子供も楽しくなければアートじゃない‐1372‐
2017年4月24日
子供も楽しくなければアートじゃない‐1372‐
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先日の墓参りと合わせて、香川県の豊島(てしま)へ行ってきました。
「ベネッセアートサイト直島」のwebサイトには、直島、豊島、犬島を舞台に、展開しているアート活動の総称とあります。
この活動が始まってから、島を訪れたのは初めて。
岡山県の宇野港から高速船で25分ほどですが、ちょっとした船旅が旅情をもりあげてくれるものです。
豊島は周囲20km、人口900名の自然豊かな小さな島です。
1970年代には不法な産業廃棄物の投棄が社会問題になりました。
島の北西、家浦港のすぐそばにある「豊島横尾館」。
画家・横尾忠則の美術館ですが、到着時にはまだオープンしておらず、今回は残念ながらパス。
島の南側に移動して、まずは「遠い記憶」という作品から。
廃校の中央を、窓で作られたトンネルが貫きます。
木製建具で出来たトンネルが、訪れる人たちの記憶を呼び戻すのか。
「心臓音のアーカイブ」という変わった作品もありました。
海沿いに建つこの建物の中には、真っ暗な部屋があります。
そこで世界各国の様々な人の心臓音が鳴り響くのですが、子供たちにはちょっと怖かったよう。
アートは観る人に全て委ねられるものなので、解釈は常に自由です。
島の北東にある唐櫃港エリアまで移動する途中、海に飛び込んでいくような坂道があります。
電動自転車を借りている人が多く、西も東も多くの外国人が写真を撮っていました。
一番小さい24インチが娘にはちょっと大きく、私たちはレンタカーにしましたが。
島の中央は山になっているため、棚田が多くみられます。
それらを通りすぎると、山の斜面に「豊島美術館」が見えてきました。
水滴をイメージしたデザインで、右の大きなものが美術館、左の小さなものがショップです。
ショップの前を通り過ぎ、海を見下ろす小道がぐるりと巡らされ、美術館に導かれます。
撮影は入り口まで。内部は撮影禁止でした。
中に入ると、白いシェル状の空間に、2つの開口が穿たれています。
そこにガラスなどは入っておらず、直接日の光が差し込み、風が流れるのです。
床には、1mm程の小さな穴が多数あり、そこから少しずつ水が湧き出してきます。
それらは、概ね光の差す開口部の下へ向かって、ゆっくり、ゆっくりと、緩い勾配にそって集まっていきます。
来場者は、座ったり、寝転んだりして、その様を静かに見守るだけ。
いくつかの水滴が集まっては動き出し、そしてまた止り。
離合を繰り返しながら、ゆるゆると動く水滴が、アートとなることに感動します。
美術館に行こうというと、いつも「え~」という子供たちも興味深々で、飽きることなくかぶりついて見ていました。
これらはアーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛がコラボレートしたもので、建築、空間の全てが作品です。
ショップも西沢立衛の設計。
こちらは撮影可能でした。
天窓の大きさこそ違え、シェルの中に光が差す様は同じく美しいもの。
もっとも、こちらの開口部にはアクリルガラスが入っていましたが。
産廃問題でうけた痛手を、アートの力で応援しようという試みは、成功しているといえそうです。
西沢立衛は、自らの師である妹島和世とSANAAを共同設立し、2010年には建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞しました。
2010年には、中辺路美術館を訪れました。
1998年の完成で、SANAAがはじめに手掛けた作品です。
金沢21世紀美術館は2012年のゴールデンウィークに訪れました。
プールの中に入り水面を見上げるという作品、レアンドロのスイミング・プールは子供にも凄い人気でした
誤解を恐れず言えば、これまでの成長時代、押しの強いアーティスや建築家が結果を残してきた気がします。
しかしSANAA自体が自らの師とのユニットで、コラボレーションといえます。
認め合えれば、自らの弟子とユニットを組む妹島和世の度量も凄いのですが、これからの高度情報化社会では、全ての分野に置いてボーダレス化が進んで行くはずです。
それを最も体現しているのがSANAAだといえます。
コラボレートといえば聞こえはよいですが、調整、集約、決断と簡単ではないことが想像できます。それらを含めて、実現力が問われる時代なのだと思うのです。
人は生まれながらに「真・善・美」を求めるといいます。
中でも「美」ほどあやふやなものはありません。
子供にあれだけ興味をもたせる作品を創り上げた、内藤礼と西沢立衛の仕事に脱帽しました。
これまでに、子供たちも、ゴッホ、カンディンスキー、岡本太郎は十分楽しんでいました。
面白くなければ、感激できなければアートに意味はありません。彼らこそ、本物の現代のアーティストだと思うのです。
◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
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株式会社一級建築士事務所アトリエm
夢は必ず実現する、してみせる。
一級建築士 守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...