朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐3‐屋根が主役
2019年4月23日
朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐3‐屋根が主役
昨年の北摂エリアは、地震、豪雨、に台風と厳しい天災が続きました。
こちらのお家も震災で棟瓦が少しずれ、知り合いの建築会社がブルーシートを掛けてくれたそうです。
瓦屋根は、葺き替えがしやすく、自然に優しい材でもあります。
問題が起った部分だけをやり替えれば良い点は、他の材に無い特徴と言えます。
一昔前なら、少し器用な人は、自分でメンテナンスしていたでしょう。
焼き物である重さは、台風に対しては優れていますが、地震に対して優れているとは言い難いのが一番の課題でしょうか。
近くに見える古い民家は、鋼板屋根に変わっていますが、茅葺きの上を覆ったのではと想像します。
この勾配で瓦で葺くことはほぼないからです。
この計画でも、瓦屋根を葺き替えるかは、最後の最後までクライアントも悩んでいました。
コスト面が大きかったのですが、最終的に葺き替えという方向に決まりました。
2階には屋根上に敷く断熱材が準備されています。
断熱材の上に通気層をとるのですが、雨を止めると共に、断熱も屋根まわりに求められる重要な機能です。
長らく大屋根を支えてきた棟束には「への六棟」とあるのでしょうか。
昔の大工は、通りを「いろはにほへと」で表しました。
重い瓦屋根を支えてきた丸太の小屋梁です。
水平に墨が打たれており「三寸上り」とあります。
建築において、水平、垂直が常に基本となるのです。
瓦の撤去中で、バラ板の隙間から光が差しています。
ブルーシートを透過した青い光をステンドグラスのようと言えば過ぎるでしょうか。
しかし、この強い光を止めるのも屋根の役割なのです。
解体撤去が進む中、鬼瓦が置いてありました。監督も「立派なので捨てにくかったのでは」と。
折角葺き替えをさせて貰うことになったので、安全、断熱、遮熱、そして美しさを備えた屋根にしたいと思います。
雨、風、光を最前線で食い止めているのが屋根です。
この計画に置いては、ロケーションも含めて、屋根が主役になりえると思っているのです。
文責:守谷 昌紀
■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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脳神経外科「Uクリニック」‐1‐プロローグ
2019年4月11日
脳神経外科「Uクリニック」‐1‐プロローグ
南大阪の幹線道路北側に「Uクリニック」の計画地はある。
間口は15m程あり、日当たりもよい。
全面道路はひっきりなしに車が往来し、駅が近いこともあって、自転車、歩行者も多い。大変に活気のある通りだ。
3月末、土地の掘削から工事がスタートした。
この地に木造2階建ての、クリニックを新築するのだが、本クリニックは脳神経外科・内科が標榜されている。
院長はドイツ留学などを経て、その職能を研鑽してきた。脳に対しての高い専門性が一番の特徴である。
設備においての特徴は、CT、レントゲン等とともに、最新鋭のMRIを備えていることだ。
MRIは、磁石による強い磁波と電波を使って、体の断面映像を撮影するので、被ばくがなく体に優しい医療機器なのである。
最新鋭の医療機器を導入するために、キュービクルという小さな変電所も敷地内に設ける必要がある。
建物のコンセプトは回を改めようと思ったのは、現場を視察したからだ。
良い診療をするためには、最先端の医療機器も必要だし、広い待合も欲しい。
法が許容する最大の建物を計画することになり、工事車両を止める余白もない。
しかし、建物西側にはキュービクル置場がある。
それもギリギリで計画したのだが、職人はここに工事車両を停めるという。
後輪の半分は、空中を通過しながらも見事に納まった。
これも日々の研鑽の成果と言える。
西も北も境界ギリギリ。
東の奥もギリギリ。
道路側もギリギリ。
何もかもギリギリだが、数センチの精度で、ユンボを操る様を見るのはとても楽しい。
実業の誇らしさを感じる瞬間だ。
昨年だったか、ある映画監督がITを「虚業」と表現した。それに対し、ITの寵児が牙をむいたというニュースがあった。
表現の自由は常にあるが、他者を非難する必要はない。ただ、気持ちとしては理解できる。
この不器用な男たちの力仕事と技術なくして、建築という実業はなりたたないのだ。
どんなクリニックとするのか?
