日本の夏、日本の美、頑張れチームニッポン‐1496‐ 

2018年7月3日


日本の夏、日本の美、頑張れチームニッポン‐1496‐ 



 金曜日の午前1頃、サッカーの日本代表はグループリーグを突破しました。

 その戦い方には様々な評価がありますが、また4日間楽しみが増えました。

 チーム日本の総生産能力が、かなり上がっているのは間違いありません。



 昨日は、京都国立近代美術館の「横山大観展」へ行ってきました。

 初夏の京都ほど美しいものはそうありません。



 一昨年、作品群が世界遺産に指定されたル・コルビジュエ。

 その愛弟子、前川國男が設計したのが京都会館です。

 現在はロームシアター京都となりましたが、深い軒と木陰に誘われて、多くの人がお茶を楽しんでいました。

 「日本の夏」というフレーズが浮かんできます。



 ロームシアター京都から少し南。

 平安神宮の大鳥居を抜けると、京都国立近代美術館があります。



 こちらは、9・11テロの跡地に建つ4WTC(4ワールドトレードセンター)も設計した槙文彦の作品。

 建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞も受賞している、私にとっては生きるレジェンドです。



 京都市立美術館とで大鳥居を挟むように建っているのです。



 明治から昭和にかけて、多くの作品を残している横山大観。

 生誕150年を記念しての展覧会ですが、かなり賑わっていました。



 会期の前半と後半とでは展示が変わるようで、前半の目玉はこの『 紅葉 』。

 1931年(昭和6年)の作品です。



 「東の大観、西の栖鳳(せいほう)」と並び称される近代日本画の巨匠、横山大観。



 日本の伝統的な技法を継承しながら、新たな境地を開拓しました。



 しかしコミカルなタッチもあり、巨匠然としていない所にも好感がもてます。



 もうひとつの目玉、『 生々流転 』は全長40mの日本一長い画巻で重要文化財です。

 山間に沸く雲から一粒の滴が生まれるところから、川、海、そして雲に戻るまで、水の一生を描いた大作です。

 40mは一度に展示できないので、会期を3つに分けて1/3ずつの展示でした。

 

 やはり、全展示の中でも『 紅葉 』は圧巻でした。

 画材として、プラチナが使われているそうで、鮮やかさ、コントラストと、まさにエンターテイメントという言葉が相応しいと感じます。



 常設展示でさえ、ピカソ、マティス、モンドリアンと、もう見応え十分でした。

 展覧会の案内で、横山大観の師が岡倉天心だと知りました。

 1896年、東京美術学校初代校長だった岡倉天心はトラブルがもとで同校を去ります。

 その後、日本美術院を設立しますが、横山大観も師と行動をともにしています。

 後に岡倉天心はアメリカに渡り、1906年に「Book of Tea」を出版しました。

 1900年、新渡戸稲造の「武士道」が英文で発表されます。

 時代は、日清戦争、日露戦争と日本は軍国主義を色濃くし、欧米からは警戒心をもった目で見られていきます。

 日本人の本質は、もっと他にもあるという危機感をもって、天心が英文で発表したのが「Book of Tea」で、後に和訳され「茶の本」として日本でも出版されました。

 茶道のみならず、禅、茶室、美術鑑賞、そして千利休、小堀遠州と、日本の芸術を紐解く傑作と言って間違いありません。

 少し硬い表現ですが、引用してみます。

 この人生という、愚かな苦労の波の騒がしい海の上の生活を、適当に律してゆく道を知らない人々は、外観は幸福に安んじているようにと努めながらも、そのかいもなく絶えず悲惨な状態にいる。われわれは心の安定を保とうとしてはよろめき。水平線上に浮かぶ雲にことごとく暴風雨の前兆を見る。しかしながら、永遠に向かって押し寄せる波濤のうねりの中に、喜びと美しさが存している。何ゆえその心をくまないのであるか、また列子のごとく風そのものに御しないのであるか。

 美を友として世を送ったひとのみが麗しい往生をすることができる。

 巻の最後、利休が秀吉との不和で切腹を強いられ、弟子らとの「最後の茶の湯」の場面へと進みます。

 そして切腹の場面までを鮮やかに美しく描いています。

 まさに、麗しい往生が精緻に描かれているのです。

 「美」とは何か。

 これは私にとっても永遠のテーマです。

 どこかの区切りでまとめたいと思っていますが、岡倉天心の言葉は深くまで心に入ってくるのです。
 
 日本代表はベスト8をかけてベルギーと戦います。

 試合開始は3:00am。深夜と言えば良いのか、早朝と言えば良いのか微妙ですが、早起きして見ようと思います。

 FIFAのランキング3位の「赤い悪魔」は2年間無敗だそう。

 実力は間違いなく相手が上です。しかし、「十分やれると思っている」という長友の言葉通り、期待せずにはおれません。

 もう一度天心の言葉を引いてみます。

 おのれに存する偉大なるものの小を感ずることのできない人は、他人に存する小なるものの偉大を見のがしがちである。

 こんな時は、この極東の島国だからこそ、持っているものがあると信じたいのです。

 頑張れニッポン。

 建築だって、経済だって、斜陽などとは言わせないぞと思っているのです。


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「羽曳野の家」放映

■■■『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「羽曳野の家」掲載

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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株式会社一級建築士事務所アトリエm

プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...

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