打ち放しのマンション「R GREY」入居募集始めます‐1389‐


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 これまで「平野西アパートメントハウス」と呼んできた、打ち放しのマンション。

 正式名称が決定しました。

 「R Grey」

 意味は昨日現場日記にUPしました。


 募集はすでに賃貸住宅サービスのサイト上で始まっていますが、9月からの入居募集を始めます。


 オーナーである弟は、近隣の相場より少し高めに設定されている家賃を、説明できる資料が欲しいと言われたそうです。

 それでパースを描くことになりました。



 バルコニーの手摺壁は、グレーの木になる予定。



 建物としての頑丈さ、機能、美しさと、一般的な1LDKのマンションとは、違う次元に高めているつもりです。

 しかし、仲介会社がいっていることも分かるので、長所をまとめてみました。

1. 安全

 構造はコンクリート壁式構造。最も頑丈な構造体の1つで、阪神・淡路大震災で一棟も倒壊していないといわれます。

 また、工事の過程も「現場日記」で報告でしてきました。当然ですが、手抜き工事などありえません。

2. 静か

 マンションで多いのが上下階の音の問題です。コンクリート床の厚み18cmで防音床組み。防音対策には細心の注意を払っています。

3. 心地よい

 南向きのバルコニーと大きな開口があり、反対の北側洋室にも窓があります。



 天井高さ2.6mの空間を、南北に風が通り抜けます。3層6住戸なので全てが角部屋。

 また、バルコニーと庇が夏の光を遮断し、冬の光は遮ぎらないよう設計しました。

 平野西公園まで徒歩1分。比較的大きな公園です。

4. 便利

 地下鉄平野駅から4分となっていますが、3分で着きます。

 大阪市内でもかなり減った銭湯が真向かいにあり、駅前にはコンビニが4件、ドラッグストアもあります。

 飲食店は、王将、お好み焼き、居酒屋など。銀行、スーパーは駅前のマンション側に。

 徒歩30秒にある「チャッピー」のたこ焼きはかなりいけます。

 こだわりがあり、違いを求めるシングル、もしくは若いカップルの幸せな暮らしをイメージして設計しました。

 工事費の内情を知っている私からすれば、この質のマンションがこの家賃になることはないと思います。

 一番の理由は、現場日記の第1回目に書きました。土地代がこの計画にはほぼ入っていないのです。

 しかし評価は常に他者が下すもの。

 今できることは、6人または6組の人たちに支持してもらえるよう、誠心誠意物創りをすることだけです。

 9月を楽しみにしているのです。



プラン



平野西公園



銭湯



駅前のコンビニ



王将



銀行とスーパー



チャッピーのたこ焼き


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永住したい打ち放しのマンション‐6‐「R GREY」に決定

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 着工して3ヵ月半が経過した、「平野西アパートメントハウス」。



 正式名称が決定しました。

 「R Grey」



 フォントは仮決定ですが、オーナーである弟も気に入っています。

 Rは鉄筋コンクリート(reinforced concrete)の略、Greyはそのままでグレー。



 コンクリートは人がつくる石のようなもの。よって単純な色ではありません。

 しかし、木の手摺もグレーとするので、キーワードとしました。
 
 紅茶のアールグレイとかけたのですが、紅茶のほうは”Earl Grey” と書き「グレイ伯爵」の意味だそうです。

 私が色々候補をだし、最終的にはオーナーである弟が決めました。以下がその他の候補です。

<スペイン語>

Casa Gris (カーサ グリス)→ 灰色の家

Techo Gris (テコ グリス)→ 灰色の天井

Pared gris (パレド グリス)→ 灰色の壁

<イタリア語>

Muro grigio(ムーロ グリジオ)→ 灰色の壁

<英語>

Grey Box → 灰色の箱

Grey Cube → グレイの立方体)