ここまでに院長とは20回程の打合せを重ねたが、コンパスは同じ方向を指していると確信している。
その成果をこの秋に収穫するつもりである。
文責:守谷 昌紀
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「住吉区歯科医師会館」‐5‐咲きほこる
2019年4月1日
「住吉区歯科医師会館」‐5‐咲きほこる
世は「平成最後」とかまびすしいですが、新元号が4月1日に発表されると知りました。
つい先日、娘に教えて貰ったのです。
そんな世間の喧噪とは関係なく、季節は粛々と進んで行きます。
現場の近くの長居公園で、早咲きの桜かなと思って近づくと「アーモンド」と表記がありました。
あのアーモンドなのでしょうか。
工事も残すところ1ヶ月となり、職人の往来も激しくなってきました。
来月、クライアントである歯科医師会の皆さんをお迎えする「現場内覧会」を予定しています。
来客用ヘルメットもすでに準備済。
壁下地の工事も進んでいますが、全て鉄製のライト・ゲージ・スタッドで構成されています。
一般にはLGSと呼ばれるもの。
防火性能に優れていますが、木ではないので加工が簡単ではありません。
大工ではなく専門の職人の手で施工されるものです。
トップライト周りの繊細な部分も、LSGで下地をしているのがみてとれます。
1階の大会議室も随分形になってきました。
2階の会長室は床下地を施工中。
トップライトは転落の危険がないように養生中でした。
「虫歯の鳥などいないのでは」というコンセプトから展開していたったのが、正面の庇です。
「くちばし」と呼んでいますが、この繊細な部分を鉄骨で構成するのは、なかなかに難しい仕事です。
最上部のくちばしをどう納めるか、検討している図。
その直下にあるサッシが、丁度搬入されてきました。
できる限り外壁と一体化させるため、最後の最後まで検討して貰った部分です。
建物にとっての顔は、できる限り美しいものにしたいのです。
バラ科とあったアーモンドの花は、桜に良く似ています。
冬をやりすごし、今まさに咲き誇る瞬間です。
日本における近代建築の祖、建築家・前川國男は弟子にこう言ったそうです。
「自然は美しいね。なぜだと思う。自らに責任を持っているからだよ」
またこうも言いました。
「人間は、はかない存在である。頼れる確固たる存在が必要だ。それに建築は応える必要がある」
建築で一番大切なものは永遠性だと言ったのです。
この歯科医師会館も、私より長く存在してくれるはずです。永く咲きほこる建築であって欲しいと思うのです。
文責:守谷 昌紀
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末代までの誇り‐1566‐
2019年3月5日
末代までの誇り‐1566‐
3月に入り、光の力強さが増したでしょうか。
しかし今日は生憎の雨です。
当社は南向き建物の1階にあります。
エントランスすぐにあるのが打合せスペース。
床も壁も白を選んでいるので、開口→床→天井→床と反射を繰り返し、光が奥まで届きます。
その分、掃除は大変ですが、これによって昼間の明るさは全く違います。
私の席から見た風景です。
左奥は1月末からスタッフに加わったIさん。そして手前はオープンデスクの学生。
その向かいが、まもなく11年目に入る田辺さんの席です。
進行中のクライアントは皆さん承知しているのですが、彼女は臨月に入っていました。
予定日はもう少し先だったので、この日も打合せに出てくれていました。
ちょっと大変そうだなと思っていたら、その日の晩に入院し、翌日に無事男の子を出産したのです。
折があった医師のクライアントからは、「ギリギリまでお仕事頑張っておられたので、少しドキドキしてました」「本当におめでとうございます」とメールを頂きました。
プロであり、ご自身のクリニックも似た状況があったので、尚更だったようです。
彼女には休む権利があるので、「休みたい」と言えば、勿論休んで貰うつもりでした。
しかし、結果として生まれる直前まで働いて貰ったことになります。
働くことが、マイナス要素となる可能性が無いとは限りませんが、望んで働いてくれるなら、そんなことが起るはずがないと信じていました。
嫌々とか、仕方なしにでなければ、働くということは最も健全な行いだと思っています。
将来、子供さんに「お母さんは、あなたが生まれる寸前まで働いていたのよ」と伝える機会があるかもしれません。
