住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐7‐祭だ、祭
2021年1月7日
住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐7‐祭だ、祭
2021年の現場日記。
初回はコンクリート打設の風景からスタートです。
12月28日(月)、29日(火)の2日に渡っての打設で、28日(月)の朝方まで降っていた雨も完全に上がりました。
コンクリートは生ものにつき、出来るなら1日で打ち上げたいところです。
しかし、こちらの敷地はアクセスが非常に厳しいのです。
前面道路は4m、かつクランクして幹線道路に繋がります。途中、商店街も通過しなければならず、昼間は車両進入禁止という厳しいの3乗です。
警察署に相談へ行き、近隣とよく話し合った上で、商店街の一部をミキサー車が通ることを許可して貰いました。
苦労をして、ここまでやって来たミキサー車です。
動画
ミキサー車、ポンプ車、そして圧送工へ。
様々な工事種別がある中で、コンクリート打設は最も人手がかかる工事と言えます。
はっきり言って祭です。
圧送工はこの日の主役。
動画
誰だってそうですが、一生懸命働く姿はやはり美しいものです。
この道具はトントンと呼ばれるもの。
圧送工が主役なら、コンクリートを円滑に打ち込むため、この木槌で型枠をトントンと叩くのは、裏方仕事と言って良いでしょう。
建築現場は、常にチーム戦なのです。
打設したあとを追いかけるように左官職人がコテで押さえていきます。
コンクリート面に高低差があるのが分かるでしょうか。
時間とともに硬化する特性があるから、こういった形状を形成できるのです。
更にベテランの職人が平滑に仕上げて行きます。
最後にトンボのような道具で広い面を押えるのですが、コンクリートが波打つ景色を是非ご覧ください。
動画
徐々に硬化して行く特性と、最後に水分が浮き上がってくることまで踏まえ、更に気温、湿度なども経験に照らしあわせながら、鉄筋コンクリートの躯体は形作られて行くのです。
庇の端部も美しく仕上がっていました。
11時過ぎ、午前の部が終了し、最後のミキサー車が現場を後にしました。
職人たちも安堵の顔で、三々五々昼食へ向かいます。
体を動かした後の昼食は、間違いなく美味しいはず。
生コンのしずる感。
人の手では成しえないことを実現する重機。
そして、各職人の熟練の技術。
職人にとっては日常ですが、物創りの現場は全てが非日常。毎日が祭だとも言えるのです。
動画が簡単にUPできるようになり、そんな彼らの日常を伝えるのも私の仕事かなと思うようになりました。
現在はゲツモク日記と同じサイトにUPしています。
現場で写真を撮っていて、腰の据わっている職人を見ると、美しいとさえ感じます。
トップアスリートの映像が美しいのと同じですが、彼らはほぼ一生現場で働きます。
そんなフレッシュで、美しく、祭な現場を、今年も届けて行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。
文責:守谷 昌紀
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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐6‐クルクルとハッカー
2020年12月21日
住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐6‐クルクルとハッカー
ようやく冬らしい気温になってきました。
と思っていたら、関越道では大雪で多くの車が立ち往生。ほどほどが良いですが、こればっかりは……
「H型プランの平屋」は、いよいよ工事が佳境に入っています。
鉄筋コンクリート造の建物は、まず外側の型枠を起し、内側に鉄筋を組んでいきます。
コンクリートと鉄の長所を組み合わせたこの構造は、大空間を安価に造る為に考えられたと言われています。
そのコストパフォーマスの良い躯体を、そのまま仕上げにしようというのが「コンクリート打ち放し」です。
よって、電気の配線、LANの配管、水道など、全て躯体の中に通り道を確保しておかなければなりません。
一度コンクリートを打設したなら、もうやり替えることは不可能なのです。
それゆえ、現場には常に緊張感があるのです。
今日の午前中、定例打合せに行くと屋根スラブの配筋が始まっていました。
レッカーで鉄筋を仮置き。
それを人力で配置。
更に、鉄筋と鉄筋を一本ずつ番線で結束していきます。
その作業量は膨大……
職人はキビキビとハッカーという道具をクルクルと回しながら、結束して行きます。
機敏過ぎて、カメラで追うのも四苦八苦でした。
何故ハッキングという悪さをする輩と同じ名前なのかは知りませんが、色々な意味で「対極」と言って良いかもしれません。
型枠は最終的には上部以外全て閉じられてしまいます。