 永住したいと思って貰うためには、名前も響きも大切です。

 しかし、必然性のない名前は避けたいと思っていました。

 ここで暮らす人が、この建物を好きになって貰えるよう、本気で考えたつもりです。



 名は体をあらわすといいます。

 イギリス貴族の名をかりたこのマンションで、豊かな暮らしが生れることを心から願います。

文責:守谷 昌紀


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築80年、住吉の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐1‐プロローグ

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 大阪市住吉区は、上町台地の西端に位置する。

 海からの玄関口でもあり、早くから多くの人々が居住していた。



 古くからの住人が多く、クライアントはご近所とお互いの家の鍵を持ちあっていたという。

 住吉というくらいだから、やはり住みやすいのだ。

 今回は、昭和10年代に建った四軒長屋の1住戸をフルリノベーションする計画だ。



 まずは内部壁の撤去から工事は始まる。



 この年代の階段の角度はかなり急だ。

 後ろの柱をみると柱2本分、1間(約1.8m)で登りきっていることが分かる。

 私が設計するなら、3mほどかけて登りきるので倍近い勾配となっている。



 1階はLDKと水回り、そして個室が1部屋。



 2階は個室、客間が1部屋ずつとなるのだが、奥の腰窓の外にバルコニーがある。

 ここが洗濯干場となっていたのだがクライアントのお母様は、踏み台を置いて外にでていたそうだ。

 バルコニーは後付けなので、やむを得ないとも言えるが、こういった上下移動の障害がリノベーションの動機になることは多い。

 人は重力には抗えないのだ。



 瓦屋根の下に隠れる空間は、やはり大きく気持ちよい。



 よく見ると、野地板の上には檜皮が敷かれているのか。

 クライアントは、まとまった休みにあちこちと海外へ出掛ける。

 特に北欧が好きだという。その中でも青に惹かれるというのだ。

 青というのは奥行きの深い色だ。この計画が目指すのは「碧(あお)の家」。

 テーマカラーとなった濃い青が随所にちりばめられている。



 設計期間1年8ヶ月。

 この秋には、醸成された「碧(あお)の家」を見てもらうことができると思う。


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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐1‐プロローグ

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 働く人にとって、仕事場は人生で最も長い時間を過ごす場所だ。

 クライアントは、そこを「最も心地よく、緑あふれる空間にしたい」と言った。



 「山本司法書士事務所」から「(仮称)司法書士・土地家屋調査士 山本合同事務所」へと業務拡大にともない、オフィスの建て替えを考えるようになった。



 敷地は二条城の北、丸太町通の南に位置する。

 ウナギの寝床とまでは言わないまでも、敷地の間口は6m弱。南北は14mという細長い敷地だ。



 旧オフィスは大正時代に建てられたという木造2階建てで、天井はかなり低かった。



 それでも創業者の父が手をいれながら使ってきたその建物を、皆で大切にしていたのだ。



 しかし、隣地との等価交換があったり、仕事の幅をより広げて行きたいという気持ちから、建て替えを決断したのだ。



 新しいオフィスは鉄骨3階建て。

 1階は全て駐車場で、2、3階がワークスペースとなる。



 3階は応接室であり、休憩室でもある。

 リビングのような空間をイメージしているが、吹抜けを介して2階ともつながる。



 2階には天窓へ向かって伸びるシンボルツリーがある。

 それを囲むオーバルカウンターには、葉の間を通り抜け、木漏れ日がおち、高低差のある開口部からは、穏やかに風が流れる。

 働く時間の中で、「心地よい」や「幸せ」とは何かを考えた、ひとつの答えだ。

 この建物を、クライアントはトップの覚悟とも言った。

 創り手は、その覚悟に応えなければならない。



文責:守谷 昌紀


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ほんとに脱稿‐1386‐

2017年6月13日

ほんとに脱稿‐1386‐ 

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 2015年の12月から執筆をはじめ、昨年の9月に脱稿したと書きました。