梅が終われば、桜の蕾のふくらみが目につくようになりました。時間が滞ることはありません。
137億年とも46億年とも言える、大絵巻物の最新刊あたりで私達は生かされています。
休むこと、休ませることばかりがフォーカスされる時代ですが、全ての仕事は、自分や家族の幸せに直結しています。
これは、いくら時代が変わっても、変わることのない真理です。
「末代までの誇り」と言って貰えるような生き方を目指すしかありません。
当社はいつの間にやら、私以外の全員が女性になりました。
昨日はひな祭りでしたが、スーパーへ買い出しに行って気付いているようではどうしようもありませんが……
時々「守谷は女性に厳しい」と言われます。
本当は全くの逆です。女性に期待しているのです。
と言えば、妻も多少溜飲を下げてくれるでしょうか。
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「住吉区歯科医師会館」‐4‐それでも時間は止まらない
2019年3月4日
「住吉区歯科医師会館」‐4‐それでも時間は止まらない
現場には常にシートが掛かっているので、外からみるとあまり変化はありません。
しかし、内部は違います。
ようやくサッシが取りつきました。
洗面、トイレの窓はガラスルーバー窓。
オペレーターを回すと、ガラスがブラインドのように動く窓のことです。
また、大会議室のトップライトも取付けが終わりました。
2階の光庭に上がるとその大きさが良く分かります。
いずれも、まだガラスは入っていませんが、サッシというものは、建築の中でも非常に重要な部分です。
窓はどこにでもあるので、特に意識することはないと思いますが、光と風を取り込み、水を止めるということは、実は至難の業です。
その中で、錆びに強く、成型しやすく、軽いアルミサッシは現代建築では必須となりました。
特に、屋根面となって雨を受けるトップライトにおいて、その価値はさらに高いのです。
2階は3人が作業中でした。
こちらは、会長室から中庭を見た景色。
事務室も光庭に面しています。
そして小会議室も。
平面的にも、立体的にも、光庭を中心にこの建物は構成されているのです。
2階では、監督が養生のシートを張っているところでした。
こちらはトップライトの仕舞をしているところです。
こちら電動ノコギリでボードを裁断しているところでした。やはり、現場は職人が沢山いて、活気があってこそです。
しかし、ここにいる皆がおそらく皆40オーバー。48歳の私も含めてですが(笑)
最近の現場で、20代、30代を見ることが極端に減りました。
また、新聞にもボルトとナットが足らず、鉄骨の建物は工期が何ヶ月も遅れているという記事がでていました。
こちらの会館では何とか確保できましたが、それでもギリギリ。
人は足らず、物は足らず、消費税UPの駆け込み需要もあり、現場は40オーバー。
もうコントの設定レベルですが、それでも時間が止まることはありません。
何度も、何度もこんな場面を経験してきましたが、人生は困難克服成長ゲームです。
ここからの2ヵ月。現場には、120%で頑張って貰わなければなりません。
文責:守谷 昌紀
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冬はつとめて‐1557‐
2019年2月1日
冬はつとめて‐1557‐
この時期、家を出る前は庭木の梅に目が行きます。
先週末、今年はじめの花が開きました。
咲き始めると、追いかけるようにポツポツと続きます。
今朝はここまで進みました。
ご近所の庭では椿も満開。
冬には冬の楽しみがあります。
食卓にあった娘の教科書をパラパラめくっていると、清少納言の「枕草子」をみつけました。
冒頭のくだりはあまりにも有名です。
数年前、広告にパロディで使われているのを見かけました。
春はあけぼの。
やうやう白くなりゆく山際、
少しあかりて、紫だちたる雲の
細くたなびきたる。
【現代語訳】
春はなんと言っても明け方。だんだんとあたりが白んで、山のすぐ上の空が少し明るくなって、紫がった雲が細くたなびいている様子。
教科書の解説に、「春夏秋冬それぞれの季節について、その良さを最も感じる時間帯を取り上げ、様子を述べている」とありました。
そんな内容だったとは、すっかり忘れていました。
確かに、春の明け方はワクワクするものがあります。
