日本最強の城で、開高の言葉を思う‐1502‐

2018年7月24日


日本最強の城で、開高の言葉を思う‐1502‐ 



 埼玉県熊谷で41.1℃を上回り、日本最高記録を更新したとありました。

 クーラーがなければ生命の危険さえあるという時代になってしまいました。

 普段の暮らしで我慢する必要はないと思いますが、今回の天災時のように、電気の供給がままならない事もあります。

 夏の光は最小に、冬の光は遮らない。風が流れやすい開口部を切る。建築に関わらせて貰う以上、これらは常に探求していかなければならないと感じます。

 「日本最強の城」というノボリをみつけ、奈良県の高取城址へいってきました。



 山道に入った途端に道が狭くなり「もしや険道か」と一瞬思いましたが、何とか到着。



 高取山(583.9m)の山頂付近にあり、日本最強をうたう山城が高取城です。



 城内は約10,000㎡、周囲約3km。

 広大な城内は、山頂付近の3,000坪にも及びます。



 壺坂口門から、木漏れ日が落ちる山道を500m程登ります。



 山頂付近の3,000坪が全て城。

 急峻な山肌の至るところに石垣が築かれています。



 ただ登るだけで息がきれてきますが、涼し気な景色に救われます。



 山頂付近に近付くと、急に視界が開けてきました。



 やっと天守閣址かと思うと、これは太鼓櫓。



 裏手に回ると東洋のマチュピチュと言われた、別子銅山を思い出します。



 櫓上に登り、振り返るとようやく本丸。



 手前が二の丸で、家臣たちの屋敷があった場所。

 とても見難いのですが、右下に居る人の身長と中央の大木を比べてみて下さい。



 石垣をみて「うわっ」と声を出してしまったのは初めてです。

 正三角形よりきつい角度で、石垣が10m積み上げられていました。

 その景色は圧巻でした。



 左側面から登りますが、標識を持っているのは熊。

 スーパーKなる人を襲う熊が話題になる時代です。ちょっと冗談きついわ、という感じ。



 ちなみに、8m飛ぶ熊撃退スプレーは持っていませんが、2~3m飛ぶ唐辛子スプレーは持ち歩いています。

 非常時にこれで撃退できるかは、普段のイメージトレーニング次第。



 動線を複雑にするため、曲輪が複雑に配置されています。



 14世紀に築城され、明治期までに自然倒壊したそうです。

 現在は木が生い茂っていますが、是非その姿を見たかったもの。



 標高583.9mにある、天守閣跡に到着しました。

 壺坂口門から20分くらい掛かったでしょうか。



 正面の大木裏を恐る恐るのぞいてみると、足がすくむ程の高さです。

 手摺がないこういった景色を、現代人はなかなか体験することができません。



 北には奈良盆地。



 南には吉野の山並みを望みます。

 この上に3層あったという天守閣からの眺めは、いかばかりのものだったのか。



 真っ二つに割れている木が結構ありました。

 落雷によるものでしょうか。



 この山頂部にある広大な本丸で、多くの人が暮らしていたのでしょう。



 井戸跡には、清いとまでは言えませんが、この日照りが続く中、水がにじんでいました。

 難攻不落というか、甲冑を来た武士がたどり着くだけでも大変なこの高取城。

 どうやら先月、NHKの番組で熊本城や大坂城を押さえて「最強の城」と認定されたようです。

 この山奥で、それなりの人とすれ違った理由と、真新しいノボリがあった訳が理解できました。



 石垣の上に古瓦が置かれています。



 足下を見れば石に交じってあちこちに。



 城郭に使われていたものでしょうが、分別解体した訳でもないのに、石垣以外、すべて自然に帰って行くのです。



 改めて、石の強さと、自然素材で作る意味を考えさせられます。



 永遠である必要など全くありません。

 作家・開高健は「河は眠らない」でこんなことを書いていました。要約してみます。

 木が倒れ、朽ち、苔が生え、微生物が繁殖し、バクテリアが増殖し、土を豊かにする、小虫がやってくる。

 小虫を捕まえるためにネズミなんかがやってくる、そのネズミを食べるためにまたワシなんかの鳥もやってくる。

 森にお湿りを与える、乾かない。そのことが河を豊かにする。全てはつながりあっているんだ。

 風倒木のことを、英語でナースログと言う。森の看護をしているという意味で、自然にとって無駄なものはひとつもない。

 無駄に見えるけど貴重なものは沢山ある。人にとってのナースログとは?

 無駄をおそれてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだ。

 人は分からない中でも、何かしらの決断をしながら生きて行かなければなりません。

 悩んだとき、迷った時は、原理原則に戻る、太古に戻ることにしています。



 自然だけが素晴らしいとか、人こそが素晴らしいというつもりはありません

 無駄をおそれてはいけない。軽蔑してはならない。大阪生まれの作家の言葉に、何か救われる気がするのです。

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇

建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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株式会社一級建築士事務所アトリエm

プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...

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