 その間に、初めの担当者が体調をくずしてしまいました。

 後任の担当者とやりとりしながら、何とか脱稿にこぎつけたのが9月末だったのです。



 その頃、表紙はこの案でいこうと決まりました。

 表は「松虫の長屋」で、裏は「高台の家」。

 もちろんですが、本編でそれぞれのストーリーを紹介しています。

 そこから編集部の校正が入り、最終確認を終え、春先の発売を目指していました。

 しかし、2人目の担当者も体調を崩してしまったのです。

 偶然なのかもしれませんが、2度あったということは、現代社会の現実と考えるほうが普通かもしれません。

 若い2人だったので、体調が戻ったら復帰して、バリバリ働いて欲しいと願います。

 いや、「バリバリ」を付ける、私達世代こそが、その原因なのかもしれません。

 いずれにしても、3人目の担当者とやりとりしながら、最終チェックがようやく終わったのは先月末。

 遅れついでに、「高台の家」は先日撮影した写真に3枚程差し替えてもらいました。



 1階のダイニング・キッチンで奥さんとお子さんが食事の準備をしている風景。



 2階のテレビに支配されない空間「P室」。

 ここで、ご主人が外を眺めているシーン。



 そして、庭木越しの夕景です。

 賞罰教育には必ず限界がきます。

 褒めて貰えるからする。叱られるのが嫌だからする。これらが持続する理由はありません。

 いつの間にか歳を取り、そんなことさえも考えなくなり、惰性で仕事をする……

 それと比べれば、一旦仕事を休むことなど、大した問題ではありません。

 若者の特権は、時間があることと悩みがあることです。

 人生は、挫折、敗北、困難の繰り返し。しかし、諦めなければそれらは間違いなく全て糧になります。

 「建築家と家を建てるという決断」ですが、建築だけでなく、クライアントの人生、私の人生も織り込んだつもりです。

 発売は夏の終わりになりそうですが、彼ら2人にもこの本を届けたいと思っています。


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永住したい「平野西アパートメントハウス」‐5‐コンクリート打ち放しの本当の魅力

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 「平野西アパートメントハウス」は、全てのコンクリート打設が終わりました。



