荒けずりな創意工夫

2013年8月6日

1907年(明治40年)に、
アメリカ人宣教師が建てたという、
マッケーレブ邸を観てきました...。





パンフレットによると、
この前年に、
子供が学齢期を迎えたことにより、
家族は帰国してしまい、
マッケーレブは、
その後、34年間、
単身ここで暮らしたのだそうです...。





大変質素な暮らしをしていたそうで、
畑仕事から外壁のペンキ塗り、
暖炉の薪割りまで、
すべて一人でこなしていたそうです...。




家の方も、同じように、
とても簡素なものですが、
南側の庭に面して、
サンルームとしても使える広縁などもあり、
なかなか住み心地が良さそうな、
気持ちの良い家になっていました...。





説明によると、
内部は、
「カーペンターゴシック様式」を用いているのだそうです...。

「カーペンター(大工)ゴシック」って何なのかな、と思い、
調べてみたら、要するに、
新大陸アメリカで、
身近に手に入る材料や技術を使って、
ヨーロッパのゴシック様式を真似たものなのだそうです...。

「彼らが利用できたのは素朴だがたよりになる材料―つまり、
木材とハンマーとノコギリと自分たちの荒けずりな創意工夫だけであった。
彼らはこれらを用いて名匠が達した壮大なヴィジョンに
自分たちのささやかな独自性を加えて、
それを人間らしい規模にまで縮小させたのだった。
要するに、奇想と借用と嘘の寄せ集めだった」...。

日本でも、明治時代に、
西洋の建築を真似た、「擬洋風建築」というのがありましたが、
それのアメリカ版という感じなのでしょうか...。

1982年(昭和57年)に、
この家を取り壊して、マンションが建設される、
という発表があると、
マッケレーブが開いた幼稚園の卒園生や地域住民によって、
反対運動が起こり、その結果、
一転、保存が決定した、のだそうです...。

この家が、これだけ多くの人に愛されていたのは、
マッケレーブによる、この地での、
34年間にわたる、慈善事業や教育活動が、
たくさんの人々に感銘をあたえていた、
ということが大きいのだとは思います...。

ただ、
「擬洋風建築」もそうなのですが、
こうした、
「荒けずりな創意工夫」による建築が持っている、
得体の知れないパワーも、
その一因にはなっているような気もしました...。

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聖パトリック教会

2013年8月3日

東京で観ることが出来る、
数少ない、
レーモンド設計の教会の一つ、
聖パトリック教会...。

外壁は、後から塗ってしまったのでしょうか...。





元々は、
他のレーモンド作品のように、
コンクリート打ち放しだったのではないかなあ、
と思いました...。





多分、元々は持っていたであろう、
「量感」のようなものがなくなってしまっていて、
ちょっと...、って感じでした...。

でも、インテリアでは、
折れ曲がった、コンクリート打ち放しの壁を、
そのままあらわしていて、
たくさんの、小さな窓から射し込む光が、
荒っぽい質感に映えて、
とてもきれいでした...。





全てを、つるんと、キレイにしてしまうのではなく、
ざらっとした荒っぽさをのこすことで、
かえって際立つ美しさもある、
ということでしょうか...。

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江戸川乱歩の家

2013年8月2日

江戸川乱歩の家を観てきました...。





割と趣味のいい、落ち着いた感じの家で、
乱歩自身が設計したという応接間も、
とても居心地が良さそうで、
大変勝手ながら、
ちょっと、ガッカリしました...。








それでも、
「蔵の中で蝋燭の明かりで執筆する」という、
伝説の蔵は、
やはり、なかなかの怪しさで、
内部も本がギッシリという感じが、
とても雰囲気がありました...。





「蔵の中で執筆」という伝説は、本当なのでしょうか、
といったことを、
説明してくださったスタッフの方にたずねてみたところ、
蔵の中では、少ししか書いていなかったらしい、
とのことでした...。

理由は、
蔵の中は、寒いですから、
と言っていました...。

うーん、そうなのか...。
しかし、大変だとは思いますが、
そこは、もう少しガマンしてでも、
頑張ってほしかったなあ、
と、まことに勝手ながら、思ってしまいました...。

