住宅と生きるよろこび|長谷川豪 @d-labo

様々な業界から知識人を招き講演を行なっているd-laboにて長谷川豪 氏のセミナーが行われた。テーマは「住宅と生きるよろこび」。日本人には4つの「よろこび」があり、建築においてもそのキーワードが重要と長谷川氏は語る。
では、その「よろこび」とは一体どのようなものなのか。長谷川氏の様々な作品を通して「よろこび」に溢れた住宅を解説した。

建築家になろうとしたきっかけ

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高校二年生の時に、たまたま近所にあった浦和図書館で篠原一男さんの作品集をみて衝撃を受ける。それまで、建築家の存在なんて知らなかったし、家なんて大工が造るものだと思い込んでいた。篠原さんの初期の作品には懐かしさの中に斬新さを感じる。その瞬間から建築家、長谷川豪としての夢が芽生え始めたのだ。
その後、東京工業大学大学院修士課程修了後、西沢建築設計事務所を経て、長谷川豪 設計事務所を設立する。

住み手の想像力を刺激する作品

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現在、独立して7年半になるが、これまで長谷川 氏が現在までに手掛けた作品は、いずれも住み手の想像力を刺激する作品となっている。
家の真ん中に4メートル角の大きなテーブルが配置された桜台の住宅(2006年)や、家を2分割し間に螺旋階段を設け、家を2件所有している感覚に陥ってしまう五反田の住宅(2006年)
道路より1メートル高い庭とトップライトで光を上手く取り入れた明るい地下の狛江の住宅(2009年)、住戸にL字テラス・ロングテラス・コートヤードテラス・トールテラスの4種類の個性的なテラスを配した集合住宅 練馬のアパートメント(2010年)。
森のピロティ(2010年)は、北軽井沢の鬱蒼とした森に段階6.5メートルのピロティ。森の物なのか、自分の物なのか錯覚に陥ってしまう。
駒沢の住宅(2011年)は、2×3材を使ったスノコ状の二階の床と大きな窓を上部にもつ1.7メートルの壁で“なんとなく繋がっている”プライベートとパブリックを間の空間を演出している。1階と2階が独立せずに、互いが互いを求め合っているような関係。外壁にはユーカリ、内壁には一枚板のラワン素材を使うことでコストを抑え、安っぽく見える事を避ける事が出来た。

大切にしているのは4つの「よろこび」

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【意識・無意識】と【個人・集団】を自身で定義したマトリクス(以下、図参照)には4つの「よろこび」の状態がある。長谷川 氏が創りだす「よろこび」は、その中央にあるものだ。故に、プライバシーを大切にしながら社会性・公共性を保ち、街に開けた作品が多い。
4つのよろこび日常
(無意識)
非日常
(意識)
身体的
(個人)
悦び喜び
社会的
(集団)
歓び慶び


部屋と環境の間に余白を作る

それでは、その4つの「よろこび」を生み出すためにはどうすれば良いのか?答えは住宅と環境の間に「余白」を与える事。近年の日本の住宅は個人主義になりがちだがプライバシーを大事にしつつ、開いた家をつくって行きたいと長谷川氏は語る。

周りの町をよく見る

「住宅がクライアントのものだけにならないように」「自分の物であるようで、自分の物でないような感覚」どんな小さな家でも町並みを作っている一部なのだ。
何度も建築地に足を運び周りの町をよく見て、コンセプトを生み、そのコンセプトはやがて20分の1の模型から10分の1の模型となり、より具体的なものとなって良い答えを導き出す。

夢を追い続けてよかった事

最後に、主催者のd-laboから「夢を追い続けてよかったことは?」の問いに長谷川氏は「建築家にはリタイアがない。ずっと続けられることが嬉しい」と答えた。
高校二年生の時に図書館で篠原一男氏の写真集と出会い、建築家への道を自ら切り開き、人々に4つの「よろこび」をもたらしてきた長谷川豪 少年の夢は、これから先もまだまだ続く。

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