室内の縁に人が集う「平野西の家」‐1‐人は食べるし、住むし、着る 

2018年8月3日


室内の縁に人が集う「平野西の家」‐1‐人は食べるし、住むし、着る 



 現在進行中の現場はいくつかありますが、クライアントが「現場日記はちょっと……」とのことで。

 現場日記が全くないのも寂しいので、当社の入る「平野西の家」のことを書いてみます。

 2004年の完成なので14年が経ちました。



 前の駐車場は、道路から閉じれるようになっていますが、これは弟からのリクエストでした。

 ただ閉じるだけなら、シャッターが手っ取り早いのですが、一部に門扉を設けたなら、その間に柱が必要になってきます。

 敷地の間口は5.4mで、門扉をつければ有効開口は4mが精一杯だと思います。

 それで散々考えたのが、この形状です。

 12枚建ての折戸は、右にある門扉の後ろにスライドして、収納できるようになっているのです。



 12枚の折戸を右端に移動し、パタンパタント折り畳んで行きます。

 全てをパネル後ろに移動し、さらに門扉を開ききったのがこの状態。

 開口部は4.8mで、何とか2台の車が駐車できるのです。

 背の高い車にジェットバックを装着しても問題ない高さ、2.6mも確保しています。

 収納された折戸前のパネル部には、電気メーター、ガスメーターが納められ、それをのぞく窓も3つ見えています。

 下に2つ並んだポストまであり、多くの機能が集中しており、最も繊細に考えた部分なのです。

 この大きな門扉が、昨年の夏あたりから折戸に少し干渉するようになってきました。

 アルミなので、この暑さで、想定以上に膨張しているようなのです。その証拠に、朝夕は当たりません。



 職人が調整しにきてくれました。



 独特の金物を使って、ギュッギュッと少しずつ力を加えていきます。



 こんな仕事に教科書など当然ないので、全ては感覚と経験です。

 見事に当たらないよう調整され、さらに2mm程の余裕もできました。

 一緒に見ていると、したたるように汗が出てきます。しかし、終日現場に建つ職人のことを考えると、間違っても暑いなどとは言えません。

 先日、建築会社の社長と話しをしていました。

 「人手不足で大きな会社に人は行ってしまって、うちみたいな小さな会社まで人は来てくれません」というようなことを言っていました。

 更に、この先もどんどん厳しくなって行くと思いますとも。

 「流通やシステムを構築した人が偉いという世の中だけど、実際に食べるトマトが無ければ流通に意味はないものね」

 「どんなに時代が変わっても、人は食べるし、住むし、着るので、物を扱う仕事をもっとリスペクトして貰える時代が必ずやってくると思うよ」と伝えました。

 これは本心です。情報や手段は大切ですが、人は生身の体をもっています。

 汗を流し、「モノ」を扱う仕事にもっと注目せざるを得ない時代が必ずやってくると思っているのです。



■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇

建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

株式会社一級建築士事務所アトリエm

プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...

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