イメージってものが、ありますから...。

当時はそうもいかなかったでしょうが、
今なら、
もっと居心地の良い蔵も可能だと思います...。

断熱性能を高め、
床暖房かなんかいれてしまって、
快適な蔵をつくり、
是非、その中で、
蝋燭の明かりを灯して、執筆してほしかった...。

まあ、それはそれで、
また、イメージが違うような気もしますが...。

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狭山不動尊

2013年8月1日

狭山不動尊に行きました...。





元々は、
各地の遺構・遺物を保存することを目的として、
西武グループによって、創建された、
お寺なのだそうです...。

ということなので、
西武ドームの目の前にある、ここは、
お寺ではありますが、
いわば、建物テーマパークに近いのかもしれません...。

そういうわけで、
あちらこちらの建築が、
移築されてきて、集められているのですが、
多分一番の売りは、
国の重要文化財にも指定されているという、
芝増上寺から移築されてきた、
台徳院霊廟・勅額門、御成門、丁字門だろうと思います...。





これらは、
徳川秀忠と、お江の方の関連施設なので、
大河ドラマの頃は、
きっとにぎわっていたのだろうと思います...。

行った時には、人っ子一人いませんでしたが...。





それにしても、
この過剰な装飾には、圧倒されます...。
「デコトラ」みたいでした...。





かつて、
ドイツ人建築家、ブルーノ・タウトは、
伊勢神宮や桂離宮を、
「ほんもの」と、褒め讃える一方で、
装飾過多の日光東照宮を、
「いかもの(キッチュ)」と呼び、
こうした「将軍の芸術」は、
「建築の堕落」だ、と散々に非難しました...。

個人的には、
その国の文化には、
そうした両面があってよいと思いますし、
その振り幅が大きいほど、
文化的な厚みが出るのではないか、
という気がします...。

ただ、
これらの、秀忠と江の建築を、タウトが観たら、
きっと、怒るのでしょうね...。

タウトは、悪口(批評)が上手なので、
この、まるで絵に描いたような「建築の堕落」を観て、
どんな悪口が飛び出すか...。

是非、観せてみたかった...。

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山口貯水池

2013年7月31日




山口貯水池(狭山湖)は、
水の中に建つ取水塔が、とても美しいたたずまいで、
なかなか雰囲気があって、よいのですが、
そのそばに建つ管理事務所の方も、
気になります...。





誰が設計をしたのか、わからないのですが、
曲線を用いた、真っ白い船のような、
モダニズム建築...。

また、
湖の側から観てみると、
どこか洋館の風情もあるような感じ...。





出来たのは、1933年(昭和8年)だそうです...。

1933年といえば、
アール・デコ様式として有名な、
東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)も、
同じ年の完成です...。

そう思ってみると、
なんとなく似たような雰囲気もあるみたい...。

しかし、考えてみると、
宮様のお宅と似たような雰囲気を持った、
管理事務所っていうのも、
すごいですよね...。





昔の、
水道などの土木関係の建築って、
結構、
力の入ったデザインのものが多くて、
名作と呼ばれる建築も多々あります...。

それだけ重要な施設だったのでしょうし、
そうした重要な施設には、
それに相応しいたたずまい、
というものがあったのではないか、と思います...。

現代の、いわゆる公共施設は、
100年後の人の鑑賞に耐えるのでしょうかね...?

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シェル

2013年7月30日

太宗寺に寄ってきました...。





50年ぐらい前に出来た建築らしいのですが、
コンクリートで出来た貝殻のような、
いわゆる「シェル構造」の屋根になっています...。





お寺の本堂として、
このかたちが、相応しいのかどうかはわかりませんが、
ダイナミックな曲面の、本格的なシェル構造で、
結構カッコいいです...。

にもかかわらず、
全然目立ってなくて、
ひっそりと、人知れずって感じで建っていて、
面白かった...。





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新陳代謝

2013年7月29日

埼玉県農林会館...。





正面から見ると、
モダンなコンクリートのハコなのですが、
裏側に廻ると、それとは異質な塔が建っています...。





塔の中には、
機械設備が入っていて、
その他の事務室棟とは、
構造的にも、デザイン的にも、
わざと、全く別物としてつくってあるのだそうです...。

それは、
設備部分と、事務室部分とでは、
寿命の長さも異なるため、
別々に修理・交換が可能なように、
ということを考えて、のことだそうです...。

設計者は、
将来の「改造改良にも耐えるように建築がつくられていることは、
むしろ建築寿命を延ばすことになる」と、
説明しています...。

このようなことを考えて、設計された建築は、
割とたくさんあって、
中には名作と呼ばれるものもあるのですが、
実際には、残念ながら、
想定した通りに、部分的に交換したりして、
寿命を長らえた、という例は、あまりないようです...。