 強度が十分にでているということで、概ね型枠が取り払われました。



 1階から順に、内装工事がスタートしています。



 2階、3階と階を登っていくイメージ。

 各住戸の壁は、断熱材が吹き付けられるので、残念ながらコンクリートは見えません。

 しかし、天井面は全てコンクリート打ち放しのまま。



 また、外観、階段ホールは全てコンクリート打ち放しです。

 では、なぜコンクリート打ち放しに拘るのか。

 先日「高台の家」へ、内観の撮影にいったのですが、ほぼ一日滞在させてもらいました。



 変な話ですが、トイレを借りた際、「やっぱり打ち放しはいいな」と思ったのです。

 実写映画の背景を意識することは少なくても、アニメの背景を意識することは結構あります。

 例えて言うなら、それが打ち放しの魅力でしょうか。

 工業製品でなく、手作りの壁や天井は見ていて飽きないのです。



 「高台の家」のご主人は、学生時代を沖縄で過ごしましたが、その際のマンションがコンクリート打ち放しでした。

 壁に光が当たるさまをみて、その美しさを知ったといいます。



 寝室でうとうとと眠りにつこうとするとき、天井に目がいきます。

 そんな時に打ち放しの魅力が最も伝わるはず……

 9月からの入居開始ですが、ご希望の方はお知らせ下さい。

文責:守谷 昌紀


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子供は小さな大人じゃない‐1385‐ 

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 いよいよ近畿地方も梅雨入りしました。



 田植えが始まったなと思っていたら、あっという間の梅雨入り。



 いっとき、娘が小学校で飼っているカエルを連れて帰ってきました。

 彼らも喜びの声を上げているでしょう。

 春から長男が中学校に通っていますが、クラブに属することが必須だそうです。

 「テニスなんかいいんじゃないの」と勧めてみましたが、卓球部に入ることになったようです。



 それもあって娘も卓球を習いたいと言い出し、スクールに通う事になりました。

 いとこも交えて、時々実家の仕事場にある、お手製卓球台で練習をしているのです。

 作業台の上に父が板を敷いたもので、少し小ぶりですが練習にはなるはずです。



 さらに、壁打ちキットまで作って貰っていました。

 月曜までドイツで開催されていた卓球の世界選手権ですが、日本選手のメダルラッシュに沸きました。

 そのテレビ中継を、子供達は歓声をあげながら観戦していたのです。

 日本のエース水谷を下し、トーナメントを勝ち上がった張本智和選手はまだ13歳。史上最年少のベスト8だそうです。

 また、あの羽生善治三冠をも下し、連勝を続ける藤井聡太四段は14歳。

 こんなウルトラ中学生を同時期にみることなど滅多にないでしょう。誰もが無限の可能性を感じ、応援したくなるものです。

 一方「子役大成せず」とならないよう、メディアも含め、まわりが気を付けてあげなければとも感じます。

 友人の医師が、小児科がある理由について「子供は小さな大人じゃないからね」と言っていました。

 それを痛感するのが子育てです。

 自分がこれまでの人生で感じたこと、心が動いた話を、私なりに子供に伝えてきました。

 それによって、子供がどんどん成長するんじゃないかと楽しみにしていたのですが、伝わっていると感じるのは全体の20%くらいでしょうか。

 先日、あるクライアントが子育てのことで、少し意見を聞かせてもらいたいと足を運んでくれました。

 「守谷さんならうまく伝えているんじゃないかと思って」と言って貰ったのは光栄ですが、実は2割バッターで……

 正直、子供のセンサーと大人のセンサーの違いがこれ程大きいとは思ってもいませんでした。

 しかし、ある種納得もします。

 聞きかじった立派なことを1、2回話したとしても、そんなものは馬耳東風。

 どうしても言いたいから、繰り返し話していること以外は心に残らないのでしょう。

 子供は小さな大人じゃないんだなとつくづく思うのです。


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ミナミの南で受け継がれるもの‐1384‐

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 娘が「たまには外食に連れて行け」ということでミナミの高島屋へ。



 百貨店は選択肢が多く、子供連れには便利なところです。



 大阪に暮らしながら、なかなかミナミに行く機会もなく。食事の前に法善寺へ寄ってきました。

 現在はミナミのど真ん中にみえる法善寺ですが、江戸時代は刑場、火葬場、墓などがある、ミナミの南端でした。

 獄門台(さらし首をさらすところ)まであったそうです。



 そのために法善寺はここへ移ってきたようですが、苔むした不動尊の前の列が途絶えることはありません。



 法善寺は千日念仏で知られるようになり、このあたりを千日前と呼ぶようになりました。



 刑場などは明治時代に移転され、周辺は発展していったのですが、当時は安価にもかかわらず、なかなか買い手がつかなかったそうです。



 集まった人たちへの露店や茶店が法善寺横丁の始まりとなりました。

 水掛不動から一本北にある法善寺横丁への西入口。

 右隅に、寛美の文字が見えます。

 松竹新喜劇の藤山寛美によるものですが、 吉本帝国の関西で彼の芸風は一服の清涼剤でした。



 反対の東入口に架かる看板は、3代目桂春団治によるものです。



 法善寺横丁は2002年、2003年の火災で、一帯が焼失しました。

 建築基準法では最低4m以上の道幅の道路に、2m以上の接道を求めています。

 他の現行法規に照らし合わせても、元の街並みを回復できないことが分かりました。

 しかし市民からは再現を望む声が大きく、特別措置がとられたのです。

 個人で特例をだして貰うことなど不可能なので、複雑な気持ちもありますが、安全や間違いのないこと以上に大切なこともあると思います。

 「美しい」「心地よい」「風情」などがそれにあたると思いますが、特に「風情」はひとりで創りだすことはできないもの。人、街、が時間をかけて創り上げる総合芸術ともいえるのです。

