住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐4‐ソリッド感と透明感



 先週、基礎の打設が終わった「コンクリート打放し H型プランの平屋」。




 週末、定例打合せがありました。



 Hの横線が二つの棟を繋ぐので、そこがエントランスになります。



 エントランス奥には裏庭があり、この空間もなかなか魅力的な空間です。



 南には、旧家としての和の庭が残っています。



 LDKの開口は、これらに面して開かれています。



 灯篭があったり、カエル石があったり。

 ミニマルな建物とこれらの外部を、どう結び付けるかも腕の見せどころです。

https://youtu.be/9HwXsfGkT8w

 CGのアニメーションをUPしてみます。

 打ち放しの建築は、コンクリートのソリッド感、ガラスの透明感をどう連続させるかが大切です。

 コンクリートの強度を活かし、かつ閉鎖的にならないよう腐心するのです。



 南からは光を取り込むために、ガラスの透明感が主役になります。



 俯瞰で見ると、そのリズムが分かりよいでしょうか。



 エントランスからの景色。



 90度右に曲がるとLDK。



西にキッチン。



 東にはテレビを含めた飾り棚があります。



 子供部屋も、出来る限りコンクリート打ち放しの良さを引き出したいと考えました。



 キッチン裏には奥さんの家事室も。

 極めてシンプルに、2つの棟を中央の動線でつないだコンクリート打放しの平屋。

 打ち放しはやり直しが効かないだけに慎重に現場は進んでいます。

 連続するソリッド感と透明感。

 これこそが打ち放しの魅力だと思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』に「回遊できる家」掲載


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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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「THE LONGING HOUSE 」‐3‐ほぼガンタンク



  気持ち良い秋晴れの下、定例打合せ前の現場に立ち寄ります。



 この計画はT字の敷地が特徴ですが、頭の棒線の左から敷地を見てみます。

 南側から見ることになり、日の当たり方が良く分かります。



 今度は反対の北側から。

 敷地環境は人の手ではどうすることもできないので、この紐解きが建築設計の始まりとなるのです。



 T字の縦線の下。東から見てみます。

 敷地をよく見れば、どの空間をどの場所に配置するかは自然に決まって行くものなのです。



 前回「もうダメだ、が仕事のはじまり」と書きました。

 何とか擁壁の件を解決したのですが、一難去ってまた一難。

 またまた歯ごたえのある課題がでてきていたのですが、それも何とか解決の糸口が見えてきました。

 びっくりするくらい色々な課題がでてくるのが建築です。

 全く問題がなく、簡単に解決できることに、お代を払ってくれる人など居るはずもありません。

 困難こそが仕事の本質なのです。



 そんな中、スーパーパイロットが助けに来てくれました。



 トラックから手際よく一人で地面に降りたち、さっと仕事を始めます。



 いつ見ていても鮮やかなもの。

 もう完全にガンタンクを操るリュウ・ホセイなのです。



 定例打合せを終え、阪神高速で会社に戻ります。

 現場や打合せはエンターテイメントです。

 大変を楽しく。

 これが私のモットーなのです。

文責:守谷 昌紀

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「THE LONGING HOUSE 」‐2‐「もうダメだ」が仕事のはじまり