せっかく、
交換出来るようにしてあるにもかかわらず、
結局、普通の建物と同じように、
古くなったら、全部を取り壊してしまい、
新しく建て直す、
というようになってしまうことが多いみたいです...。

確かに、その方が簡単なのかもしれませんが、
一方で、
そんな風に、
つくって、壊して、
を繰り返していていいのか、というのは、
当然感じる疑問でもあります...。

この建築は、幸い、
ここまで、50年も生き残ってくることが出来たので、
この先に、いよいよ、何か大きな問題が起きて、
どうしようか、となった時には、是非、
当初の構想通りに、改造改良を行い、建築寿命を延ばす、
という「実験」をしてもらえるといいなあ、と思いました...。





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詩を書くように

2013年7月27日

すごいですね...。
本当に、詩を書くように、
建築を構想していた、
ということなのでしょうか...。





立原道造
草稿「鉛筆・ネクタイ・窓」より

僕は、窓がひとつ欲しい。

あまり大きくてはいけない。
そして外に鎧戸、
内にレースのカーテンを持つてゐなくてはいけない、
ガラスは美しい磨きで外の景色がすこしでも歪んではいけない。
窓台は大きい方がいいだらう。
窓台の上には花などを飾る、
花は何でもいい、
リンダウやナデシコやアザミなど紫の花ならばなほいい。

そしてその窓は大きな湖水に向いてひらいてゐる。
湖水のほとりにはポプラがある。
お腹の赤い白いボオトには少年少女がのつてゐる。
湖の水の色は、
頭の上の空の色よりすこし青の強い色だ、
そして雲は白いやはらかな鞠のやうな雲がながれてゐる、
その雲ははつきりした輪廓がいくらか空の青に溶けこんでゐる。

僕は室内にゐて、
栗の木でつくつた凭れの高い椅子に座つてうつらうつらと睡つてゐる。
タぐれが来るまで、夜が来るまで、一日、なにもしないで。

僕は、窓が欲しい。たつたひとつ。...





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ヒアシンスハウス

2013年7月26日

ご存知の方も多いかとは思いますが、
詩人、立原道造は、
建築家でもありました…。





1914年(大正3年)に、
東京、日本橋に生まれた彼は、
高校(旧制)時代には、
文芸部に所属し、
堀辰雄らとの交流を始め、
詩を発表するようになります…。


しかし、
大学の進学にあたり、なぜか、
現在の東大建築学科へと、
進学します…。


在学中の彼は、
彼の詩を思わせるような、
詩的で、風土的な作品で、
その年の優秀な設計製図に与えられる奨励賞を、
3年連続で受賞するなどして、
当時から交流のあった、
一級下の、丹下健三にも、
とても大きな影響を与えた、
と言われています…。


そんな立原道造の卒業設計作品、
『浅間山麓に位する芸術家コロニイの建築群』は、
彼が、堀辰雄をたずねて、
村暮らしをした思い出のある、
彼にとっての「ふるさと」でもあった浅間山麓に、
「優れた芸術家が集ってコロニーを作り、
この世の凡てのわずらいから高く遠く生活する」、
という構想でした…。


「芸術家の一人としての建築家の立場から
私のその計画は幻想され、
乾燥した火山地方の高原にその夢は結晶した」、
と言っています…。


この作品は、
詩人・立原道造の世界の、
建築的結晶とでもいうようなものであったようです…。


ただ、
この卒業設計作品は、
最優秀作品には選ばれなかったそうです…。

話は、以下に続きます...。
http://blogs.dion.ne.jp/k_nakama/archives/11260431.html (続きを読む)

建替え間近

2013年7月25日

流麗で、ダイナミックな造形で知られる、
山田守が、設計した病院...。





といっても、
山田守が亡くなった後の完成なので、
引き継いだ、弟子達による、
といった方が、いいのかもしれませんが...。

完成して、およそ45年になるそうですが、
とうとう、
建て替えとなってしまったようで、
周囲では、その工事が進んでいました...。





この姿が見られるのも、
多分、
あとわずかなのだろうと思います...。

工事のための、
現場小屋や、仮囲いの隙間から、
山田守らしい、
曲面を使った、独特のかたちが、
顔をのぞかせていました...。





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仲摩邦彦建築設計事務所

プロフィール

仲摩邦彦建築設計事務所

ひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたい、と考えています。

建築は、建築主であるお客様や、様々な条件・環境等の、出会いや組み合わせにより生まれるものであり、それぞれが、その機会でこその個性的なものだと考えています。 「これしかない」と納得できるようなものを...

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