 ミラノの市街地の道路は、小さな花崗岩が敷き詰められています。

 車で走るとガタガタするのですが、ミラネーゼ(ミラノっ子)はそれで、我が街に帰ってきたと感じるといいます。

 便利より、この街が好きが勝るからそれらが守られるのです。



 帰りに、夜の法善寺横丁にも寄ってきました。

 苔むした水掛不動さん。

 誰かが絶え間なく参り、井戸水を掛けるから、常に像は苔むしています。強要や、強制ではないから続くのです。

 いくら法規制をしても同じです。中学生が制服の着方を崩していくように。

 街も同じです。

 強制は美しさを生みません。「なんかいいな」と感じてもらえる街となるよう、1軒1軒、微力ながら力をつくしたいと思うのです。



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夢は仕事をしてて、バタンと倒れて死にたい‐1383‐ 

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 録りためていたHDDに、「ふたりの神様」という番組タイトルがありました。



 世界最高齢、ミシュラン3つ星料理人、小野二郎さん91歳。

 天ぷら職人、早乙女哲哉さん71歳。

 それぞれの道を極めたふたりの交流を描いた番組でした。

 「神対応」なる言葉が乱発されるのには、いささか食傷気味ですが「ふたりの神様」に異論のあるひとはそう居ないでしょう。



 「美味しんぼ」の連載が始まったのが、私が中学に入った頃だと思います。

 当時は、「ジャンプ」や「スピリッツ」などの漫画週刊誌を、友人何人かで回し読みしていました。

 中でも、スピリッツに連載が始まった「美味しんぼ」は、文化の香りがするというか、始めて体験する漫画でした。

 世がバブルに向かっていく時代背景もあったのか、「美食」などという言葉もよく耳にするようになります。

 その中にも、小野二郎さんは登場していました。



 置いた瞬間、重みでフワッと沈むほど、繊細に握られている通称「二郎寿司」。

 「美味しんぼう」の中でも、CGで断面解析がなされていたと思います。

 表面はしまっているが、中には空気が多くのこり、口の中でほどけるように崩れる究極の寿司。

 もともと不器用だった小野二郎さんが、自らの努力と探求によって生み出した技術です。

 30年以上前の記憶ですが、大きくは違っていないと思います。



 早乙女哲哉さんは20歳年下ですが、小野二郎さんを料理人として尊敬し、ライバルとして意識してきたとのことでした。

 互いの店も行き来し、切磋琢磨してきたのです。

 それぞれの世界の神様が、100歳になるまでやろう、とエールを送り合っている様をみて、やはり時代は変わったのかなと、思うところもあります。

 「夢は仕事をしてて、バタンと倒れて死にたい」

 レベルの違いこそあれ、気持ちは全く同じです。

 高校生の頃だったか、ビートたけしと明石家さんまが共演する光景をみて、極めたふたりが認め合う姿って素敵だなあと思っていました。

 「ふたりの神様」をみても、全く同じ気持ちになります。

 もう少し言えば、憧れ、羨望、自分の至らなさが入り混じった、甘酸っぱい気持ちというか……



 早乙女さんの店は予約が取れるんだろうかと、webサイトで調べてみるとこんなコメントがありました。

 15歳で修業をはじめてから古希を迎える今年まで、一日たりとも休んだことはない。

 さらっと書いてありますが、もう脱帽です。

 休まないことが素晴らしい訳ではありませんが、誰よりも結果をだしている人が、誰よりも努力をすれば、最高の結果をだし続けるのは当たり前です。

 まるで、肩を並べに行こう、くらいのことを書いてしまい恥ずかしい限りです。

 ふたりの寿司、天ぷらを一度でいいから食べてみたい。そう思うのです。



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大変の後ろにあるもの‐1382‐

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 昨日は撮影に行っていました。

