2012年度グッドデザイン賞 ~個人住宅編~ 2/2

工業製品からビジネスモデルやイベント活動など幅広い領域を対象とし、一年に一度、デザインが優れた物事に贈られるグッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会主催)。
今年も3,132件の審査対象に対して一次審査および二次審査を実施した結果、1,108件がグッドデザイン賞を受賞した。

「グッドデザイン金賞」などのグッドデザイン特別賞各賞については、11月25日(日)グッドデザイン賞受賞発表展会場で発表する。また、今回は初の試みとしてグッドデザイン賞全受賞デザインを展示する「GOOD DESIGN EXHIBITION 2012」を予定している。

今回は、2012年度グッドデザイン賞1,108点の中から、個人住宅をピックアップしてみたい。

ヴォイド・キューブ

家結び
木造3階建ての専用住宅兼ショールーム。
構造は木造門型ラーメン工法により立体感のある空間構成と耐震性を両立。また、将来的な間取りの変更にも容易に対応可能となっている。
家結び
それぞれの空間は光を制御しながら自然と相互に繋がりつつ、冬は暖く、夏は涼しい設計になっている。
審査委員の評価
木造ラーメン工法の特性を生かした開放的な外観と自由な間取りが実現されている。また、半屋外空間が多様に 組み込まれており、それらがうまく公私の中間領域となり、街並みへの貢献も期待される。さらに、地元の職人との連携による分離発注方式が機能すれば、コストがネックとなっている木造ラーメン工法の普及にとっても意味のあるものとして評価できるだろう。
プロデューサー、ディレクター、デザイナー:
一級建築士事務所オノデラヨシヒロ建築設計室
代表 小野寺 義博


ウキウキハウス

家結び
敷地は閑静な住宅街の一角にあり、周辺は住宅の密度が高く、多少窮屈な印象を受ける中、敷地に隣接する公園が周辺に貴重な余白を与えている。
公園に至る抜けを妨げず、住宅密集地におけるプライバシーの確保と、光と風を取り込むことの解決として、家を浮かせる手法を選択した。
家結び
2Fは中庭から取り込まれる外部の開放感を存分に味わえる空間となっており、LDKというよりは、寮などの食堂とか、ベンチのある庭といったイメージで、室内でありながら外部を感じさせる開放感のあるスペースとなっている。
審査委員の評価
住宅密集地で、プライバシーを守りながらも外との繋がりを意識している。主要住宅部を2Fに上げて1Fがピロティーとして開放する独特な外観で、通りを歩く人の視線が隣地の公園を見通せるだけでなく、2Fの中庭と住まいの内部が周辺から見下ろされないよう工夫されている。少しそっけなくさえ見える外観も、無駄な装飾が一切ない内装も、多くのディテールを重ねてなにげなく見えるように整えられ、暮らす人を主体とする構想がすみずみまで行き届いているデザインと言える。


自然を有効活用した、雪国の壁付け太陽光発電装置付住宅

家結び
青森市郊外の自然豊かな野木和公園を眺望出来る場所に建つ個人住宅。
家結び
将来の省エネルギー化未来を考え、南面の一部外壁に太陽光発電パネル(ソーラーパネル)を設置。雪国青森という冬場のデメリットも考えられたが、真南方向の外壁に4kw/hの発電能力を持つソーラーパネルを設置することで、冬場でも雪の反射光を利用して発電をしていく。
審査委員の評価
青森という寒冷地において、これからの住宅はどうあるべきかを考えた提案である。全体として大きなヴォリュームを分棟化したのは、冬期の負荷の増大と街並に対するシークエンスのどちらを優先するかの判断だろう。積雪に対する対応策に関しても、軒先の雪害を避けるために、雪を落下させない平屋根とすることによって明快な解決法をとっている。創エネのためのソーラーパネルについても、積雪時の発電を考慮して皆壁面に設置し、冬期の低い太陽高度と雪の反射を利用している。積雪に対する新しい対応策を追求することによって、これまでとは異なる表現を導き出した意欲的な作品である。
森内建設株式会社
プロデューサー:森内 忠良
ディレクター:森内 忠良
デザイナー:森内 忠良

地域の「縁側」となる住宅

家結び
この建築物は、沖縄県石垣小学校校門前に立地する住居兼飲食店。
戦後の沖縄では鉄筋コンクリートが普及して、赤瓦木造建築物木造民家が衰退しつつある。
家結び
この建築物は赤瓦屋根による遮熱・放熱に加えて、日射状態の異なる表庭と裏庭との気圧の差によって、裏庭の冷気が建築物の内部を通り抜けるため、日射の強い沖縄において冷房負荷を軽減する仕組みになっている。