コンクリートが打設された重さに耐えれるよう、室内は無数のポストで支えられます。
この暗い、ポストの林がどんな空間になるのか。
型枠をばらすまでのこのワクワク感も、コンクリート打ち放しの魅力なのです。
文責:守谷 昌紀
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「THE LONGING HOUSE 」‐5‐棟梁プレゼンツ、屋根の上
2020年12月16日
「THE LONGING HOUSE 」‐5‐棟梁プレゼンツ、屋根の上
先週末に上棟式を迎えた「The Longing House 」。
横断幕を揚げてみました。
何とかここまでやってきたのですが、敷地の課題をどう解決したかを昨日の日記にまとめてみました。
横断幕のある東面こそ細身ですが、T字の敷地だけに中は流石に広い。
工務店が祭壇と御幣を準備してくれています。
ご家族が見えると、お子さん達は早速端材を手にとって遊んでいました。
「トゲだけは気を付けてね」と声を掛けましたが、勿論現場は格好の遊び場。
ご家族は気が気ではないと思いますが、お子さん達の気持ちは良く分かるのです。
監督の進行のもと、式典が開始。
まずは四方を清めてまわります。
そして御幣が棟梁に託されました。
2階の一番高い所に掲げ、皆で二礼・二拍・一礼。
式典が終わるとどこのお子さんもソワソワし始めるもの。
「2階に上がりたい!」となりました。
更に「屋根の上にも上ってみたい!」と。
棟梁の言うことを聞いて貰うという約束で、屋根の上のなかよし兄妹という構図です。
お兄ちゃんが慎重に匍匐(ほふく)前進する横を、妹さんはスイスイと。
さらに「ジャンプしてもいい?」と。
棟梁にOKを貰い、ピョンピョンと。
こんな所は、女の子の方が案外平気なのでしょうか。
この日は土曜日だったので、一旦手を止めての式典でした。
大工4人が、忙しく動き回っている姿を見て貰うのはとても良いことだと思います。
米と言う字は「八十八もの手間をかけて作られるもの。一粒も残しては駄目」と祖母に言われたことがあります。
家を建てるには、ざっと20業種くらいの職方が入り、5カ月くらいは掛かります。
平均3人として延べ2,700人。仮に一日33手間とすれば89,100手間。
クライアントの奥様が「おそらく人生で一度であろう場面に毎回ワクワクしています」と言ってくれました。
また「子供たちも、建築中の自宅の屋根に登ったのは強烈な思い出になったことでしょう」とも言って貰いました。
八万九千百手間。
稲作より大変というニュアンスではありませんが、現場の過程を見て頂ければ、多くの方は納得してくれると思うのです。
文責:守谷 昌紀
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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐5‐上棟式はする?しない?
2020年12月9日
軒が深いから「おいでよHOUSE」‐5‐上棟式はする?しない?
先日棟上げを終えた「おいでよhouse」。
日曜日は上棟式でした。
この10年くらいで言えば、上棟式をする割合は1/3くらいでしょうか。
さらに式典を神主さんにお願いするケースが1/3くらい。
残りの2/3は、略式で監督が神主さんの変わりをするという感じです。
この日は神主さんが見えたので、立派な祭壇がありました。
滞りなく式典が終わり、御幣がクライアントから棟梁に手渡されました。
ちょっと退屈気味だったお子さんも「さあ2階へ!」。
市街地ではやはり2階LDKプランが有効です。
こちらの場合は更にロフト付き。
棟梁に御幣を揚げて貰い、全員で「二礼・二拍・一礼」。
これで全て終了しました。
終了と同時に、お子さん達は更に一段上のロフトへ一目散。
棟梁がサポートしてくれました。
子供は何故危ないところが好きなのか……
もっと真ん中に立ってくれると良いのですが、気持ちは分かります。
このロフト、サイズもかなり大きく、建物のフォルムを決定づけているもので、仕上がりが楽しみです。
「地鎮祭や上棟式はするほうが良いですか?」
こう聞かれることは本当に多いので、私なりに書いてみたいと思います。
上棟式の有無は冒頭に書いた通りで、現代の風潮をよく表していると思います。
地鎮祭になると、開催の割合が2/3くらいで、神主さんに来て貰うケースが1/2くらいに変わるでしょうか。
結論で言うと、開催しなくても全く問題ないと思いますし、有無によって工事の仕上がりが変わることもありません。
「折角の機会だからしてみたい」と言う方が催されればよいと思います。
また手土産の件も良く聞かれますが、有り、無しが半々くらいでしょうか。
これも無くても全く問題ありません。
「おいでよHouse」のクライアントは準備して下さったのですが、以下の3つを頂きました。
まずはご家族のお名前が入っているお酒。