 5月の上旬から天候が合わずで、2度延期していました。ようやくの晴れでホッとしました。



 2016年の2月に竣工した「高台の家」。

 一度撮影をしていますが、前回は本格的な引越しの前でした。



 生活が始まってからの写真と、それ以前の写真とでは空気感が全く違います。

 今回は、ご家族にも参加してもらいました。



 庭木が植わり、家具が入り、この家のもつ雰囲気が醸し出されます。

 庭木はクライアントがこつこつと庭木屋さんに通い、自身で植えていったものです。



 手前にあるのは、砂場兼プランターといったところ。

 トウモロコシ、トマト、キュウリが植わっています。

 庭木のセンスも素晴らしいのですが、遊び心も大事だと教えられているようです。



 2階にあるこの部屋はP室と呼ばれる、ダイナミックな空間です。

 クライアントがフランスまで訪ねたル・コルビジュエのサヴォア邸。その空間構成から展開していきました。

 ソファについては「もっと合ったものを」と言われましたが、十分だと感じます。



 この空間には、本好きのご主人に参加してもらいました。



 その奥にあるのはピアノ室。

 娘さんが、「きらきらぼし」を披露してくれました。



 ちなみに子供部屋はキッチンの隣。

 この距離感が、とてもいいと思っています。



 午前の撮影が終わったあと、P室前のバルコニーでカメラマンと共に、昼食まで頂きました。

 P室の前にあるこの空間が、とても大事だと感じていましたし、実際自分が体感できることがとても嬉しいものです。



 街で評判のサンドイッチ。



 そして炭火焼。

 気持ちよい風に吹かれながら、ノンアルコールビールを飲んでいると、酔ってしまうような気さえします。



 高台にあるがゆえ、当初から寒さを気にしていましたが「寒い時は床暖をつければ、問題ありませんでしたよ」と。

 また「大阪市内なら、全く問題ないんじゃないでしょうか」とも。

 ただ、「冬の結露対策には除湿器を3つ使っています」とのことでした。

 それで解決したので、コンクリート打放しの家が好きなら、躊躇する理由など全くないのでは、と言われたのです。

 壁に断熱材の入っていないコンクリート打放しは一般解ではありません。

 しかし、これだけ「自分の好きを実現できた」と言って貰えたら、私が望むものは何もありません。



 娘さんは、今日が撮影ということで手製のカメラまで準備し楽しみにしていてくれました。



 このセンターテーブルもご主人の手作りです。

 新婚旅行に青森へ行った際、わけてもらったリンゴ箱にキャスターを付けたものです。

 中にはワインのボトルが丁度入るようになっています。



 好きや夢を形にしていくのが私の仕事です。

 もちろんのこと、夢や感動がどこにでも落ちている訳ではありません。



 ここは、私にとっては最も思い入れのある部分です。

 1.2m躯体が張り出し、そこから1.2mの庇が伸び、雨のかからない駐車エリアを確保しています。

 当初は、2.4m全て躯体が張り出す設計にしていました。

 しかし、それを支える鉄筋量とコンクリートが大変多くなり、予定していた予算に収まりませんでした。

 何度も仕様変更をしましたが、最終的には現在の案を考え、設全て設計をやり直したのです。

 感動がどこにでも落ちているはずはありません。大概は、大変の後ろにあるものです。

 ようやく内部写真も撮れました。この家の物語を世に伝え、評価を問うてみたいと思うのです。



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株式会社一級建築士事務所アトリエm

プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) 1970年 大阪市平野区生れ 1989年 私立高槻高校卒業 1994年 近畿大学理工学部建築学科卒業 1996年 設計事務所勤務後 アトリエmを設立 2015年 株式会...

株式会社一級建築士事務所アトリエmの事例

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