外観は周囲の集落景観を配慮し、「ヒンプン(目隠し)」や「アマハジ(縁側)」と呼ばれる伝統的な建築要素を設え、内部には半戸外の飲食店(土間)を取り込み、沖縄地域にはこれまでなかったプレカット工法を採用している。
審査委員の評価
地域に開かれた伝統を体験して継承するきっかけを作っている飲食店兼住居の例。地域の生活の知恵であった敷地内の構成を取り入れ、風通しを確保して電気冷房になるべく頼らない工夫、景観に溶け込む構成要素の高さや質感への配慮、地域で手に入る素材で環境負荷の低い工法を選択し商業施設と家屋のニーズに適応させた工夫、その過程を子供たちに見せて次世代に繋ごうとしている試みなど、評価する点が多い。街路に面したオープニングの奥にある低い石壁は、夜になるとその背後の料理店の光と音が周囲にひかえめに漏れ、訪れる人をあたたかく迎えることと思う。
社会環境設計室
デザイナー:仲吉厚志、金城正紀


WOOD × STEEL HOUSE

家結び
建て主の要望は、ローコスト、可能な限り大きな空間、ライフスタイルや家族構成の変化に対応可能であった。
家結び
都心の狭小地において、木と鉄のハイブリッド構造を採用したことにより、H-150×75の細い鉄骨柱を、910mmピッチで連続させることで大空間を持つ住宅が実現した。
審査委員の評価
いわゆる「短冊状」と呼ばれる敷地において、ローコストで開放的な空間を実現させるために選ばれたのが鉄骨を門型に組んだものを並べ、間を木の梁で繋ぐという方法である。これによって、敷地に対して短い側の構造体が必要なくなり、隣家と接していない開口部を最大に取る工夫もなされる。約90センチ間隔で並ぶ鉄骨は隠さず、他の素材と共存する色のコントロールをほどこしてインテリアにリズムを生んでいる。クライアントの好みとの兼ね合いも必要になってくるが、同様な敷地での普遍性を生む可能性がある提案だと言えるだろう。
プロデューサー、ディレクター、デザイナー
矢作昌生建築設計事務所 
矢作昌生


ユウハウス

家結び
熊本市郊外の閑静な場所に建つ家族4人ための住宅。
敷地の広さが限定されている事から、平面計画は至ってシンプルな2層で構成されているが、断面や構造手法によって内部の空間は平面だけでは想像できない視覚的な連続性を有している。
家結び
審査委員の評価
熊本市郊外の閑静な場所に建つ住宅である。シンプルな矩形平面を2層重ね合わせ、外観もミニマルな表現に抑えている。1階と2階の間に設けられた水平スリットが効いている。このスリットは浮遊感のある軽やかな外観を作り出すとともに、住宅の内部が街へ適度に開放し、街と柔らかくつなぐことに成功している。垂直の「すきま」と呼ぶ2階レベルのルーフコートは、太陽光が降り注ぐ明るいプライベート空間を獲得している。足下の水平スリットからは街の様子がうかがわれ、ここでも街とのつながりを強く意識できるような断面構成になっている。都市住宅のもっている「開く/閉じる」という根源的な課題に対しての上手い解答である。
株式会社 松山建築設計室
デザイナー:松山将勝、豊福誠治、小松優大



2012年度グッドデザイン賞 ~個人住宅編~ 1/2

プロフィール

東恩納 尚縁

将来の夢は孫と一緒に暮らすこと。

孫ができた為、将来は娘夫婦と二世帯住宅の夢を持っています。
「住まい」について考えたコラムを寄稿しています。

東恩納 尚縁 さんの記事

関連する記事

  • プランニング、2つチラ見せ

    プランニング、2つチラ見せ

    これからリフォームをされるA様。 全体のコーディネートのご依頼をいただきました。 楽しみです! そしてこちらもA様。 新しいお引越し先のコーディネートのご依頼をいただ...

  • 最初の打合せのときにお客様に用意してもらうものについての話

    最初の打合せのときにお客様に用意してもらうものについての話

    新規のご依頼が続いています。 皆様、お問合せをいただきありがとうございます。 「最初の打合せのときに何を用意すれば良いですか?」 というのがよく聞かれる質問です。 ...

  • 平塚のHさんのところへ

    平塚のHさんのところへ

    昨年末にキッチンや食器棚、ダイニングの収納を作らせて頂いたHさんのところへお邪魔してきました。 今回は、リビング、ダイニング、キッチンをリノベーションしたい、特にキッチン...

  • フレンチシックなインテリアに。

    フレンチシックなインテリアに。

    青山、自由が丘、そして神戸大丸にてインテリアショップを展開されているサラグレースさん。 2月16日(金)より、インテリアコーディネートサービスの提携をさせていただくことになり...

  • 根菜のゆくえ

    根菜のゆくえ

    「根菜はどこに置いたらいいでしょうか。。。」 収納コンサルティングの場でお客様からときどき聞かれます。 暮らし方はひとそれぞれなので正解はないのですが、ちょっとし...