつつ、住居の環境を守るために指定された地域。上記に加えて、麻雀・パチンコ店、カラオケボックス、3000㎡を超えるボウリング場などのスポーツ施設、ホテル・旅館、事務所の建設が可。
準住居地域幹線道路の沿線などで、地域の利便の増進を図りつつ、住居の環境の保護を目的として指定された地域。上記に加えて、200㎡未満の劇場・映画館、営業用倉庫の建築が可。
近隣商業地域近隣住宅のための店舗の利便を増進するために指定された地域。上記に加えて、150㎡以下で危険性や環境悪化のおそれの少ない工場の建築が可。
商業地域商業等の業務の利便を増進するために指定された地域。上記に加えて、200㎡以上の劇場・映画館、バー・キャバレー・クラブ・料理店、ソープランド・ヌードスタジオの建築が可。
準工業地域環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便性を増進させるために指定された地域。
工業地域工業の利便を増進するために指定された地域。ホテル・旅館、学校などの建築は不可。
工業専用地域不可工業の利便を増進させるために指定された地域。住宅やマンションが建築は不可。


建ぺい率による制限

 建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。

 建ぺい率(%)=建設面積÷敷地面積×100

 住居系地域では、住宅地としての環境を保つ目的から、建ぺい率の上限は30%~60%と低く定められており、商業系の地域は、土地の有効利用ができるように建ぺい率は80%と高く設定されてます。原則として用途地域ごとに決まっている基準を超えてはいけません。

容積率による制限

 容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合です。

 容積率(%)=延べ床面積÷敷地面積×100

 容積率も原則として用途地域ごとに決まっておりますが、複数の基準がある場合にいずれを採用するかは、各自治体によって異なります。

接道の義務

 建築基準法では、幅4m以上の道路に2m以上接していない土地は建設地として認められません。ただし、道路に必ず接している必要はなく、広い道路から路地でつながっている奥まった敷地も、路地幅が2mあれば家を建てることが可能です。

セットバック
 幅4m未満の道路でも2項道路と呼ばれ、特別に建築基準法の道路として扱うことが認められた道路があります。しかし、建て替えの時には、道路中心線から2m敷地を後退さなければなりません。また、建ぺい率や容積率は、この後退部分を除いた敷地面積から割り出すため、既存の家より狭くなります。

高さの制限

 用途地域によっては、建物の高さ制限があります。第1種・2種低層住宅専用地域では北側斜線制限絶対高さ制限、第1種・第2種中高層住宅専用地域では北側斜線制限を受け、制限内に建物を建てなければなりません。そのほか、道路斜線制限が全地域にかかります。

 また、建築基準法の規定とは別に、各自治体で高度地域を指定している場合もあります。市・区役所で調べることが必要です。

防火に関する規制

 都市計画で防火地域準防火地域、それに法22条区域(屋根不燃区域)を指定し、建造物は燃えにくい材料・構造でつくるように規制しています。どの地域に指定されているかは、役所で確認できます。

適用地域制限内容
防火地域内の建築物1.地階を含む3階以上の建物か、延べ床面積が100㎡超の場合には、耐火建築物としなければならない。
2.2階以上の建物で、延べ床面積が100㎡以下の場合には、耐火建築物または準耐火建築物としなければならない。
準防火地域内の建築物1.地階を除いて4階以上の建物か、延べ床面積が1500㎡を超える場合には、耐火建築物としなければならない。
2.延べ床面積が500㎡以下の建物の場合には、耐火建築物または準耐火建築物としなければならない。
3.地階を除いて3階以上の建物場合には、耐火建築物または準耐火建築物とするか、防火上の基準に適合する構造としなければならない。

プロフィール

東恩納 尚縁

将来の夢は孫と一緒に暮らすこと。

孫ができた為、将来は娘夫婦と二世帯住宅の夢を持っています。
「住まい」について考えたコラムを寄稿しています。

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