宇野常寛らトークセッション「衣食住から始まる『小さな革命』」Hikarie+PLANETS 渋谷セカンドステージ
6月5日夜、渋谷ヒカリエにてトークセッション「衣食住から始まる『小さな革命』ーーネットが変えた都市生活の現在」が行われた。19時から2時間半に渡って盛り上がりを見せた同イベントの模様をお伝えしたい。
![家結び.COM](http://iemusubi.com/upload/img/1408053380001.jpg)
写真左から堀潤氏、古川健介氏、佐々木俊尚氏、小澤隆生氏、粟飯原理咲氏、宇野常寛氏
ネットが変えた「衣食住」
同イベントは、「渋谷からの情報発信により新たな文化コミュニティの形成を目指し、"2020年の渋谷"を考えて」いくという、東急電鉄・渋谷ヒカリエと文化批評誌『PLANETS』(主宰・宇野常寛氏)による共同プロジェクト「Hikarie+PLANETS 渋谷セカンドステージ」の第一回。今回は、近年の労働環境や家族構成の変化、インターネットなどの情報環境の変化で変わりつつあるポスト「戦後」のライフスタイルがテーマとなっている。ネットが変えた「衣食住」について語るというものだ。
登壇者は、アイランド代表取締役の粟飯原理咲氏、nanapi代表取締役の古川健介氏、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏、ヤフー株式会社執行役員でYJキャピタル株式会社代表取締役でもある小澤隆生氏、『PLANETS』編集長の宇野常寛氏だ。司会は元NHKアナウンサーでジャーナリスト、NPO法人8bitNews代表の堀潤氏である。
新しいホワイトカラー層とは
まずは、宇野氏からの問題提起。ある頃まで考えられていた「日本人の典型的な姿」と現在35歳である同氏の実感が異なるという話から始まった。
宇野氏「長い昭和のサラリーマンの姿とは全然違うホワイトカラーの層っていうのが、おそらく首都圏を中心にそれなりのボリュームを持って生まれているんじゃないかっていうのが、『日本文化の論点』(宇野常寛、2013年、筑摩書房)で提案した"新しいホワイトカラー層"なんですよ。そして、こうして生まれたポスト戦後的な衣食住のスタイルが何に一番現れているか、それが僕はウェブサービスだと思うんですね。日本においては戦後的な社会体制の崩壊とインターネットの普及ってタイミングが一緒なんです。そのこともあって、おそらく都市部のホワイトカラーの新しい消費傾向、新しいライフスタイルを最も捕まえている、あるいは捕まえる必要があったのでいつの間にか対応してしまっているのが先鋭的なウェブサービスなのではないかということを考えたわけです。そこで、今日はこういったメンツをお呼びしたわけです。インターネットに現れている新しい日本人の姿というテーマでこれからの衣食住を考えてみたいと思います」
そこで、4人の登壇者が自己紹介とともに新しいホワイトカラー層を分析。古川氏は14~5年間インターネットのコミュニティサイトを作るサービスをしている立場として、「だんだんコミュニケーションの方法も変わってきていて、僕の感覚だと昔の方がインターネットコミュニティって都会的で、今のインターネットコミュニティって閉じてムラ的なんですよね」と指摘した。
佐々木氏は「槍が先文化」あるのではないかとコメント。「自転車がたくさんあってカフェがあり、美味しいパン屋さんがあり、観光客は来なくて地元の中目黒恵比寿界隈の人しか来ないっていう。そういう意味では都市文化の象徴みたいなものは新しくできてきていて、新しいライフスタイルも多分出てきているだろうな」と語るも、そういった生活を送る人々はマスボリュームなのかという疑問も呈した。
小澤氏は「文化という切り口でインターネットを考えたことがほとんどないと気付いた」と前置きした上で、インターネットの生活への影響について「インターネットは基本的には垣根を越えていくもの」とし、新しい分野やビジネスチャンス、人の生活の変化が起きていると発言した。
粟飯原氏は経営するアイランドのサービス「おとりよせネット」について説明した上で、ユーザーのメイン層が、DINKS(編集部注: 子供を持たない共働き夫婦)で、「ちょっとお金に余裕があるからオリーブオイルとかおだしとかスイーツとかを取り寄せちゃおうかな」という人々であることから、新しいホワイトカラー層への近さをコメントした。
趣味、日常、文化
イベントが進むと、話はこれから生み出される文化や新しいライフスタイルについて、より具体的な内容になっていった。