 この計画の敷地は形状にかなり特徴があります。

 旗竿敷地は経験がありますが、T字型は私も初めてです。



 平面的な形状を活かすのは勿論ですが、現実は2次元ではありません。

 T字の頭の部分に面する隣地が一段高くなっているのです。



 計画がスタートした際、クライアントはこの隣地に対しての安全対策も合せて提案して欲しいとのことでした。

 建物の設計も簡単ではありませんでしたが、これらは建築から少し下がって、土木の世界の話とも言えます。

 そこは、普段山奥の湖へ通っている経験が活きました。



 山道で土砂崩れがあった時、このような方法で土留め壁を構成し、復旧工事を進めて行きます。

 これなら応用できるかもと考えたのです。



 当初は鉄筋コンクリートの擁壁を計画していました。

 さあ基礎工事となった際に「掘り方のことを考えた時、隣地が崩れてこないか心配で……」と監督から相談があったのです。

 正直、参ったなと思いましたが、京セラ名誉会長の稲盛さんからこう教えて貰いました。

 もうダメだというときが仕事のはじまり

 それならと、この方法を提案したのです。

 監督も「それなら何とかなるかも」と再度工法を練り直し、ようやくここまでこぎつけました。



 ドリルで2mの穴を掘りますが、擁壁の地中部分があたりなかなかうまく行きません。




 できるだけ擁壁に近い場所を、文字通り手探りで探します。

 何とか2mまで到達すると、今度はセメントミルクを注入しながら攪拌です。


 ドリルを上に移動させながら、全体にセメントミルクを練り込んでいくのです。



 そして今度はH鋼を吊り下げ、セメントミルクで満たされた穴に差し込みます。



 この鋼材を手仕事で微調整。



 そしてH鋼を設置。


 セメントが固まればもう動かすことは出来ないので、今しか調整は出来ません。



 監督が「んっ!ちょっとずれてる?」。


 慌てて押したり、クサビを打ち込んだり。



 もうコントみたいですが、何とかなったようです。

 何とかならなかったとしても、何とかするしかないのですが。

 建築においての精度は、通常0.5mmくらいでしょうか。

 しかし土木となるとそこまでは求められません。この現場を見れば一目瞭然です。

 図面ではどう描けても無理なものは無理なのです。

 どこは厳しく、どこは許容するか。

 現場に足を運び、対話をしなければその判断はずれてしまい、裸の王様になってしまうのです。

文責:守谷 昌紀

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「THE LONGING HOUSE 」‐1‐プロローグ



 曇りの天気予報をくつがえしての快晴。



 雨降って地固まるという常套句もあるが、やはり地鎮祭は晴れるに越したことがない。



 神主の狩衣(かりぎぬ)も、晴れ空のもと鮮やかだ。



 クライアント家族が一同に会し、神聖な時間を過ごすことで、工事の始まりを実感するのである。



 建築会社の鍬入れが終わり、式典は無事終了。



 地鎮祭の時は、模型も一緒にお祓いして貰うようにしている。

 左にあるのが1/100で右にあるのが1/50の模型だ。



 1/100の模型を見ると分かりやすいが、この計画の特徴は何と言ってもT字型の敷地である。

 接道は東で、T字の足の部分が接している。



 反時計まわりに90度回すと、T字の頭の部分が見えてくる。

 この頭に当たる部分には、主に平屋部を配置した。



 南東角からみるとその形状が分かりやすいだろうか。



 LDKに光を取り込むよう、南には大開口を備えた。

 連続するウッドデッキは、金額調整の中で最後の最後まで課題となったが、何とか実現できることになった。



 そのLDKと直交する形で、個室が集まる2階棟が東に続く。



 2階棟を東へ進むとT字の足に戻り、東端のエントランスとなる。

 ファサードは、この建物のボリュームを想像させない、品あるものにしたかった。

 コンセプトは「家族でワイワイ、ちょうどいい家」だ。

 子育て真っただ中の5人の家族が楽しく暮らせるよう、家事動線は奥様と練りに練った。

 また、将来は両親とも楽しく暮らせよう、ちょうどいい距離感を保てる部屋も備えている。

 完成予定は来年3月で、計画がスタートしてちょうど2年。

 コロナ下の環境もあったが、2年くらいがちょうどだったのかなとも感じる。

 タイトルの「The Longing House 」には、「憧れの家」と言う意味が込められている。

 その意味は、追って紹介していきたいと思う。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐3‐並々ならぬ愛情



 秋分の日も過ぎ、ようやく日差しも和らいできました。



 計画名の「H型プランの平屋」は、敷地が大きくなければ成立しません。



 建物の解体が終わり、庭木もほぼなくなりました。

 こうして見るとやはり広い。



 建物解体が終わった後でも、庭木・庭石がかなり残っていました。



 これらを撤去するのがなかなかの仕事で、相応の時間が掛かっていたのです。



 何よりこの大楠木。

 台風の大型化、近隣への落ち葉のこともあり、ほぼ枝を落とすことになりました。



 もう一段回枝を切るのですが、それでもここまできました。



 母屋にしても、大楠木にしても、代々引き継いできたもので、ご家族にとっては苦渋の決断だったはずです。

 感謝と敬意のをもって、神主さんにお祓いをして貰ってからそれぞれの工事に入ったのです。



 計画がスタートしてここまで3年。



 ようやく地鎮祭を終え、いよいよ建物工事に入ります。



 愛情とは、ともに過ごす時間とも言います。

 愛情や情熱を込めていない建物はひとつたりともありませんが、3年ともなると……

 並々ならぬ愛情が詰まった建物とも言って、全く問題ないと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐12‐ときめきました?