寒かった冬が終わり、日が昇るその瞬間、春のにおいだったり、生命の息吹のようなものを感じます。
そして、「夏は夜」「秋は夕暮れ」と続きます。
暑い昼間をやりすごした後、海辺で波音など聞きながらの一杯などは最高です。
また、風が冷たくなりはじめる秋の夕暮れは、誰もが感傷的になるもの。
いずれも異論はありません。
そして冬です。
冬はつとめて。
雪の降りたるは、言ふべきにもあらず、
霜のいと白きも、またさらでも いと寒きに、
火など急ぎおこして、炭持てわたるも、
いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
火桶の火も、白き灰がちになりぬるは わろし。
【現代語訳】
雪が降り積もっているのはもちろん、霜が真っ白におりているのも、早朝に炭を運んでいるのも冬の早朝に似合っている。昼になって、だんだん寒さが緩むと、火鉢の炭火も白く灰をかぶってしまってみっともない。
「つとめて」は「務めて」なのか「勤めて」なのか、それが早朝を指すのは面白いところです。
朝の読経を「おつとめ」というのも、似たようなニュアンスでしょうか。
他の季節は、良い時間帯をピックアップしているのですが、冬の昼はみっともないとまで書いています。
清少納言の生きた平安時代、寒さは現代の比ではなかったでしょう。しかし、寒さが緩むとみっともないとまで書いているのは痛快です。
「行く夏を惜しむ」と言いますが「行く冬を惜しむ」とは言いません。
日が短く、寒い冬を、心のどこかで、過ぎ行くことを望んでいる部分があるからでしょう。
冬において一番良い時間帯は早朝でした。また、午前を制するものは一日を制します。
冬でも努めて、早起きしたいと思うのです。
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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐8‐1年点検
2019年1月28日
緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐8‐1年点検
「山本合同事務所」の竣工は昨年の1月でした。
先週金曜日に、1年点検へ行ってきました。
実務が始まり、竣工写真通りとは行きませんが、このオフィスが機能していることは間違いありません。
バームクーヘン型のデスクの位置を少し動かしたいという要望がありました。
考えに考えて配置したのですが、ダイイングテーブルなども合せて、机の配置は本当に難しいものです。
しかし、監督ができる限りのことはしますと。
馬蹄型のデスクの中央にあるシンボルツリーは2代目です。
初代目は上手く育ってくれず、すぐにやってきた2代目君も、一度病気に掛かってしまったそう。
しかし懸命の治療のおかげで、元気に1年を迎えることができました。
シャワーも備えたトイレは、少し暗かったとのことで、照明を変更してもらいました。
ワーキングスペースも含めて、照明計画は本当に繊細なものです。
無難な空間なら間違いは起きにくいものです。
しかし私の仕事は60点から70点を目指すものではないと思っています。だからといって、ある箇所は120点、ある部分は40点では駄目。
コストバランスも含めて総合点が最も高いところを探すのですが、答えは無限にあります。
全てが完璧とは言えませんが、良いオフィスだと思います。
クライアントは大学時代の後輩で、3階の打合せ室兼リビングで四方山話をしていました。
リーダーであり、司法書士であり、行政書士であり、土地家屋調査士の資格も持っており……電話はひっきりなしです。
私のほうから話を切り上げて、大阪に向かいました。
1年点検は私にとって答え合わせの場です。
良かったところ。もっと違う解釈があったところ。素直に謙虚に受け止めなければなりません。
これまでに、色々な場所で、本当に色々な建物を建てさせてもらいました。
いくつになっても、自分の仕事が好きで居れるのは、この上ない喜びです。
1年後の感想も届いたので、最下に付けておきます。
年末から春にかけては、特に多くのプロジェクトが進みます。
クライアントに「本当に良かった」言って貰えるよう、只々ひたむきに仕事に打ち込むしかないと思えるのです。
【1年後の感想】
Y様
1. 使用される方の人数をお願いします。
男性10名、女性2名
2. 建物が完成して何年になりましたか?