そしてお菓子と赤飯です。
昔は帰省の度に祖母が作ってくれたので、私は赤飯が大好きです。
(嫌いな食べ物はこの世に1つも無いのですが)
月曜日の弁当に入れて貰しましたが、懐かしく、そしてとても美味しく頂きました。
日本酒を飲む機会も最近はめっきり減りましたが、その日の晩に頂きました。
石川県の大吟醸でとても飲みやすく、美味しく頂いたのです。
お酒に関しては、お名前だったり、計画のコンセプトだったり、選ぶことを楽しんでおられたクライアントが多かったように思います。
選ぶのが楽しいと思えば準備して貰えば良いですし、極端に言えば米菓子だけ、「ぱりんこ」だけでも全く問題ないと思います。
建築は土地に根差したものですし、日本においてのはやはり「お米」に関するものが間違いなさそうです。
本来は、奥さんのお母さまが見えられる予定でしたが、大阪がこの状況なのでキャンセルとなってしまいました。
コンセプトの通り、完成したならまずはご親族に遊びに来て貰えればと思うのです。
文責:守谷 昌紀
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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐4‐ヨソはヨソ。ウチはウチ。
2020年12月4日
軒が深いから「おいでよHOUSE」‐4‐ヨソはヨソ。ウチはウチ。
現在、同じような工程で現場が4件進行しています。
一番初めに建て方を迎えたのが、この「おいでよhouse」。
さらに同じような工程で、隣地の工事も始まっています。こちらは当社とは無関係ですが。
1日目の昼休みでこの状態でした。
2日目の昼で、ここまで進みました。
最近は工場でのプレカットが主流なので、柱一本一本にこんなスタンプが押されてくるのです。
おいでよhous
あと「e」だけなので何とか入れて貰えると……
8文字と決まっているのでしょう。仕方ありません。
現場の主役はやはり大工。
棟梁は花形です。
梁の上を身軽に移動し、仮筋交いを固定して行きます。
市街地ではどうしても1階が暗くなります。
よって主空間は2階に上げています。
更にその上にロフトもありますが、このあたりは追々。
右隣は3階建てで、こちらは2階建て+ロフトです。
ヨソはヨソ。ウチはウチ。
大阪の家庭なら、どこからでも聞こえてくる会話です。
全くその通りですが、隣地のサイディグが前に積んであったのですが、同じ黒のようで……
槇原敬之は「どうしてこうも比べたがる?」と詞にしました。
間違いなく家も花も世界にひとつです。
しかし、生物は「負けたくない」という闘争心を本能として持っています。
なら上手使ってしまえばよい、そう考えています。
商売の神様、松下幸之助は「嫉妬は狐色に程よく妬く」と言いました。
何事も過ぎなければ良いと教えてくれるのです。
文責:守谷 昌紀
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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐3‐コンクリートは鮮度が命
2020年12月4日
軒が深いから「おいでよHOUSE」‐3‐コンクリートは鮮度が命
サンマ1匹が100円台まで下がったと新聞に出ていました。
そんなことが記事になる時代になったのですが、太古から秋は秋晴れと決まっています。
今週は晴れ空が続きました。
水曜日の9時頃現場へ行くと、すでにコンクリートの打設が始まっていました。
「おいでよhouse」はかなり縦長の敷地です。
現場内に4人、現場前に3人くらいのチームで打設して行きます。
コンクリートを荒らしたくないので、打設は一番奥からすることが大半です。
ポンプ車がアームを目一杯持ち上げ、奥へホースを送り込みます。
ホースの先端をさばいているのは一番若い職人。
これがなかなかの重労働です。
もうひとりは満遍なくコンクリートが広がるよう、バイブレーターを当てて行きます。
振動でコンクリートが広がる様子が、動画なら伝わるでしょうか。
コンクリートは生ものにつき、鮮度が命です。
打設した後を追いかけるように、左官職人がコテで押さえて行きます。
更に気温によって1~5時間後、水が引いた後に再度コテで仕上げるのです。
生ものが半日後には人の手では変えることができなくなり、翌日には完全に不可能になります。
少し事情があって停滞していた現場ですが、順調に進みだしました。
お隣の敷地も、同じようなタイミグで工事が進んでいますが、一番前の形はなかなかに特徴的です。
2週間後あたりには建方まで進みそうで、形を見るのを楽しみにしているのです。
文責:守谷 昌紀
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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐2‐トライCG