 6月末に竣工した「ときめく紺色の家」。

 先週2ヵ月点検に行ってきました。




 クラアントから「ようやく見て貰えるようになりました」というメールもあり、楽しみにしていたのです。



 疑っていた訳ではありませんが、その言葉に偽りなしでした。

 渋滞で少し遅れて到着すると、監督はすっかりくつろいでいます。

 最後に見た現場の最終形から、完全なる「家」に変化していました。



 緑や小物が入ってくると、空間はクライアントのカラーに染まっていきます。

 料理で言うと、最後の味付けのような感じでしょうか。



 奥さんはすっきり好きで、キッチンまわりは気持ち良いくらい片付いています。



 オーディオはご主人こだわりのレコードプレーヤーも。



 収納の中はレコードがびっしりでした。



 完成形を見ていなかったのがパウダースペースです。

 奥さんと娘さんが2人並んでお化粧できるようになっています。



 モザイクタイルと鏡を壁に埋込みました。

 遣り替えが出来ない分、緊張感が無くはありませんが、その決断分美しいのです。

 とても気に入っていると言って頂きましたが、むしろその決断をして下さったことに、私が感謝するのです。



 奥さんは。夜照明を落としてヨガをするそうです。

 その時に、この小屋組みや天井がとても美しいそうです。

 面倒で手間の掛かるところに美は宿ります。必ず狭き門を選ばなければならないのです。



 リビングの先には、ご主人愛用のロードバイクが置いてありました。

 計画時にはエントランスに置くことにしていました。

 しかし、この計画とご自身の独立が重なり、なかなか練習ができずで、試合などは一旦休止中だそうです。

 それでも、「また乗りたいと思って頑張れるからここに置いてあるんです」と。

 私のクライアントは、なぜここまでストイックな人が多いのか分かりませんが。



 未来の暮らしに夢を持ち、ご家族の幸せを心から願う方々と仕事するのは、本当に楽しいものです。

 勿論その過程においては、大変なことも無いことはありませんが、全く無いとそれは辻褄が合わない気がします。

 金額だったり、納期だったり、コントロールしきれないように見えるものも、何とかすると決めれば何とかなるものです。

 この計画のタイトルは「ときめく紺色の家」だったので、「ときめいて貰っていますか?」と質問するつもりでした。

 聞き忘れてしまったので、次回撮影に訪問した時に聞いてみます。

 「ときめかない」とは言い難いとは思いますが、答えにはさほど意味がありません。

 ここを訪れると私がときめくのですから。




文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に
巻頭インタビューが掲載されました

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
■『homify』5月7日に「碧の家」掲載
■『houzz』4月15日の特集記事 に
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
■大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
■ 『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載
■『homify』6月29日に「回遊できる家」掲載

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐2‐解体でGO


 4月にプロローグを書いたにも関わらず、本日ようやく解体が始まりました。



 「コンクリート打放し H型プランの平屋」も、今回の新型肺炎の影響をまともに受けてしまいました。

 銀行の業務がストップし、なんだかんだとあっという間に3ヵ月が経過。

 なぜここまで時間が掛かったのかは分かりませんが、ようやくスタートが切れました。



 東隅にあるこお大楠木。

 こちらも倒壊の危険有とのことで、かなりの低さまで伐採が来まりました。

 これは前半戦のメインイベントとも言えます。実況中継レベルでお伝えする価値があるかもしれません。



 側面に回ると、「碧の家」で仕事をした監督がいました。聞くと解体だけの担当とのこと。

 折角、この計画を楽しみ尽くして貰おうと思ったのですが残念です。

 心なしか、ほっとした表情に見えたのは気のせいのはずですが。



 まずは瓦の解体から始まります。



 一枚一枚の手仕事で、暑い中本当に大変な仕事です。

 今日のビールは飛び切り美味しいはず。



 軒の深い室内から、南の庭をみるとの日本家屋の良さが良く分かります。

 一度は、フルリノベーション案も提出しているので、愛着がない訳ではありません。




 反対側に回ると、影の正体は骨董品の山でした。



 南庭の先にある正門はこの構えです。



 これらは間違いなくお宝のはず。



 何なのかは分かりませんが、古いという迫力だけは伝わってきます。



 鶴の置物の繊細なこと。



 箱の側面には大正9年の文字と○○所有という文字も読み取れました。

 良い空間を創り上げる為には、物が少ない方が良いのは間違いありません。

 それで、クライアントには「迷ったら捨てて下さい」とお願いします。「絶対に必要な物は迷いませんから」とも。

 反対に、買うときは「一生添い遂げられるか」という観点でお願いしますとも言っています。

 そういう意味においては、これらは一生どころか三代に渡って引き継がれてきたものです。

 ということは残すべきもの?

 しかし、1年の間に1度も着ていない服も、処分でお願いしますとも伝えます。

 そう考えれば処分すべきもの?