約1年
3. 実際に生活されて(使われて)、良かった点はどこですか?
大きな窓、天窓、吹き抜け、ラウンドテーブル、3Fのリビングのような応接室等、リラックスして仕事ができること
春・秋・冬に差し込む光が気持ちいい
4. 反対に問題点や、こうしておけば良かったと思う点はどこですか?
照明についてもう少し検討すればよかった(明るさ・色・ブルーライトの影響等)
床材をもう少し扱いやすいものにしてもよかったかも(2階だけ床暖を検討してもよかったかも)
もう少し人が増えることを想定してもよかった
5. 訪れた方々の感想はいかがですか?
おしゃれと言われる
外からじろじろ見る人が多い(たぶんおしゃれな建物と思って見てはるんやと思います)
6. 設計の過程、または暮らされて(使われて)、印象に残っていることなどあればお願いします。
守谷さんとたくさん話しができてよかった(笑)
7. その他、ご意見等ありましたら、お願いします。
色々無理を言ってすみませんでした
とにかくいい事務所ができて本当によかったです
ありがとうございました
■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映
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彼女は17年前の私‐1555‐
2019年1月24日
彼女は17年前の私‐1555‐
先週まで、大学4回生の男の子が手伝いに来てくれていました。
夜は飲食店のアルバイトをしながらで、大変そうな時もありましたがよく頑張ってくれました。
また、2月からもオープンデスク生を1人受け入れます。
1日で辞めた学生も含めて、70名程を受け入れてきました。その卒業生の1人から手紙が届きました。
彼女は働き始めて6、7年目になったと思います。設計の仕事に就いており、時々手紙をくれるのです。
年末年始にカンボジアを訪れ、アンコールワットなどを見て回ってきたとありました。
彼女の手紙は、いつも丁寧な文字でしっかりと書かれています。
設計者として建築の考察、またスケッチが描かれていることもあります。
写真も同封されており、「懐かしいなあ」と思いながら手紙を読ませて貰ったのです。
私がカンボジを訪れたのは31歳の時でした。
当時、酷い鬱に苦しんでおり、どんな経緯で海外へでたのかは、この日記の1000回目に書きました。
宿を取らずに海外へでたのは初めてで、タイ、カンボジア、ベトナムをあてもなく放浪しました。
まずはバックパッカーの聖地、バンコクのカオサンロードで安宿を探し、ビザなどを取得していきました。
アユタヤなども回りながら旅の試運転を終え、カンボジアへ向かったのです。
アンコール・ワット観光の拠点となるのは、シェムリ・アップという街です。
観光で潤っていることもあり、治安がよく温暖でリゾート地の雰囲気もあります。
「微笑みの国」タイと言いますが、カンボジア人はさらに優しく穏やか。
仕事に疲弊し、ボロボロの状態で海外へ出た私にとって、まさに救いのオアシスでした。
この街で少しゆっくりすることにしたのです。
アンコール・ワット、アンコール・トム、タ・プローム等、遺跡群は全て回りましたが、時間だけはあるのがバックパッカーです。
また観光地とはいえ、遺跡以外は何もありません。
仕事が欲しいカンボジアの若者は、「日の出が世界一美しいから見にいこう」と売り込んできます。
で、世界各国の観光客が、遠くにトレンサップ湖だけを望む、何もない平原で日の出だけを見るという構図です。
卒業旅行に来ていた女子大生が、「40kmくらい先に、ベンメリアという秘境の遺跡があるらしいんですけど、皆でいきませんか」と声を掛けてくれました。
トラックを1台チャーターしてきて、皆で割り勘。海外で会う日本人女性は行動力の塊です。
砂埃を巻き上げながら走るトラックの荷台で、1時間ほど揺られたでしょうか。
ベンメリアは外国人へ開放されたばかりで、内戦時の地雷も残っているので、不用意に道から外れてはいけないと言われました。
また、少し街を離れると悪名高いポル・ポト派の残党がでるとの話しもありました。
旅の危険自慢ほど下品なものはありませんが、正直、好奇心に勝てませんでした。
熱帯の木々の強い生命力と、建築の最期を見せつけられたのです。
当時は写真に重きをおいておらず、持って行ったカメラは「写ルンです」を3つだけ。
残っている写真は僅か数枚で、勿体ないことをしたなと思います。
しかし旅は体感が全て。その方が良かったのかもしれません。
