復原した東京駅丸の内駅舎の化粧煉瓦を再現するのには、長い年月が費やされた

東京駅の丸の内駅舎(えきしゃ)の復元工事が10月から全面開業となり話題になっているが、その象徴的となっている化粧煉瓦(通称:赤煉瓦)の再現に長い年月が費やされた事をご存知だったろうか。
2003年から試作を重ね、2010年の生産が開始されるまで7年間も試行錯誤を繰り返し、試作品だけでも15,000枚を超える一大プロジェクトとだったのだ。

家結び

東京駅丸の内駅舎の歴史

東京駅丸の内駅舎は、1914(大正3)年、建築家の辰野金吾の設計によって創建。
明治から大正期の洋風建築を代表する赤煉瓦の建物として知られ、南北にドームを配したその壮麗な姿は、首都東京の玄関口を象徴してきた。
【創建時 建築概要】
竣工:大正3年
構造:鉄骨煉瓦造
煉瓦製造会社
躯体煉瓦:日本煉瓦会社(現;日本煉瓦製造(株))
化粧煉瓦:品川白煉瓦(株)、鳥居陶器製造所 など5社
使用量
躯体煉瓦:833万個
化粧煉瓦:94万個
しかし、1945(昭和20)年、戦災によって南北のドームを含む3階部分を焼失し、2階建ての建築として現在まで知られている姿となっていた。

LIXILとアカイタイルの挑戦

家結び

今回、戦災により焼失した南北のドーム部分を含む3階部分の外壁(化粧煉瓦約50万枚)の再現に挑戦したのが、株式会社LIXIL株式会社アカイタイルだった。

2003年から試作を重ね、2010年の生産が開始されるまで7年間も試行錯誤を繰り返し、試作品だけでも15,000枚を超える一大プロジェクトとなった。

最も苦労した、色とばらつきの再現


基本色(赤色)の再現

原料の確保
創建時の化粧煉瓦の主原料と同じ、知多半島産の赤土を使用することを最初に決定したが、天然の原料であるために、採掘場所や採掘時期によって成分に違いが生じ、焼成した色合いも大きくばらつくことが予測された。
そのため、見本品で採用が決まったとしても、本生産の時に同じ色合いを再現することは難しいため、本生産用の赤土100tを確保したうえで、見本品の制作を実施した。

焼成する窯の条件設定
現在のタイルの一般的な焼成温度(1,200℃~1,250℃)では、求める「明るい赤色」の再現ができないため、当時の焼成温度(1,000℃~1,100℃)で焼成する、専用の焼成条件を整える必要があった。
生産窯のひとつを、この化粧煉瓦専用にしてしまうことは、メーカーとして非常に大きなリスクを負うことになるが、それに敢えて挑戦する英断をしたのが、歴史的建築物のタイルの復原に実績を持つアカイタイルだった。

色合いの“ばらつき”再現

創建当時の化粧煉瓦の色合いのばらつきは、生産工場の違いや原料の採取条件の違い、石炭窯による焼成温度の違い等によって必然的に生じるもので、厳しい管理基準のもとで均質な色合いの煉瓦生産に努めても、合格率は40%程度だったと記録されている。

格段に進歩した現代の窯では、色合いのばらつきは当時に比べはるかに小さくなっているため、今回の復原では、生産条件をコントロールし、敢えてばらつきをつくらなければならない。試作では、このコントロールの条件を見つけ出すことが大きな課題となった。

家結び測定作業

焼成する条件と原料の調合を少しずつ変えながら、試作を繰り返し、見本制作したタイルは全てその色合を測定(測色)して記録。試験した条件は50を超え、1つの条件の試作では約100枚のタイルを焼いている。本番を想定し、大ロットでの生産試験も実施した。

このようにして、15,000枚を超える見本品を試作し、最終的な製造条件を得るに至ったのだ。

試作を開始してから7年

2010年に本生産実施が決まり、再び現地にて色合いを測定し本生産の条件を確認。この結果をもとに3つの条件で焼成したタイルをブレンドして使用することが決定。コーナー用のタイルも、手作業工程を交え生産することになった。
本生産では、2010年年末から2011年年始にかけて、約50万枚のタイルを焼成。わずか2週間の生産期間ではあったが、2003年に試作を開始してから7年を経てたどり着いたことになる。

東京駅丸の内駅舎の外装を彩る化粧煉瓦の赤い色合いは、まさに首都、東京の玄関口である東京駅を象徴するものだ。
価値ある建築文化を後世に受け継ぐことに全力を注いだ株式会社LIXILと株式会社アカイタイルには、拍手を送りたい。

プロフィール

東恩納 尚縁

将来の夢は孫と一緒に暮らすこと。

孫ができた為、将来は娘夫婦と二世帯住宅の夢を持っています。
「住まい」について考えたコラムを寄稿しています。

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