 勿論判断に正解はありません。迷い、悩むことが一番大事なのです。

 禅問答のようですが、これも真理です。答えが出ないくらい悩むなら、それはどちらも正解なのです。

 解体が進まなければ、新家屋が建つことはありません。

 この旧家に思い入れのあるお父様、お母様にとっては、とても寂しいことだと理解しているつもりです、

 しかし、その寂しさより若夫婦家族が、本当に幸せだと感じられる建物にすれば、何とか理解して貰えるのではと思っているのです。

 スタートが遅れた分、年内竣工は難しいでしょうか。

 兎にも角にも、解体でGOなのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐1‐プロローグ


 2017年の6月、「新築、リノベーションの両方を考えている」という相談を貰った。



 大阪府内の旧家で、門や蔵等が残っている。



 正門は戦前からのもので、背の低い舞良戸が昭和初期の佇まいを残している。



 南から正門をくぐると、石畳が北へと誘う。



 すると、仏間と呼ばれている棟に突き当たる。



 南北に縁側をもつ古き良き日本家屋で、この棟をフルリノベーションするという案もあった。

 他の棟も調査し、かなり大規模なリノベーションの提案となったのだ。



 軒の深い建物は外と内のつながりが何とも穏やかだ。

 良いものになると確信していたが、紆余曲折あって仏間棟を取り壊し、新築することになった。



 コンクリート打放しの平屋を建てるという選択肢に行きついたのだ。



 少し視点を下げると、蔵に挟まれた門の奥に配置されているのが分かって貰えるだろうか。

 深い軒は踏襲する事にした。



 特徴は、広い敷地を活かした「H型プラン」だが、この配置なら全ての部屋に光と風が過不足なく届く。



 北棟には水廻りや来客スペースを集めた。

 南棟は、広い南の庭につながるプラベート空間が3つ並んでいる。



 左右に主寝室と子供部屋。中央にLDKという配置だ。



 アプローチは北側からで、エントランス前まで車で寄り付けるよう考えている。



 旧家と言われるご家族の住宅を何件か設計させて貰った。

 大きく意識が違うと感じるのが「住み継ぐ」という考えだ。

 曽祖父が豪農だった。祖父が商いで成功した。経緯はそれぞれだが、財を成した先祖へ対する敬意と土地に対する愛着が非常に大きい。

 「大きな敷地で羨ましい」というのが、私も含めた庶民の率直な気持ちだが、受け継ぎ、引き継ぐという重圧はかなり大きなものだと感じる。

 ここで暮らすのはご夫妻と小さなお子さんだが、彼も含めて、二代、三代と「住み継ぎたい」と思って貰えるようなものを目指した。

 解体工事や補修工事もかなりある。竣工は年末か年始あたりだろうか。

 安藤忠雄によって広く認知されたコンクリート打放しだが、日本建築の財産でもある。

 環境と共に生きる、美しく、幸せな打ち放しの家を必ず実現させてたいと思う。

文責:守谷 昌紀

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐11‐思い立ったが吉日だった


 2019年の年始にオファーを貰ったこちらの計画。

 6月末に、施主検査という区切りを迎えました。



 この1年半にお会いした回数は30回。

 半分の15回が、現場での打合せでした。

 リノベーションにおいては特に、現場打合せが仕上がりの差を生むのです。



 エントランス前の階段とスロープは、クライアントの生活動線、これまでの経験、そして美しさとコストを含めて何度も検討しました。

 「とても良い感じ!」と言って貰ったのです。



 この計画の目的であり、テーマは以下の通り。

 ときめく 笑顔でいられる 家にいる時間が大事 ファンキー

 ファンキーを一手に引き受けてくれたのがこの玄関です。



 エントランスからすぐの洋室。

 ピンクの壁が、ピンクの建具に写り、よりピンクに。

 こちらもファンキー?