2020年12月4日
軒が深いから「おいでよHOUSE」‐2‐トライCG
前回、軒が深いから「おいでよhouse」というコンセプトが決まるのは、あっという間だったと書きました。
そこからは、クライアントとこのお家はどうあって欲しいか、どうあるべきかを考えて行きます。
その途中にあるのがスタディ模型です。
建築は通常で言うなら人生で最も高い買い物です。
よって、失敗したからやりなおし、という訳にはいきません。
それで、設計図面を仕上げるまでの検討が大切なのですが、私としては描いたり、模型を切ったり剥がしたりしながら、「手」で検討するのが一番良いと思っています。
しかし、2000年頃からCAD化が進み、現在はCG全盛時代となりました。
なんでも挑戦です。
まだまだ造り込みは甘いですがトライしています。
エントランスから1階廊下。
階段を登りきった先にある、スタディコーナー。
そして壁面収納を備えたLDK。
ロフトとの繋がり感も分かりやすいかもしれません。
見下ろしてみます。
「ウォークスルーは見れないですか?」という要望も増えてきました。
3分くらいでまとめてみました。
ニューヨークに住む友人が「文法が苦手だと思うなら、そこから勉強すればいいよ。そうしたら、英語がめきめき上達するから」と言われました。
不得手だと思っているところこそが、自分の伸びしろだという意味です。
まだまだプロクオリティとは言えませんが、リモート打合せが増えた今だからこそ、積極的にトライできるとも言えるのです。
全てはクライアントの幸せの為に。
ビールの宣伝ではありませんが、そこをどれだけ純粋に突き詰めて行けるか以外に違いを出すことは難しいと思っています。
文責:守谷 昌紀
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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐1‐プロローグ
2020年12月4日
軒が深いから「おいでよHOUSE」‐1‐プロローグ
1997年、初めて住宅誌に作品写真を送った時のこと。
編集者に「コンセプトが大事だから」と言われた。暗にコンセプトが弱い、明確でないと言われたことになる。
しかし今考えると、半分は正しく、半分間違っていると思っている。
建物は草木ではないので勝手に生えてくることはない。どんな建物にも明確なコンセプトが確実に存在する。
例えば、「利益を限界まで追求する」というのも明確なコンセプトである。
敷地は大阪市内の住宅地。
間口5m程の敷地に、駐車場とエントランス周りの空間を配置した。
俯瞰するほうがその形状が分かりやすい。
そのシビアな配置の中で、1m程もある軒の張り出を見て貰えるだろうか。
1階は3つの個室。
北側接道の為、2階の南側にLDKを配置している。
そして、LDKに面して9畳程あるロフトを設けた。
ロフト下には天井高を抑えられる、浴室などをまとめてある。
北側道路に面したスタディコーナーは、こじんまりとした空間だが、落ち着いて勉強ができるはずだ。(多分)
まだお子さんが小さいので、ロフトは遊び場としてかなり期待している。
高い天井は面積以上の解放感を与えてくれるはずだ。
今は家の中がゴチャゴチャしていて、なかなかお友達にも来て貰えない。
新しいお家が出来たら、今はお呼ばれしているお友達を是非招きたいんです。
そんなお友達を家の前で、傘を差したまま待たせるのは嫌なんです。
奥さんからこの話を聞いた時、この計画の幹となるコンセプトにするべきだと思った。
プロジェクト名はその場で『おいでよhouse』に決めたのだ。
コンセプトとは出来上がった建物を説明するためにあるものではない。
生物にとってのDNAのようなもので、この建物が存在する理由と、その設計の根幹となるものである。
自身が暮らした京都の中部に位置する街では、玄関に軒や庇が無い住宅など無かったのだと思う。
市街地で暮らすようになり、そのことに気づき、言葉にできるところが凄いと思ったのだ。
このコンセプトは間違いなく正しい。ならば良い建築が出来上がることはは確定している。
しかし現実はいつものことながらで、厳しい金額調整、そしてハードネゴの下ようやく着工となった。
「おいでよhouse」
何度聞いてもよい響きだ。
悦に入っているのが私だけにならないよう、気を引きしめて竣工を目指そうと思う。
文責:守谷 昌紀
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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐5‐プランを上から眺めてみよう
2020年12月4日
住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐5‐プランを上から眺めてみよう