その後ベトナムへ向かいました。
経済発展が著しいと聞きますが、当時は社会主義国独特の雰囲気がありました。
ホー・チミンのゲストハウスの屋上から、市街地で上がる旧正月を祝う花火を見ました。
そして「結局自分には建築設計しかないんだ」と日本に戻ることを決めたのです。
私が訪れた時から17年が経ちました。
変わったところも沢山あると思いますが、トレンサップ湖の水上生活者や、バイヨンビールの味はそんなに変わらないのだと思います。
この旅の中で、自分が写っている写真が2枚だけありました。
ベンメリアか、その近くの街で子供と撮った写真だったと思います。
彼女の手紙には、エネルギーのある20代のうちに行っておこうと思ったとありました。
当時の私と2つ歳の差はありますが、仕事の壁にぶつかり、社会の軋轢に悩み、今後の人生のことを考える年齢だと思います。
年長者として、同職の先輩として達観してみている訳ではありません。
誤解を恐れず言えば、彼女は当時の私です。
彼女のことを十分理解しているとか、凄く分かっているという意味ではありません。
人はそんなに変わらないし、自分だけが特別なことなど殆どないと思っているのです。
ゲーテがモチーフとしたように、若いということは悩みが多いということです。
多くの選択肢がある、可能性があるから悩むのです。
反対に、決めるということは他の選択肢を捨てるということです。
捨てるということは決してネガティブなことではありません。これが31歳の私と今の私の違いだと思います。
人生は一本道です。折角みつけた目の前の道を、一歩一歩進んでいくしかありません。
だから一休和尚は「迷わず行けよ」と励ましているのだと思うのです。
この世にタイムマシンはありませんが、彼女の手紙が、ひと時、私を17年前のベンメリアに連れていってくれたのです。
■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐13‐幸せの青い花
2019年1月23日
築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐13‐幸せの青い花
「碧(あお)の家 」は昨年末が1年点検でした。
碧はやはり光が当たってこその色。
全てはそのコンセプトから始まりました。
夏の日差しで、花壇の花が何度か枯れてしまったそうです。
クライアントがDIYで日よけを作ってくれました。
これで、次の夏は元気に育ってくれるでしょうか。
花壇は左の低い所が花のエリア。
ブルーデイジーとマーガレットが植わっています。
リノベーションは、あるものを出来るだけ活かすのですが、側面の路地からは既存の母屋が見えています。
こんな景色に、この家の年輪を感じることが出来るはずです。
映画「かもめ食堂」で使われたこのケトル。
やはり本物は絵になります。
2階の寝室も、全く変わらずに美しい状態のままでした。
建物を好きになって貰えたら、少しでも長く使いたいと思って貰えたら、自然と手入れをしたくなるものです。
そんな気持ちが、空間をよくするのだと思うのです。
ブルーデイジーの花言葉は「恵まれている」とか「幸福」だそうです。
その語源は、学名の「felix」がラテン語でそれらを意味するところからきているそうです。
まさに「幸せの青い花」でした。
昨日、「1年後の感想」をUPしましたが、ここにも載せてみました。
私が何を語るより、「碧の家」のことが良く分かって貰えると思うのです。
【1年後の感想】
住んでから一年経っての感想ですが良かったところは殆どそうなので部分的に少し言わせてもらえば…
まず
① サンルーム(室内洗濯干し部屋)が大変便利です。
雨の日のお洗濯も困る事なく不透明ガラス扉を閉めれば視線を遮る事も出来ます。
程よい大きさなので一つの部屋としても十分成り立っています。
「コレは絶対いい!」と来た人は必ず言います。
② 階段下の収納
当初は「収納どうかな?」と思ってましたが階段下を目一杯収納にとってもらったのでかなりの収納スペースになりました。
満足の収納スペースです
③二階の大きな梁
以前は隠れてた大きな梁を今回「見せる」という選択をしてもらったおかげで今まで経た時を感じる事が出来
また、これからも感じる事が出来ると思います。
フローリングを完全無垢にしており上の梁とで更に木の息遣いを感じ癒しになります。
以前の家があまりにも古いので人を呼べる事も出来ませんでしたが既に沢山の友人に来てもらいました。
皆、居心地が良いと言ってくれて「次回は泊まりたい」とさえ言ってくれます。