趣味についての議論では、「趣味がない」と佐々木氏が発言。自転車を2台持ち、毎日乗っているが、自転車に乗るのは"趣味"ではなく"日常"だという。「遊ぶとか、仕事するとか、生きるとか、暮らすとか全てシームレスでつながってきている感じがする。ひとつに考えて良いのではないかと思う。それが僕らにとっての文化なんじゃないか」とコメント。
宇野氏は、ここでの文化を「コストカットと効率化だけに還元されないもの」と定義。インターネット以降の日常はコストカットと効率化でしか覆われないように見えるが、細かく見ていけば、「食べることを楽しむ、着ることを楽しむという余計なことを取り入れつつある。そこから新しい文化が生まれてくるんじゃないか」と話した。
LDKの思想
後半には、住環境の話題も登場。宇野氏は戦後の「アメリカ的なライフスタイルに追いつきたい」という考えは、(住宅の)LDKと密接に結びついているのではと指摘した。自らの引っ越し経験談を引き出し、「リビングがいらない」と一言。仕事場、寝室、ダイニングがあれば良いが、どの物件を探してもリビングが一番広くて日当たりが良かったというエピソードを紹介した。
宇野氏「リビングにいるときにみんな何をやってるかというと、本読んでるとかテレビ見てるとかみかんつまんでるとかですよね。大きめの寝室にちょっとテーブルとテレビ置いといたらできるじゃないですか。だからリビングってわりと、核家族とそこを中心にした一家の団らんみたいなものを前提としているんです」
LDKについての話は、人を招き入れるスペースやシェアハウスの話題にまで広がった。宇野氏は「LDKのような自明と思っているようなものも、ここまでライフスタイルが変わるとアップデートするって可能性も考えた方が良いのでは」と締めくくった。
これからの文化はどう生まれる?
最後は、これからの文化の生み出され方をそれぞれが語る展開に。
佐々木氏は、「どこかで生まれた文化がパブリッシュされて、広がっていくという相乗効果によってどんどん文化が拡大し、一つの大きな文化圏を形成してくようなモデルは今後出てくるのではないか」とコメント。「Web1.0があって2.0があって……、第3段階くらいで新しい文化生成のフェーズに来ている感じはちょっとします」とまとめた。
粟飯原氏は、「ライフスタイルの中で今まで見えなかった家の中や家事をしているところがソーシャルで外に見えるようになってきて、自分に近しいものが降りてきているというのが、すごく面白い」と感じているとし、クローズドなものが開かれていくときの、「そこから生まれてくるバリエーションを知ることでの文化」について可能性を見いだした。
古川氏は、「現実は絶対にインターネットに負けると思っていて、技術の進化がそこに追いつく瞬間があるとなったときに、『インターネットから文化が……』とか、『文化が新しく変わる』っていう節目がそこかな」と示唆し、あと10年くらいでインターネットが現実を超えたときに新しい文化が生まれるのではと発言した。
小澤氏は、「100年後の教科書に現代が載るとしたら」とテーマを設定し、「インターネット文化」であるとした。「この時代を象徴した物ってインターネットなんですよ、多分。大衆がこんなに情報発信をできること自体が今までと一番違うことで、これはすごく大きな文化だと僕は思っていて」とした上で、インターネットと承認欲求の関係についても言及。承認欲求を得られるバリエーションがインターネットで増えた一方、子育てや趣味で飼育しているグッピーを通して、「承認欲求がないとこでも人間って楽しく過ごせるんだ」と気付いたという。
宇野氏は最後に、今回のイベントで粟飯原氏を呼んだ理由に触れた。「みんなインターネットで物が安くなる・効率的になるってことと承認欲求のことしか考えていなかったんだけど、粟飯原さんのやるサービスは僕らの24時間の使い方が変わるとか、僕らの生活習慣に介入するとか、そういうことに関わるところが面白い」とコメント。「インターネットの結果、根本的に朝の時間の使い方が変わるとか、家事をするスタイルと時間が変わるとか、そういった配分が変わっていくとはあまり思っていなかったんじゃないかな、と僕は思っているんですね。ここがインターネット+生活というのに今注目している理由だったりするんですよ」と締めくくった。
第二回は7月開催
最後は会場からの質疑応答も行われ、会場は充実した雰囲気に包まれていた。「Hikarie+PLANETS」のトークセッション第二回は「東京2020ーー僕たちがつくりあげるもう一つのビッグプロジェクト」をテーマに7月10日に行われる。詳細は同イベントWebサイトで確認できる。
この記事はマイナビニュースより転載しています
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