近代建築の三大巨匠のひとり、ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」と言いました。
住むという機能を満たす機械であるという意味です。
快適に住むための機能は多々ありますが、光と風をいかに取り込むかは、最大の課題と言っても良いでしょう。
旧家であり、敷地が大きなこの計画では、各部屋が全て外部と接するプランを考えました。
東の中庭にある大楠は、あまりにも成長したため、枝を大きく落としました。
そこから新芽がでて、更にそれらが紅葉しています。
若干かわいそうではありますが、あたりがグッと明るくなったのもまた事実なのです。
コンクリート打ち放しの壁式構造は、なかなかに時間が掛かる構造体です。
鉄筋を組み、型枠を起し、その中に配管をし、そしてコンクリート打設。
そこから硬化するまで養生が必要です。
鉄とコンクリートがそれぞれの短所を補いあう、非常に強い素材で、木造や鉄骨でも基礎として使われます。
全てが基礎のようなものですから、強いに決まっているのです。
型枠工事に先駆けて、足場がすでに組まれていました。
結構高かったのですが、上から見下ろしてみました。
右手が南となる、H型プランが良く分かります。
南棟の先には和の庭園が残っています。
こちらはクライアントのご両親が暮らすエリア。
この庭は緩衝帯にもなっているのです。
「機械」という言葉の解釈は色々あります。
「機械的に」という言葉には、淡々と無感情でといったニユアンスが強いでしょうか。
しかし、コルビジュエが言ったのは「目的に向かって真っすぐに」と言ったニュアンスではないかと思っています。
この計画は、方向性がなかなか定まりませんでした。
「2階建て新築」→「前棟リノベーション」→「平屋新築」と実際に3度企画提案をしています。
それぞれ、与えられた条件での中で「目的に向かって真っすぐに」と考えれば、どの提案にも迷いはありませんでした。
ただ、恵まれた敷地条件を最も活かせるのは「平屋新築」だとも思っていましたし、高い足場から見下ろしてそう確信しました。
水は高い所から低い所に流れるように、最後には行くべきところに行くのだと思っています。
建築に、誘導や焦りは禁物なのです。
文責:守谷 昌紀
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「THE LONGING HOUSE 」‐4‐PC板素敵
2020年11月11日
「THE LONGING HOUSE 」‐4‐PC板素敵
建物を建てるためには最低4m幅の道路に、2m以上接している必要と法が定めています。
これを接道義務と言います。
「The Longing House」の接道は東側。
Tの足先が、僅かに接しているという感じです。
北を見ると、この敷地が住宅地に囲まれていることが良く分かります。
Tの頭側。西側隣地が一段高くなっています。
ここにどういった対処をするかは、計画開始時からの課題でした。
どういった提案をし、どういった苦労があったか。
そして柱を建てる所ことになった経緯は、前々回に詳しく書きました。
外構計画の目玉。
ようやく柱の間にPC板が設置されました。
PC=プレキャスト・コンクリート
読んで字のごとく、工場で生産された鉄筋コンクリートです。
工場で作るため条件をコントロールしやすく、安定した品質が確保できるとされています。
言わば、工場生まれの打ち放しコンクリート板。
コンクリート素地の肌合いは滑らかで、何とも素敵なのです。
今回のPC板は1枚500kg強。下部には少し隙間を開けています。
理由はまた書くのですが、現在は仮置きの状態で24cmあります。
最終的には、これをもう少し狭めるのです。
監督から「大きな木槌で、だるま落としみたいに抜きますか!」という冗談も出ました。
実際には3枚乗っているので1.5tonあるのでそれは無理。
じわじわと下げて行き、どこかで止めなければなりません。
その工法を聞いて、なるほどと思いました。
「初めての事ばかりなので、さぐりさぐりやってます」と言っていたのですが、そのストーリーがこの塀を、全く違う次元へと導いてくれるのです。
これは前回の帰り道。阪神高速池田線から見える、大阪湾に沈む夕日です。
昨日から環状線南行き10日間通行止めで、下道で会社まで戻りました。
普段よりも混んでいたのだと思いますが、普段なら30分の道程が2時間弱掛かりました。
当たり前にあるものが無くなった時、初めてその価値が分かるものです。
心しておかなければと思ったのです。
文責:守谷 昌紀
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株式会社一級建築士事務所アトリエm
夢は必ず実現する、してみせる。
一級建築士 守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...