以前では想像出来ないです 笑
一つ、もう少し考えれば良かったと思ったのがガレージ下のコンクリート?です。
費用をおさえようと思って白っぽいコンクリート?にしたのですが少し汚れが目立つかな?と 思ってきました。
深く考えなく費用で決めたのですが暮らしてみてもう少し考えればと思いました。
現場打ち合わせの時に電気コンセントの位置を決めるのが
こんなに長い時間を費やし大変な作業と解りました。
住んでみて確かに重要かつ時間をかけるのが解りました。
自分の考えからトイレのドアにガラスを入れてトランプの4種類♠️♣️♥️♦️をガラスに貼って欲しいとお願いしました
ガラスにどの様に貼るか守谷さん、現場監督と話しをするのを聞いていたら大変そうでした…
毎回現場打ち合わせでガラスをみたてた画用紙でトランプの種類の大きさを作っていただき大きさを考える…
工事打ち合わせをしてる横の壁には何枚かの大きなトランプを壁に貼ってるのを見ると「こんなに大変な作業だったとは…トイレのドアにここまで時間を費やす家はきっとないのでは…」と考えては感謝をしました。
おかげで他にはない?トイレのドアが出来大変嬉しく思います。
設計から工事、家が出来るまでと自身が携わる事で大変良い経験、楽しい時を過ごす事が出来良かったと思います。
リノベーションして新たな家とまた、これからも時を紡いでいくと思うと微笑ましくなるのは
いうまでもないです✨✨✨✨✨
■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
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うだつを上げろ‐1554‐
2019年1月23日
うだつを上げろ‐1554‐
昨日の日曜日は大寒。
暦の上では寒さのピークですが、現実的にはもう少し先になるでしょう。
今日は現場にでていましたが、道中に古い町並みが残っていると知り、少し立ち寄ってきました。
聖徳太子が建立したという久宝寺跡に建つのが顕証寺。
その周辺を久宝寺寺内町と呼ぶようです。
顕証寺の白壁は高さが3m程もあり、かつ長く続きます。
なかなかの迫力でしたが、 中世から環濠都市として栄え、その中心であった寺の威光をうかがい知ることができるのです。
本堂は改修中のようでした。
久宝寺寺内町には、江戸時代から戦後までの様々な町屋が残っています。
表情豊かな焼き杉板ですが、酸化して炭となった表面部は耐久性が増します。
しかし思い切った方法を考えついたものです。
屋根の両端を支える袖壁を「うだつ」と言います。
「うだつ」の上がっている建物が何軒もありました。
こちらの黒壁の家にも「うだつ」が上がっています。
諸説ありますが、防火の機能も備えたうだつを、富裕層は競って上げたと言います。
それが富の象徴となり、反対の意味で「うだつの上がらない」は、出世しない、金銭にめぐまれないとなりました。
こちらのうだつは、漆喰で縁取り装飾された上、鶴の飾りつけまであります。
木の彫り物に漆喰を塗ったものでしょうか。
いずれにしても、品のある大変に美しいうだつでした。
建築は富や権威の象徴でもありますが、それを「うだつ」だけにフォーカスしているのが、面白いところです。
日本人は様式美を重んじる民族です。
様式美とは、何らかのルールの中で表現するということですし、歴史や他者を重んじることでもあります。
アメリカのメジャーリーグにはアンリトンルール(明文化されていないルール)があるといいます。
例えば、大差のついたゲームでは盗塁をしないなどですが、日本もアンリトンルールの多い国だと思います。
それらを尊重しても、自分が設計した建物にうだつを上げることはないと思いますが、「うだつが上がらない」なんて言われるのはまっぴら御免です。
心の中で、極めて美しいうだつを上げたいと思うのです。
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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記
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株式会社一級建築士事務所アトリエm
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一級建築士 守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...