着座時の姿勢変化で周囲の気流を調整する環境選択型の講義用机イス
コトブキシーティングと工学院大学が共同開発した「MyAir(マイエア)S3シリーズ」は、床下から給気しイスの背上部から気流を吹き出す空調システム一体型の講義用机イスとなっている。
教室や講義室のように一度着席すると環境の調節がほとんど行えず、また要求の違う大勢が集まる公的スペースは、最も不満が出やすい居室の一つであり、その解決策として注目されている。
MyAir(マイエア)S3シリーズ
気流性状について
座って後傾姿勢になると気流が体を沿うように上がっていき、前傾姿勢になると気流が身体から離れ後方に上がっていく機構が背もたれ自体に備えられ、首筋、背筋に気流が当たらないようにV字型に流れる。気流はイスの背上部75cmのところで完全に拡散するように設計されている。7つの特徴
- 一人ひとりが着座時の姿勢の変化によって気流を変えることが可能
- 空調の経路でもあるイスの背自体が冷えたり暖まったりするため、背にもたれて温熱環境を変えることが可能
- 人に最も近いイスから吹き出すことで、必要なエリアだけをやわらかい気流で空調
- 2つの誘引機能を設け、居住域(人のいる領域、床面から高さ2m程度までの範囲)のエリアの空気を攪拌し、冷気が下にたまらないように居室自体の温度成層に配慮
- 床面からの空調吹き出し位置にシビアにならずに設置可能
- 人とイスの距離関係が常に一定のため、安定した気流関係ができる
- 運転開始後の吹き出し口の調整が不要
開発の背景
環境選択権の有無による不満の差〜不特定多数が集う環境で顕著に~
>「環境選択権」とは環境を選択できる権利のことを指す。人は自分の意思で獲得した物理環境と、与えられた環境では、抱く「不満」に差異があることが研究からわかってきている。
例えば空調の場合、自分の意志で冷やしたり暖めたりした結果であれば受け入れられるという性質がある。
しかし、教室や講義室のように一度着席すると環境の調節がほとんど行えず、また要求の違う大勢が集まる公的スペースは、最も不満が出やすい居室の一つであり、その解決が求められていた。
クリアゾーンが確保しにくい現状の空調環境
一般に、日本の、しかも教室のような高密度の空間では、床や天井から空調を吹き出すと、必ず人に気流があたることが考えられる。クリアゾーン(人と吹き出し口との距離)を確保しにくい状況から、不快の原因となるドラフトを感じたり、場所により空調にムラがあるといった環境になりがち。また空調を運用開始した後も、調整に1年程度かかることが多くある。今回の開発では、これらの問題を解決するために、クリアゾーンの一定した環境が設定できる「人とイス」という関係の中で、個人レベルでの「環境選択権」のある、学校等の教室・講義室を対象とした新たな空調システムを目指したものとなっている。
コトブキシーティングと工学院大学による共同開発の経緯
コトブキシーティングでは、1998年に劇場・ホールに日本で初めて空調吹き出し付きのイスを納入以来、座り心地の向上とともに、空調デバイスとしての役割も果たすイスの開発を手がけてきた。一方、工学院大学は2011年4月、工学部から独立して日本初の『建築学部』を設立し、その中でも建築学科の野部 達夫教授は、テクノロジー面はもちろんのこと、パーソナルな空調計画や「環境選択権」の付与による「受容性の向上」を図る建築のあり方など、長年心理的側面にも立脚した“人と建築”の関係について研究を深めている。
このような「省エネ・エコの先を見据えたパーソナルな空調環境作り」という接点から、この研究テーマの具現化に向けた共同開発に至った。
『MyAir(マイエア)S3シリーズ』の開発中には、工学院大学八王子キャンパスで大学の125周年記念事業の一つとして総合教育棟(設計:株式会社千葉学建築計画事務所)の建設が始まり、『MyAir(マイエア)S3シリーズ』は実験的要素を担いながら設置納入された。
MyAir(マイエア)S3シリーズ|コトブキシーティング株式会社
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