 引戸を開けると廊下にピンクが漏れ出していますが、ここには小さな隠し扉。

 大工の腕の見せ所です。



 廊下突き当りにある洗面と浴室。

 大きくはないだけに、ミリ単位の精度で既製品を造り付け家具のように納めています。

 ミラーキャビネット下、モザイクタイルに気付いて貰えるでしょうか。



 最奥にある寝室は、ウッドデッキを備え、明るさ、機能とも充実しています。

 目隠しルーバーの上下に、隣地の庭を借景として取りこんでいます。



 ここは洗濯干し場。

 雨天時用のホスクリーンが室内に見えていますが、これは取外しができる優れものです。



 ガラス棚を備えたアクセントクロス。

 遊び心が溢れておるのです。



 2階のフロアキャビネットも予算の関係で、既製品となりました。



 しかし、知恵を絞って母、娘が一緒にお化粧が出来るスペースを何とか捻出しました。

 モザイクタイル中央、鏡がまだだったのが残念でしたが。



 キッチンに立つと東西に流れる風を感じることができます。



 バルコニー側には横長の窓と引戸があり、そこを開けると一気に風が通り抜けるのです。



 この日は天気も良く、御陵の緑が目に鮮やか。

 絶景、一歩手前くらいでしょうか。



 最後に、先日届いたクライアントのメールを一部抜粋してみます。Hさん勝手して済みません。

 もう、現場打ち合わせがないと思うと少しさびしく思います。

 何気にあの色々なお話が楽しかったものですから。夫婦共々そう思っています。

 ただ、もう一度1年半前に戻って、1からリノベーションのことを考えるのは、とてもじゃないけど大変なので、思ったときに行動していて大正解だと振り返って思います。

 思い立ったが吉日。

 私が設計するかは別にしても、オファーという行動がまず大きな決断で、大変な行動力を必要とします。

 その決断をした時点で、成功は確約されていると私は思っています。

 「こんな暮らしをしてみたい!」

 そう思った瞬間に、その夢は実現したに等しいのです。ただ、行動に置き換えるという条件だけは付きますが。

 この日、2階へ上がった瞬間、奥さんが歓声を上げて喜んでくれました。

 「ずっとここ居たい」と言われたので「もう現場じゃないので、奥さんのものですよ」と笑っていたのです。

 さて、この「ときめく紺色の家リノベーション計画」を楽しんで貰えたでしょうか?

 次回は2ヵ月点検で、その次が撮影をイメージしています。私自身も、いまから楽しみにしているのです。



文責:守谷 昌紀

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐10‐らしい、の探求


 現場での定例打合せも11回目となりました。



 梅雨の晴れ間で、かろうじて晴れと言う天気でした。



 2階LDKの西面にバルコニーがあります。

 バルコニーの腰壁は、奥さんがぎりぎり家族を見送れる高さというオーダーでした。

 引き違い窓が隠れ、すました表情を演出してくれています。

 引戸の上にある庇は、この時期、特に価値を発揮してくれるでしょう。機能を出来るだけ美しく演出したいものです。



 LDKにキッチンがすわりました。「ミストピンク」というカラーです。

 ピンクと聞いた時、ちょっと主張が強すぎないかなという気持ちもありました。

 クライアントには、心から好きなものに囲まれて暮らして欲しいのですが、踏み外してしまいそうな時は軌道修正するのも私の仕事です。



 計画をスタートしたのが2019年の1月で、キッチンのカラーを決めたのが2020年の1月。

 その1年間、奥さんの好みを色々拝見してきたのでお任せして大丈夫かなと思い、口を挟まないことにしました。

 それで結果はこの通り。とてもこの空間にあっています。



 お子さんの部屋にはピンクのアクセントクロス。



 寝室には柄物のクロスにコーディネイトカウンター。

 壁に服を掛け、カバンや小物を置いて、コーディネイトを楽しむ空間です。



 奥さんが、ペットボトル等を置いてその機能を確認されていました。

 茶目っ気タップリなのです。



 このモザイクタイルも奥さんのセレクトで、職人の手待ちの状態です。

 ここが完成すると、工事もほぼ終わりです。



 屋根裏から出てきた梁に、埋め木をしてある箇所です。

 私は「リノベーションなので、柱が取りついていた穴は残しておいて良い」と現場に指示していました。

 しかし、ベテランの大工が気を聞かせてこんな細工をしてくれたのです。

 25年経った木と同じ色にすることはできないのでそう指示したのですが、夫妻は「これも大工さんの気持ちですものね」と言ってくれました。

 「らしい」空間をつくることに腐心してきました。

 押し付ける訳でなく、誘導する訳でなく、かといって任せっきりにするのでなく。

 この舵をとる面白さが、リノベーションの醍醐味なのです。

 そのご家族らしい空間が創造できれば、計画は成功と言えます。全てのベースにあるのは信じる事と受け入れる事だと思っているのです。

文責:守谷 昌紀


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株式会社一級建築士事務所アトリエm

プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...

株式会社一級建築士事務所アトリエmの事例

  • 加美の家

    加美の家

  • イタウバハウス

    イタウバハウス

  • サロンのある家

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  • あちこちでお茶できる家

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  • 住之江の元長屋改修 『大改造!!劇的ビフォーアフター』放映

    住之江の元長屋改修 『大改造!!劇的ビフォーアフター』放映

  • kayashima photo studio Ohana

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  • つるみ歯科クリニック

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  • 高窓と中庭の家

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